俳句例:101句目～
耐へてゐる姿ふてぶてしく海鼠/柴田奈美
紙びひな胸うすくして耐えがたき/山口青邨
心経に無の字の多し暑に耐へる/松井ヒナ子
ががんぼの脚の耐えゐる風ありぬ/山田弘子
澄むこころ月の重さに耐へてをる/中原道夫
これよりの信濃の冬に耐へまさむ/木村蕪城
さくら散る海の夕日に耐へがたく/関森勝夫
蟇おのが重みに耐へて歩み出す/坂本山秀朗
帚木を植ゑてひそかに暑に耐へて/中村汀女
ひたすらに風に耐えゐる羽化の蝶/川村河邨
ひとで乾き長き潮干を耐へゐたり/津田清子
病むに耐へ酷暑に耐へて白芙蓉/石田あき子
冬の濤目つむり耐へる家ばかり/福田甲子雄
冷す牛暮色に耐へず啼くなめり/篠田悌二郎
岩灼くるにほひに耐へて登山綱負ふ/辰之助
汗の手を洗ふだけでも耐へらるる/稲畑汀子
遠泳に耐へたる四肢を眺めけり/五十嵐播水
極寒の根をもてるもの耐へにけり/松村蒼石
桜ひらく壁ひび割れて朝日に耐え/大井雅人
木の家の木の耐へきれぬ春の闇/小島千架子
俳句例:121句目～
寒燈下かなしきことにわが耐へぬ/中尾白雨
鉢植の棕櫚竹ともども暑に耐へむ/高澤良一
曳く翳の暗きに耐へず草焼きても/杉山岳陽
美しき火の山のもと暑に耐へて/大岳水一路
耐えがたく大地はありぬ天の川/津沢マサ子
銀河濃しひとりに耐へて膝抱けば/塚原夜潮
除雪夫の雪に耐へ住む顔きびし/石橋辰之助
石榴割れたり月光に耐へきれず/夏井いつき
寒き世を木乃伊に乾くまで耐へし/矢島渚男
雪嶺より来る風に耐へ枇杷の花/福田甲子雄
夏草や夜のさびしさは耐へがたき/中村汀女
命いくつこの水澄むに耐へえむや/小林康治
生き耐えて派手ならねども更衣/柴田白葉女
浪花女の夏風邪ひいて座に耐へぬ/飯田蛇笏
生き耐へて派手ならねども更衣/柴田白葉女
死にがたし生き耐へがたし晩夏光/三橋鷹女
散る紅葉空の碧さに耐へて佇つ/小松崎爽青
向日葵や耐えるおとこを夫にする/鎌倉佐弓
手袋に十指をおさめ耐えるのみ/高橋たかえ
耐へ忍ぶことのなかりし蜜柑山/福田甲子雄
俳句例:141句目～
耐へ来し歳月桃紅らむと指さすや/小林康治
武蔵野の星みて寒ンを耐へんとす/渡辺桂子
珠算教室となりて真夏日を耐える/松本勇二
青芝の馴染みて地震に耐へし家/稲畑廣太郎
芹摘の中腰に耐え切れずして起つ/高澤良一
草刈るや被爆の孤老生き耐へて/下村ひろし
病み耐へてをさなごころや金飼ふ/中尾白雨
葉隠りの桃に紅さす耐へよと言ふ/小林康治
この暑さ生くべくわれは耐へにけり/中尾白雨
さくら貝怒濤に耐へてきしとおもふ/国弘賢治
初夏の飢高原を下りず耐へゆかむ/石橋辰之助
曇天の耐へて耐へをるおほでまり/篠田悌二郎
曼珠沙華散るや赤きに耐へかねて/野見山朱鳥
耐えて来し身にちる紅葉あかあかと/原コウ子
新樹照りいたむこゝろぞ耐へがたき/石塚友二
耐へがたき真闇樹氷をおしたてる/石橋辰之助
生きに耐え月光ひらひら舞ふ浄土/谷口波津女
憂きことに耐へて花見の紅を刷く/鈴木千恵子
臥したきを耐へ来し日々ぞ紫雲英風/香西照雄
藷食うてをれば何とか耐へらるる/佐々木六戈
俳句例:161句目～
雨漏りに耐へきし屋根を替へにけり/橋本鶏二
妻こゝにひとり秋灯に耐へゐたり/石橋辰之助
いつか誰か愛さむと萩耐へゐたり/長谷川秋子
生き耐へし女どうしの小さき足袋/柴田白葉女
茄子蒔きて誰もが耐へし過去を持つ/稲畑汀子
風に耐へ得ずして桐の実は落ちぬ/成瀬桜桃子
風船を売るさびしさに耐へゐたり/上田五千石
戦中派の耐へ来し想ひ鈴虫聴く/鍵和田ゆう子
午後の罌粟走るひびきは耐へがたし/津田清子
献立を書き替へ日々の暑に耐へて/鈴木真砂女
薯食うてをれば何とか耐へらると/佐々木六戈
しづけさに耐えヽて林中の蝶翅うつ/米沢吾亦紅
歎異抄に二月耐へゐぬうつ伏して/長谷川かな女
耐へがたきときは目を閉づ草いきれ/正木ゆう子
子犬生れ先づはみぞるる夜を耐へよ/鳥居おさむ
ジキル氏もハイド氏も暑に耐へてをり/佐藤多恵子
暑にも耐へよ君は不死身と師より給ふ/長谷川素逝
海霧に耐へて人住む板屋なりしかな/長谷川かな女
看護りきて耐へて耐へしもの夜の鵙/小久保ひさを
うすばかげろふむかし女は泣いて耐へし/鈴木真砂女
俳句例:181句目～
辛夷一樹一樹なるゆゑこの春も花のおもさに耐へて枝張る/時田則雄
耐へてゐる「時」と思へり鶏頭のあまりに赤きおのがしづもり/雨宮雅子
貧しさに耐へつつ生きて或る時はこころいたいたし夜の白雲/佐藤佐太郎
幸福が人をめくらにするといううろたえながら耐えてゆくべき/大島史洋
顕ちかえるものにひととき耐えたればああぼくこそが<正統>ならん/三枝昂之
