俳句例:201句目～
指組めば無名指同士冬隣/田川飛旅子
指ふれて白磁曇らす暮春かな/朔多恭
足袋中に指は岐れて化野へ/中原道夫
足なめて指なめる嬰梅日和/東佳代子
指ほぐす母は坊守/花明り/松本恭子
冬苺つまむ小さき指ゑくぼ/中村ふみ
幽霊の指に力のありにけり/相原澄江
指ほどの佛欲しやと種蒔けり/辻桃子
あつき日や指もさされぬ紅畠/千代尼
あるこほる揮発せし指雪催/小川軽舟
引き金に指掛けている芒原/森田智子
読初や幼に文字を指にさし/中村汀女
観音の指にも眠る山の息/大岳水一路
箒茸ほうきの先を指に乗せ/高澤良一
袖の雲脂指で弾きて春遠し/高澤良一
弥彦山滴るを指呼稚鮎釣る/高澤良一
水洟や指をいのちの陶作り/中島寿銭
出る月や壬生狂言の指の先/小林一茶
水指のうつぶけてある寒かな/炭太祇
うかつにも指切る始末青芒/川端庸子
俳句例:221句目～
切疵の指艶でに見し夜も桜/河野南畦
街五月繊き指もて薔薇選られ/朔多恭
弾初めや琴爪遠き指の冷え/内田百間
行く春や薬師の指に虫の穴/下仲里美
指美しく生れて踊上手かな/鈴木貞雄
蟻潰す指を拭はずまた潰す/多田薙石
うつす手に光る蛍や指のまた/炭太祇
うららかや指もて計る幼靴/国井美代
歌にして秋の七草指止まる/川崎和美
初蝶や指の先まで僧の籍/小内春邑子
蟹に指挟まれ多喜二忌の渚/石井里風
利き指の繃帯白き十二月/片岡とし子
蝸牛は木の毒青年の指飾り/金子兜太
蝶の昼指より寝入る三才児/浜本/漣
十三夜胸の温みが指伝ふ/殿村莵絲子
後手に指遊ばせて麦を踏む/大関潔子
御所指呼に将軍塚の夕雉子/川澄祐勝
椎の花つづらの中の指人形/二村典子
竹煮草指もて弾き虚ろなり/小田双葉
童顔の桃むきて指うつくしき/及川貞
俳句例:241句目～
恋人も仮眠の蝶も指で突く/新庄佳以
指月殿へ隠れ道あり竹落葉/笹本定行
蝉の天指もて髪を梳り/鍵和田ゆう子
感覚を失ひし指藺を植うる/平谷破葉
指を嗅ぐ少年蝶を放ちしか/谷口智行
秋風やひとさし指は誰の墓/寺山修司
秋立ちぬ砂丘に手突き指埋まり/林翔
ことばなき指話美しや春灯/鈴木貞雄
厚意受く栗の三面指で触れ/香西照雄
原稿に降りし羽蟻に迫る指/高澤良一
秋櫻子忌葡萄の露に指濡れて/瀧春一
秋晴や禰宜が指ざす神集島/野村泊月
秋の燈や指にをどらす小人形/より江
石工の指傷たるつゝじかな/蕪村遺稿
手袋にダイアモンドの指沈め/星野椿
蛍獲て少年の指みどりなり/山口誓子
短日や手編みを急ぐ指の先/福井清翠
新涼や指をこぼるる星の砂/西村文枝
句一念わが白足袋の指太き/岡本圭岳
指栞して春雷を聞きゐたり/藤木倶子
俳句例:261句目～
手袋の己れの指の短かけれ/行方克巳
短日の指を零るる時間かな/長山あや
手袋の指破れたり雪まろげ/正岡子規
梨むいて指ほろ甘し夫の恩/池田澄子
指栞車窓に桃の咲くを見て/高澤良一
新暖や少女の指の間あかく/河野南畦
和蝋燭コンと啼く君指狐/渡辺珪永子
蛇苺黒衣聖女の指が摘む/秋元不死男
唖の子の指に歩ませ蟹赤き/桂樟蹊子
手袋をはめ終りたる指動く/高浜虚子
真夏夜の黒鍵叩きつける指/高澤良一
春の灯に口を開けたる指狐/牧野桂一
抛たむ指を抜けとび金亀虫/大橋敦子
抱かれて指繊くなる雪明り/寺井谷子
盆まへは弐分にもつけぬ小脇指/嵐竹
国後島が指呼朝露の二重窓/奈良文夫
指いつか遊びぬ春の禁煙車/鈴木鷹夫
梅散つて指より細き佛かな/会津八一
桐下駄に母の指跡しむ晩夏/中尾杏子
斑猫の縁に来て居り直指庵/高濱年尾
俳句例:281句目～
蓼咲くや油まみれの指の傷/古沢太穂
どてら著て長脇指の素足哉/正岡子規
菊花展幼児花に指ふれし/百合山羽公
埋火の上落魄の指五本/竹下しづの女
城あとに指笛吹けり浅き春/脇坂啓子
塩をふる指のくらさよ衣被/鈴木鷹夫
にんげんに指を折る癖衣被/塩野谷仁
皮手套葬後の指を嵌め違ふ/大石悦子
夏やせの指に指切しひらるる/上村占
指入れて鵜の瀬は淀の春隣/高橋睦郎
夏手套指より老いて勤め長し/岡本眸
夏掛は目覚めし指に懐しく/高澤良一
白指も編棒のうち毛糸編み/鷹羽狩行
指冷えて時流れ去る糊口のペン/林翔
草餅の指のくぼみのつくり癖/渋川絢
男靴そろへ灼かれる指の先/谷口桂子
草紅葉大きな指を近づけて/石田郷子
夏萩や衆生へ弥勒の指繊る/勝村茂美
指くめば心音の波立夏かな/野澤節子
草稿の黄沙指もて払ひけり/花田由子
