瞼/目蓋を使用した俳句

俳句例:101句目~

疲れ鵜や瞼縫はれしかに閉ぢて/森田峠

枯草の日に汝が瞼はぢらひぬ/横山白虹

眼鏡とり目蓋の汗ぬぐひけり/高澤良一

瞼大きく多汗な少女の風の盆/白井重之

瞼攣るくもる綿虫見てあれば/下村槐太

神通川音いつか瞼の枯れの音/古沢太穂

胃は月型風の瞼をしばたたき/三橋鷹女

虹二タ重みはる瞼の形なりに/野澤節子

蜂の巣の下おのづから瞼閉づ/加藤楸邨

雛しまふ母の瞼を閉ぢし手で/品川鈴子

電話後の瞼の厚み恵比寿かな/四ッ谷龍

風花やまばたいて瞼思い出す/池田澄子

飲酒の闇死人に会うて来し瞼/和田悟朗

鵜の瞼針で縫ふとは哀れなり/伊藤柏翠

おのづからひらく瞼や牡丹雪/加藤秋邨

鶴を見ず鶴を瞼の旅寝かな/北原志満子

さんしゆゆの花窟を出て荒瞼/宮坂静生

しぐるるや瞼の中に目玉あり/森賀まり

上げざりし瞼一線日向ぼこ/赤松ケイ子

黄落や瞼をとほし挫折くる/田川飛旅子

俳句例:121句目~

黒南風のねむき瞼とさくらんぼ/石寒太

修二会みる瞼を青く化粧して/品川鈴子

元日の瞼あかるくまた寝落つ/櫻井博道

亀石の厚きまぶたや草紅葉/大森井栖女

児の瞼うすく夏痩見えにけり/石原舟月

十一面みな秋風を聞くまぶた/藤田直子

春の風邪まぶたのうらに蝶無数/伊藤凍

昼蛙まぶた閉ぢたる仏たち/成瀬桜桃子

雪花をまぶたにつけてみそさざい/梅室

近火語る瞽女の瞼のぴりぴりす/大橋敦子

御ン瞼まだ秋の蚊を留めゐたる/久米正雄

花歯瓜まぶしや過読の厚瞼/鍵和田ゆう子

鮠食うてしろがね瞼薄日射す/小檜山繁子

夢宿らぬ婢の瞼かな明易き/長谷川かな女

菊の香にうもれて瞼伏せにけり/松村蒼石

夜の瞼の落葉よ街に遊びしが/北原志満子

水面すずし夕日瞼をまだ閉ぢぬ/村越化石

垂穂道瞼のつゆに日はしづむ/金尾梅の門

駱駝またたかず瞼の蝿にさへ/宗像夕野火

喪の瞼ひらき寒禽の餌を満たす/寺田京子

俳句例:141句目~

眠るにはあらず春愁の瞼閉づ/小松/烏子

蚊遣してなにも思はず瞼閉づ/石田あき子

初夢を追ひてしばらくうす瞼/馬場移公子

ガジユマルを祀り瞼の裏に入る/五島高資

百千鳥とおもふ瞼を閉ぢしまま/川崎展宏

蜂の縞瞼にのこる手をすゝぐ/金尾梅の門

秋晴や瞼をかるく合はせても/鷲谷七菜子

木菟明眸をりをり月に瞼伏せ/橋本多佳子

やゝにして瞼に火あり日南ぼこ/小杉余子

めはじきや伊賀の女の子の細瞼/橋本鶏二

木の葉の矢修験の道の瞼しくて/古舘曹人

紫蘇は実に佐渡の乙女の腫れ瞼/千田一路

ふくろふの目蓋開けて吾を見る/高澤良一

瞼すぐあたたかくなる冬日かな/高畑浩平

屠蘇の子や一重まぶたを引継げり/高岡慧

ふくろふの日永に耐へる瞼かな/和田知子

山棲のまぶた疲るる花のころ/大木あまり

雪虫や瞼閉づるはあたたかき/豊長みのる

緋牡丹を見し瞼を持ちて嫁け/八木三日女

流し雛ながさるるとき瞼閉づ/成瀬櫻桃子

俳句例:161句目~

青梅雨や瞼つまんで剃られたる/宮坂静生

月今宵故人まぶたにうかむや夢/松岡青蘿

炉火青し口づけ給ふまぶたの上/小坂順子

野仏の一重まぶたに木の実降る/松尾悦子

瞼に棲む顔一つ殖ゆ栗むく夜/長谷川秋子

炊ぐ音瞼にありて杜鵑啼く/長谷川かな女

涸滝をまぶたに眠る石のごと/稲垣きくの

夢残る瞼をかしやほとゝぎす/長谷川零餘子

夏風邪のきざしの瞼とぢにけり/長屋せい子

登山綱凍て瞼を濡らす雪とべり/石橋辰之助

良き初夢見よと瞼を撫でやりぬ/須田冨美子

薔薇の辺の瞼ひととき睡りをり/猪俣千代子

那智を去る瞼に滝の落ちつづけ/山口超心鬼

ただあゆみゐし夢まぶた百日紅/長谷川松子

雨のまま暮れて瞼の植田を消す/林田紀音夫

稲刈りし腫れまぶた酒飲めばなほ/大熊輝一

雪降り出す瞼閉づれば故郷の山/櫛原希伊子

花あんず旅のさなかの腫れまぶた/藤盛和子

青蛙ぱつちり金の瞼かな/川端茅舎「華厳」

くれなゐの瞼をとぢぬ撃たれ雉子/橋本鶏二

俳句例:181句目~

津軽詩人火蛾見る眼に置く重瞼/磯貝碧蹄館

花冷えや一重まぶたのこけしの目/宇田零雨

やはらかき陽をまぶたにす颱風過/石川桂郎

洋洒もて胃の瞼灼きをり木瓜曇り/石塚友二

雪谿の夕日まぶたに背の登山綱/石橋辰之助

死者の瞼閉ぢ来し手なり萩根分/池月一陽子

春日たらり雛の目下瞼から閉づる/野澤節子

牡丹雪はたりと瞼おもきかな/うまきいつこ

秋の日にうたれ瞼の冷えゆける/石橋辰之助

枸杞にかも雨降る瞼覚めざるは/千代田葛彦

おくれ雛まぶたに重き恙かな/阿部みどり女

死のまぶた天井に火蛾追ひつめし/熊谷愛子

めはじきの瞼ふさげば母がある/長谷川かな女

さくらさくら瞼閉じても開いても/伊丹三樹彦

耕人の下向けば白きまぶたなる/阿部みどり女

若狭秋色まぶた裏までふるさとよ/長谷川秋子

まぶたみどりに乳吸ふ力満ち眠る/沖田佐久子

まぶためくれば青麦死者を運ぶとき/西川徹郎

わが瞼雷につられてふるふかな/飛鳥田れい無公

どれも瞼を持たず夜長かな/D/J/リンズィー