俳句例:201句目～
霾や墓地をくる手のひらひらと/波多野爽波
エリカ咲き鉄扉をひらく異人墓地/渡辺立男
果樹園に墓地がはみ出し寒鴉/鍵和田ゆう子
一茶忌の下駄に重たき墓地の土/加藤知世子
三鬼の墓蝉の鳴く樹もなき墓地に/茨木和生
乾く墓地汚れハンカチ髪に載せ/殿村莵絲子
亡き母の口真似墓地の蚊に刺され/川村紫陽
凍てをふみ気安く墓地をただ通る/飯田蛇笏
富士爽やか妻と墓地買ふ誕生日/秋元不死男
麦刈られ墓地いくばくか高み保つ/栗生純夫
墓地にも大根干されそこより冬の音/寺田京子
冬帽子墓地突つ切つて逢ひに行く/新海あぐり
墓地の高さで植田見ているのは父か/河合良尚
墓地をゆき黒き手套をぬがざりき/橋本多佳子
墓地よりの南風をまともの村に住む/亀井糸游
霾るや墓地をくる手のひらひらと/波多野爽波
誰も踊らぬ草笛吹いてアイヌ墓地/加倉井秋を
屯ろする声つつぬけに冬の墓地/阿部みどり女
墓地の夏の朝甘い香の花苔にこぼれ/喜谷六花
窓は遠く墓地のある山とむかいあう/住宅顕信
俳句例:221句目～
絵日傘に会ひたるのみの異人墓地/池田/悦子
骨は動かず墓地早春のもぐらもち/中村草田男
墓地買ふて初蜜柑二個食べにけり/秋元不死男
トロイカをとどめて雪の墓地に深く/田村了咲
サイレンがつどふ寒暮の墓地の空/小川奴々子
帚屋が枯木の墓地をぬけてゆく/阿部みどり女
アパートより見下ろす墓地の暖かき/細見綾子
ひとり凍てひとりゆるめり墓地の道/細見綾子
さくら咲き墓地夕暮にして親し/阿部みどり女
稀少の血ここに紛れずきすげ墓地/平井さち子
壁穴からミシシツピーの墓地が見ゆ/中烏健二
若きは立ち老いは身沈め茅花墓地/平井さち子
厚き苔敷く谷間の墓地の仮睡の水車/高柳重信
墓地を過ぐ久しの夏帽あす脱がな/中村草田男
きすの崖海人ゆく海人の墓地ぬけて/下村槐太
股開き乗る自転車みんな墓地に居て/西川徹郎
母子草墓地買ふ人の来て佇てり/長谷川かな女
墓地の草しみじみ引きてをりひとり/高澤良一
墓地といふ冬あたたかきところかな/村上喜代子
蝶それぞれ家紋負ひ来ぬアイヌ墓地/平井さち子
俳句例:241句目～
ユダヤ墓地より石の声花ユッカ/宮脇白夜「紋」
男ひとり墓地に来てゐるさくらかな/和田耕三郎
きみの墓地見てきた飯食いに行こうや/下村槐太
枯れきつて崩崖のなだれの銅山の墓地/石原八束
かたくりのからりと晴れし風の墓地/行方寅次郎
こは日本人墓地こは落椰子の実一箇/伊丹三樹彦
死者に墓地生者のための蕎麦咲けり/加倉井秋を
いたづらに足袋のみ白く寒の墓地/阿部みどり女
かはほりやなかなか暮れぬ墓地のそら/高澤良一
茅花そよぎ組み足ゆるめに異人墓地/平井さち子
墓地の棕梠黄色い舌垂れつまらぬ世/田川飛旅子
藤村墓地ひとを恋ひをるつぼすみれ/鍵和田ゆう子
ヨツト八帆九帆みゆ卯ツ木の漁夫の墓地/石原八束
きつねのかみそり付きの墓地なれば買ふ/大石悦子
割れたフラスコ/風そよぐ清教徒の墓地/江里昭彦
刺客の首の行方、日本の行方墓地暑し/磯貝碧蹄館
地震からの墓地のあれの花も持たない梅の木/喜谷六花
冬ざれの墓地のうすれ陽ひくひくと雀が飛んで/大橋裸木
虹見うしなふ道、泉涸るる道、みな海辺の墓地に終れる/塚本邦雄
乾ききる土葬墓地から人間のまなこを嵌めて野良犬が来る/角宮悦子
