俳句例:101句目～
絶望の目に冬帽が遠ざかる/三谷昭
退庁の帽をいただく花曇/後藤夜半
夏帽や故郷を望む舟の中/赤木格堂
通過駅挙手駅長の毛皮帽/大津希水
高原へ少女多情の夏帽子/対馬康子
駅前の一樹に集ふ夏帽子/嶋田麻紀
二三日おのが頭の夏帽子/永井龍男
露次ぐちや女の袖に夏帽子/泉鏡花
玉砂利の初日に帽子外套置く/篠原
雲海の上膝に置く夏帽子/松山足羽
機町の泥に汗ばむ冬帽子/宮武寒々
特急の冷房効きて帽子脱ぐ/鍵岡勉
判決に麦藁帽の母泣けり/沢木欣一
軽口の弾みて父の夏帽子/作田幸子
夏やせて麦藁帽の内暗し/鈴木鷹夫
爆笑す君も九月の藁帽子/川崎展宏
爆心地汗の帽子の裏を干す/小田亨
先哲の墓に詣るや夏帽子/前田普羅
声援や顔に影さす夏帽子/対馬康子
梨出荷大き麦藁帽に青空/大野林火
俳句例:121句目～
草木にうもるゝ庵の夏帽子/原石鼎
潮あびる裸の上の藁帽子/正岡子規
浮雲は中也の帽子春の丘/坪内稔典
船腹の絶壁なせり夏帽子/行方克巳
鍔は匂やか青桐蔭の角帽売/不死男
屋根師かな夏帽を世に魁けて/林翔
虹立つや麦藁帽の庇より/中村汀女
夏帽子深くかむりて志す/宮田安子
朝戸出や夏帽の裏美しく/久米正雄
欅散る運動会は帽子取り/細見綾子
登山帽眼下に夏を一蹴す/佐藤林正
故郷の艀舟嬉しき夏帽子/会津八一
雑踏を一直線にパナマ帽/山田一男
夏帽子水平線の上に置く/落合水尾
松虫草帽子の男飯食ひに/川崎展宏
担任の先生の夏帽子かな/山本一歩
教官の帽子の上や秋の雲/内田百間
撫子に帽子をとりて荒筵/古舘曹人
秩父バスの最後部席夏帽子/石寒太
磯鴫の百の翔りに帽押へ/小林貴子
俳句例:141句目～
出張の夫に手渡す夏帽子/沼尻ふく
草高し蝶夏帽を慕ひ飛ぶ/久米正雄
掛乞の帽子忘れし寒さ哉/正岡子規
矍鑠と歩み去年の夏帽子/永井龍男
折釘に鳥帽子かけたり春の宿/蕪村
運転席のぞく兄弟白夏帽/大越みほ
寒明けの駅長室の帽子掛/内田美紗
秋冷や枝に濡れたる登山帽/秋尾敏
一円を拾ふ勇気の夏帽子/大東晶子
ゝと白く無帽の漢耕せる/京極杞陽
睡蓮の橋ふむ人や夏帽子/会津八一
夏少女帽子を高く睡りけり/石寒太
眼中に半円の海夏帽子/上田日差子
夏帽子林に入りて光りけり/大串章
経木帽海気を含み柔かき/久米正雄
啓蟄や妻の帽子の色変り/大賀龍雲
皆海に向ひて座る夏帽子/稲畑汀子
原敬の帽子夕べの閑古鳥/斉藤夏風
卒業の帽子百千空へ空へ/松山足羽
初雪や家族の数の藁帽子/大図四星
俳句例:161句目～
冬鴎黒き帽子の上に啼く/西東三鬼
つば広の麦藁帽子苺摘む/高濱年尾
娘と二人弁当開く春帽子/熊谷彰子
植木鉢古刹に集ふ雪帽子/平松昌子
菜園に我妻見たり綿帽子/石井露月
幼子の寝顔隠しぬ夏帽子/神野千舟
綿帽子首傾くは風のせい/二村典子
冬帽が涙の泉泣きつづく/平井照敏
綿帽子士農工商の妻の体/黒柳召波
綿帽子の糊をちからや冬の蝿/許六
茎立や洗へば白きコック帽/大町糺
綿帽子に赤毛布の男かな/会津八一
北山の雪や相似て綿帽子/松瀬青々
頬皺の深き杣なり冬帽子/松藤夏山
両の手で選ぶ大きさ夏帽子/三好亨
五月晴黒人無帽にて街へ/古舘曹人
震災の難民めきぬ冬帽子/千原草之
藁帽の縁ぼろ～に秋暑し/寺田寅彦
青蔦や轎夫の帽に色飾/楠目橙黄子
冬帽の師に従ふは寧かりし/下田稔
俳句例:181句目～
冬ざれの中に角帽あぶらじみ/誓子
黄落の中也の帽子通りけり/石寒太
若き友自殺し残す冬帽子/宮坂静生
青蜜柑学帽のまま戦争へ/工藤博司
船主の沖を眺める冬帽子/金山敦観
冬帽の真冬の浪花男かな/攝津幸彦
冬鳥のこゑ晩年の父の帽/鈴木鷹夫
凩や帽ひるがへる京の町/正岡子規
突堤の一番先きの冬帽子/細見綾子
癆咳の頬美しや冬帽子/芥川龍之介
癆咳の顔美しや冬帽子/芥川龍之介
混血の眉目秀でし夏帽子/勝山呉泉
夕焼に向って歩く無帽の旅/穴井太
夕虹へ妻坑帽を捧げ干す/工藤求基
夏帽子押さえて渡る河童橋/林かよ
蝙蝠に放りやる帽失ひし/宮坂静生
生涯を学びて老の冬帽子/石田玄祥
天高し戴帽式の少女らに/原田青児
子燕や戴帽式の膝を折る/酒井湧甫
新涼や糊のききたる調理帽/村井正子
