俳句例:201句目～
月光を容れ何せぬ追儺の夜/佐藤鬼房
月光に毒を貯へ毒きのこ/遠藤若狭男
水芭蕉昼も月光抱きつゞく/高木雨路
深井戸に降る月光と白息と/中村苑子
川岐れともに月光奪ひあふ/毛塚静枝
明くるまで月光宿る霧氷林/田村恵子
月光の泡立つ父の生毛かな/寺山修司
月光に漂ひ消えし一語かな/草間時彦
月光を吸ふ音のして泰山木/加藤慶二
敵艦は撃たれ月光梅に照る/渡邊水巴
月光に燭さわやかや灯取虫/飯田蛇笏
岩稜を風打ち月光靡き見ゆ/岡田日郎
山風に月光添ひて走るかな/中島月笠
月光の休まず照らす雪解川/飯田龍太
月光をふるはす桐の虫一つ/飯田蛇笏
月光の果に翳こく葡萄園/川島彷徨子
少年の顔月光を得て消ゆる/大井雅人
月光のちりちり島の間を灼く/岸田稚
月光や葦の繁りの中も葦/沼尻巳津子
櫂のごと月光に濡れ青芭蕉/伊東宏晃
俳句例:221句目～
月光の野のどこまでも水の音/及川貞
桜蕊降るや月光散らしつつ/田中蘇水
桐一葉月光噎ぶごとくなり/飯田蛇笏
月光に舞ひすむ鶴を軒高く/杉田久女
月光やみなぎるものに金木犀/林宅身
寒月光隈なき水で焚火消す/齋藤愼爾
月光のひとすぢ洩れて草雲雀/中田剛
月光に花梅の紅ふるゝらし/飯田蛇笏
月光に花梅の紅触るるらし/飯田蛇笏
月光に荒き隙間のありにけり/辻桃子
月光に菜畑青き夜寒かな/楠目橙黄子
月光の切先に触れ湖凍てぬ/根岸善雄
月光の我が剥落を装へる/沼尻巳津子
月光の創かくれなし蟻地獄/齋藤愼爾
日光もて拝す月光菩薩かな/和田悟朗
月光の匍ひ流れをる廊下かな/上野泰
月光に見ゆる限りの湖の波/行方克巳
月光に触れて白玉椿落つ/古賀まり子
文机の月光浄土なりしかな/小澤克己
月光も近寄りがたく浅間燃ゆ/及川貞
俳句例:241句目～
月光に軍醫の手套ま白なり/横山白虹
月光に近江の蔵の鎮もりぬ/村田規子
月光も潮の香りも網戸越し/岡本虹村
枯木立月光棒のごときかな/川端茅舎
月光の外套のまま歩み入る/中島斌男
月光の潮となって流れをり/中杉隆世
猫歩む月光の雪かげの雪/橋本多佳子
月光の跡形もない髪憐む/林田紀音夫
滝崩れ月光倒れたるままに/対馬康子
月光ほろほろ風鈴に戯れ/荻原井泉水
寒月光背後見ずとも貨車通る/桂信子
生きて在る日の月光の湧井かな/林桂
月光は靄に蘆花庵あやめ咲く/松澤昭
月光に霜除も花も埋るかな/中島月笠
枯山の月光垢離というべかり/辻直美
月光にさえ草虱つかんとす/石黒雅風
月見して如来の月光三昧や/松瀬青々
月光界宿の迎への湖の舟/八牧美喜子
どの部屋も月の光や寒き夜/高木晴子
月光帯びてあらわれ胸の傷/高澤晶子
俳句例:261句目～
セロ弾けば月の光のうづたかし/篠原
マスクして月の光の屍室/大木あまり
曼珠沙華沼に月光ひろがりぬ/中田剛
月光の帚木に子の座りをる/山西雅子
月光の針のむしろの貝割菜/平井照敏
噴水や月の光に消え入りて/鈴木花蓑
月光を逃る抱擁せんがため/対馬康子
月光のそそぐ石ころが六つ/鎌倉佐弓
白鳥の夜は月光の芯となる/宇咲冬男
波頭月の光を得つゝあり/加藤蛙水子
月光にとり出してや鯛の鯛/岡井省二
月光のすだくにまろき女のはだ/篠原
野分先づ月の光を吹きはじむ/斎藤玄
凶年やかたつむりには月光を/飯島晴子
切ッ先に月光を溜め氷柱かな/西村和子
吹き上ぐる月光ばかり結氷湖/今瀬剛一
咲きいでゝ月光ほてる薺かな/渡邊水巴
咳けば月光の濃くなりにけり/草間時彦
地球凍てぬ月光之を照しけり/高浜虚子
月光の歓喜冬木の根へおよぶ/花谷和子
俳句例:281句目～
孤児睡る月光の地靴にて過ぐ/中島斌男
寒月光あまたの軌條地に漂ひ/横山白虹
寒月光こぶしをひらく赤ん坊/三橋鷹女
寒月光地のひびわるるまで白く/三谷昭
寒月光山を恋いつつ遁走す/宇多喜代子
寒月光己の骨も透きとほる/糸山由紀子
寒林をゆく月光の縞を被て/岡本差知子
寝返りし子は月光に近づきぬ/対馬康子
師を胸に月光冷ゆる崖下る/柴田白葉女
庭の菊月光吸つて香を放つ/石井とし夫
徐々にさす雨後の月光朴の花/吉井莫生
慈悲心鳥月光あはく穂高立つ/渡辺立男
手拭を月光に干し瀬音かな/大木あまり
採氷のきらめき積まれ月光裡/伊藤皓二
日光のなかに月光すみれ草/大槻紀奴夫
日光月光瑠璃光如来花会式/窪田あさ子
日光月光面輪通ひて初日中/中村草田男
春深き月光触るる椅子にあり/中島斌雄
曳く水尾に月光のりて穏かや/青山千童
曼珠沙華月光のほか纏ふなし/三橋敏雄
