俳句例:201句目～
坂のうえ霞みきれずに人がいる/小宅容義
大阿蘇の霞む裾野に妻と逢ふ/野見山朱鳥
霞む艀も若しや襁褓はためかせ/小林康治
天地が霞むうつゝにうつとりす/松瀬青々
富士霞むことの畏し勝たでやは/渡邊水巴
明るむ陽枯木は霞む沼のへり/田川飛旅子
木曾どのゝ墳はいづこぞ松霞む/中川四明
枷重き牛とも見えず田に霞む/百合山羽公
雪山はゆつくり霞むかいつむり/岡井省二
雪嶺の霞むといふはやさしかり/平林春子
柴を樵る日々のくらしに山霞む/飯田蛇笏
栗駒を指す辺霞みぬ虻の声/阿部みどり女
麦蒔くや暮れむと霞む三輪の神/冨山青沂
黒船の霞むと見えて失せにけり/会津八一
龍顔の霞みもまさず咫尺かな/松根東洋城
みささぎのあたり最も霞みけり/池内たけし
破魔矢受く多摩の横山霞む日を/水原秋櫻子
晴れし香のコーヒー遠山ほど霞み/野澤節子
鐘霞む故山といふはなかりけり/星野麥丘人
徐福去つて幾世ぞひるを霞む海/芥川龍之介
俳句例:221句目～
霞みつつ日にあたたまり桶の水/宇佐美魚目
いも掘りし跡の惨めさ霞むなり/佐野まもる
霞む街しんしんとして枇杷芽立つ/右城暮石
遍路まだまだ歩く堂塔霞むから/伊丹三樹彦
遙かなるものばかり見て霞む窓/今橋眞理子
山霞むあなたがみえない傍に来て/瀬口有子
いかさまに霞むやと岡に陟りけり/尾崎紅葉
おらもはや霞む知る人ももすかち/広瀬惟然
遥かなるものばかり見て霞む窓/今橋真理子
霞む日を戻りてものを言はざりし/細見綾子
開かぬ日もありて鐘の音霞みけり/鈴木花蓑
聞かぬ日もありて鐘の音霞みけり/鈴木花蓑
霞みきて木の芽あからむおもひかな/原石鼎
馬刀貝掘ると行きし人々霞みけり/木津柳芽
桃の木にかたつむりまた霞む島/宇佐美魚目
犬の子に蹤かれて霞みゐたりけり/加藤楸邨
畦道を来つつある子の霞みけり/大峯あきら
鳩鳴いて菜の花どころ霞みけり/小松崎爽青
印旛沼霞むやわが目かすめるや/石井とし夫
先づ白き富士より霞み初めにけり/河野美奇
俳句例:241句目～
佇めば水ひろびろとまづ霞み/久保田万太郎
霞むこともなくて夏木の聳えけり/中島月笠
アポロンのひたいポポポポ霞むかな/鎌倉佐弓
渦すりて鵜かいくたびも霞みけり/佐野まもる
うつゝなき眺めに霞むかもめどり/佐野まもる
大枯木よりまづ霞みそめしかな/久保田万太郎
日輪のちりちりもゆる土霞み/飛鳥田れい無公
いつの間に霞みそめけん佇ちて見る/高浜虚子
見ゆるもの霞む空のみこゝ五階/久保田万太郎
霞むよりほかなき野辺に来ても見つ/林原耒井
山は見の冷ゆわが来し方の霞みそめ/林原耒井
霞む野やありし世の伽藍目に描く/石島雉子郎
降りる鳩に真似して一羽霞みけり/阿部みどり女
いつからとなくどこからとなく霞む/加倉井秋を
霞む日へ領巾振るもこの黒シヨール/殿村菟絲子
えり挿しの漕ぎ出してすぐ霞みけり/鷲谷七菜子
冬霞むネクタイが見えるだけの隙/長谷川かな女
えり挿しの漕ぎ出してすぐ霞みけり/鷲谷七菜子
よしなかやはせをやあふみうす霞む/鍵和田釉子
ねぢけゆく浮世憂いもの霞みたり/冬の土宮林菫哉
俳句例:261句目～
みどり子を抱いて霞みてゆきにけり/五十崎古郷句集
鳴いて霞むからすに憎みなげにけり/飛鳥田れい無公
