自転車を使用した俳句

俳句例:101句目~

自転車に夜の雪冒す誰がため/相馬遷子

夾竹桃自転車押してゆく父子/森山節子

自転車の荷に十五夜の花すすき/瀧春一

自転車に夫の弱腰曼珠沙華/石田あき子

自転車で駅まで運ぶ帰省の荷/高澤良一

自転車が最後に乗つて秋の航/内田美紗

自転車が朽ちてをりたる青芒/行方克巳

自転車が空を飛びしと合格子/遠藤慶奈

帰省二日古き自転車ひきいだす/那須泰

自転車を押す肘ゑくぼ天の川/井堀博子

自転車を押せり頭上に滝光る/岸本尚毅

心願あり月いろのわが自転車/阿部完市

自転車を止めていさざの小商ひ/森田峠

自転車を漕いで灯点す夜の秋/高澤良一

急霰の自転車白鳥を記憶する/鈴木光彦

自転車の粗末にされて秋の桑/宮坂静生

自転車に空気入れをり枯木宿/岸風三楼

旅立ちし子の自転車の飾取る/幡野淳子

自転車を路地に洗へば鳥帰る/依光陽子

自転車を降りて仰ぎぬ桐の花/藤野艶子

俳句例:121句目~

自転車を駆り春潮の際に止む/宮武寒々

泡盛を自転車に積む月夜かな/中山純子

葬列に蹤き氷塊の自転車押す/右城暮石

春の虹坂は自転車の上で歌ふ/石川桂郎

昼下り自転車で来てさくら狩/高澤良一

蜩や自転車やすやす近づき来/石田波郷

朝寒や自転車を立て豆腐売る/長谷川櫂

逆吊りに自転車売らる燕来て/能村研三

自転車の灯のよるべなし芋嵐/小川軽舟

陽炎になろうと自転車は走り/北川邦陽

雪の果自転車押して下校子ら/大東晶子

雪中の自転車永く生きたしや/友岡子郷

雲の峰より自転車の僧衣くる/中山一路

雲雀野や捨て自転車の輪が回る/中拓夫

自転車の灯に藁塚の数尽きず/西村公鳳

自転車の灯に浮び出て鼬逃ぐ/茨木和生

風切って自転車親子の森林浴/赤澤新子

校長の自転車冬田風を切り/百合山羽公

駅前に自転車あふれ日脚伸ぶ/大町莞子

自転車の少女把手より胡瓜立て/川崎展宏

俳句例:141句目~

自転車の投げ込んであり夏むぐら/大串章

自転車の燈に浮かび出て鼬逃ぐ/茨木和生

自転車の産婆ふちどり明るむ湾/大中祥生

自転車の篭に入るだけ大根買ふ/川原程子

自転車の籠にバイエル下萌ゆる/楠本莞爾

自転車の荷は草市のものばかり/関根照子

自転車の音無く去つて月おぼろ/幸田露伴

自転車の風に苧殻のとびたがり/吉年虹二

自転車は地のやさしさや天の川/松山足羽

自転車も小犬もしやぼん玉の中/大村康二

自転車も芝生に寝かせ春の雲/長谷川久子

自転車を乗り捨ててゆく親不孝/高澤晶子

自転車を倒す夏霧疎林より/長谷川かな女

自転車を停めて見てゐる秋出水/田原央子

自転車を川辺に立つる韮の花/藤田あけ烏

かわほりよ紺色自転車もう六月/伊藤淳子

とれたての冬は自転車こぐ瞬間/櫂未知子

わさび田まで山峡町の貸自転車/伊丹公子

一夜にして自転車捉ふ蜘蛛の糸/高澤良一

自転車を曳き出す満目緑の夜ヘ/相馬遷子

俳句例:161句目~

予備校の百の自転車冬に入る/長島八千代

二百十日自転車に油さしている/塩川冨秋

五里の道自転車で往く御講凪/野口奈美子

山吹や野をゆくときは自転車で/大井雅人

山里ゆく生ある自転車もつれて/阿部完市

放置自転車拉致されてゆく油照り/能城檀

晩秋の赤い自転車木に寄する/三浦百合子

片蔭に置く自転車の数知れず/片山由美子

秋冷の自転車光る離別ばかり/鈴木六林男

自転車初乗り湖の青だけとなり/細見綾子

秋桑の照りに自転車疾かりけり/久米正雄

空腹の自転車が逃げてゆく山吹/三浦北曲

置去りの自転車ころぶ野分中/坂本登美子

薫風や自転車で来て朝のミサ/八木マキ子

自然薯掘楢に自転車たてかけて/中村四峰

自転車が倒れて真つ赤田植寒/佐々木六戈

西瓜買ひ自転車押して帰りけり/中山幸枝

負鶏を自転車に抱き去りにけり/河野静雲

自転車が踏みつけゆきぬ楓落葉/高澤良一

自転車が退けとベルしぬ芋の道/中村汀女

俳句例:181句目~

自転車できて畦ぞひの稗を抜く/森田公司

野を駈ける子らの自転車麦はあを/及川貞

自転車で初鮒が来る父が来る/長谷川育子

自転車で鮒来しよ春遠からじ/秋元不死男

雪の田となりて自転車思ひ出す/松山足羽

自転車で鳩分けてゆく恵方かな/飯島晴子

雪解風自転車にいま帆の欲しき/鎌田/亮

自転車につむ鮟鱇の尾が見えて/岸本尚毅

自転車にまたがったまま花吹雪/高澤良一

自転車に白菜つけしままの昼/市村究一郎

青芝に自転車寝かせおく恋よ/正木ゆう子

自転車に空気を入るる石蕗日和/高澤良一

自転車は遠き夏木に停め来しと/依光陽子

自転車に肘つき瓜値決められし/宮武寒々

自転車のほつほつとほる露すずし/瀧春一

駅前の自転車サドルに赤とんぼ/高澤良一

髪干すと自転車にのる春の暮/北見さとる

鳥類を自転車にのせひそかなり/阿部完市

麦秋の中ゆく自転車と並ぶ航/中戸川朝人

ノーリツ號といふ自転車や盆の風/田中裕明