時計を使用した俳句

俳句例:201句目~

時の日に遺品の時計巻きにけり/大崎七峰

時の日の時計よ振れば刻みそむ/木下夕爾

時の日の時計見詰めて待ち惚け/田中光子

橙は実を垂れ時計カチカチと/中村草田男

時計どれも狂ふ紫陽花氾濫して/横山房子

時計なき手首のびやか蓬摘む/平井さち子

時計みな合せて除夜の鐘を待つ/道川虹洋

時計みる顔のふりむく夜なべかな/西山誠

時計工場秒音ひしめきあひて雪/毛塚静枝

時計打つ秋思の闇をふるはせて/金堂豊子

時計見てからの朝寝の深からし/岡田季男

時計鳴り猩々木の緋が静か/阿部しょう人

月涼しノートルダムの時計鳴る/星野立子

榾の客時計鳴るたびしりあげて/橋本鶏二

歳のくれ龍頭の時計くるひけり/正岡子規

死の刻を秋風の時計きざみゐる/岩田昌寿

浮寝鳥夜ごと時計の螺子を巻く/有住洋子

滝茶屋や那智の巫女時計見に/高橋淡路女

物に倦みて時計見る夜の長さ哉/正岡子規

生家涼し煤け時計の鳴り出でて/羽部洞然

俳句例:221句目~

病院のかゆの中から時計が出る/阿部青鞋

短日の時計の午後のふり子かな/飯田蛇笏

短日の時計狂ひしまま動く/阿部みどり女

石榴裂け生涯いくつ時計もつ/波多野爽波

祖父の世の時計刻打つ夜の秋/守田椰子夫

神の留守エレキ源内の時計鳴る/巌谷小波

秋の夜の時計に時計合せ寝る/波多野爽波

秋出水いきなり鳴りし時計かな/小原芳子

秋暁のダリの時計が喋りだす/田川ひろし

秋遍路時計止まつてゐたりけり/宮坂静生

竹皮を脱ぐや遠くに時計鳴り/猿橋統流子

籐椅子に時計が鳴つて濃き没日/赤尾兜子

糶果てし時計がふたつ冬かもめ/八木/進

耕すやぼろんぼろんと時計鳴る/細谷源二

聖湖干ぬ時計の面に顔うつし/八木三日女

臘梅や時計にとほき炬燵の間/室生とみ子

おそなへに時計四日の夜の十時/上野章子

船蟲や射す日とぼしき石時計/下村ひろし

きらきらと時計をぬけて秋の風/川崎展宏

つっと幹に五十雀ゐし時計鳴る/小池文子

俳句例:241句目~

花曇り止まつたままの掛け時計/佐藤輝子

つばめ来る修理の時計横抱きに/石川文子

はつ鶉時計の六ツもうたせけり/中村史邦

ひしひしとさむき法廷時計なし/飯田蛇笏

ぼろ市や持てば鳴り出す掛時計/上木彙葉

よそに鳴る夜長の時計数へけり/杉田久女

をけら火を時計回しに坂くだる/奥田弦鬼

エイプリルフールの駅の時計かな/轡田進

ピツコロ吹くからくり時計春隣/二神節子

ママの時計ボクのと違う落葉季/高澤晶子

虚と実のひと日を鳴りて春時計/宮崎敦子

ロンロンと時計鳴るなり夏館/松本たかし

一つ打つ時計のあとを背蒲団/赤松けい子

蛙の闇へ時計の音の出でゆかず/桜井博道

二者択一寒の時計すぐ巻き終ふ/川口重美

今日の終り時計にありて蒸し芋/小宅容義

仏法僧坊の時計はひとつ鳴りぬ/澤田緑生

裏向けて置きし時計の夜長刻む/宮津昭彦

仰ぎ見る夜長の時計とまり居る/島田青峰

元日の時計が鳴つて夕さりぬ/瀧澤伊代次

俳句例:261句目~

光りかけた時計の面梅若葉いま/北原白秋

冬の朝亡父の時計に起こされる/吉田/洋

遅き日の四時打ちきりし時計哉/正岡子規

冬山家時計ばかりの音に寝し/石井とし夫

郭公やほろほろと鳴る時計欲し/細谷源二

冬菊や時計の針の午後急ぐ/阿部みどり女

冷房に時計を見上ぐ地震のあと/横山房子

初時雨吐息にも似て時計鳴る/中村喜美子

金雀枝や時計を隠しおほすべう/柚木紀子

動く寒さの時計は外し手術台/加藤知世子

口ンロンと時計鳴るなり夏館/松本たかし

吹雪きつゝ歩廊の時計みな灯る/中島斌雄

四代を刻みぼんぼん時計に冬/大西優九里

地に落とし父の時計が動きだす/守谷茂泰

塔時計四面おなじき白夜かな/阿波野青畝

雛の日や時計の音のほかはなく/石川桂郎

夏めいて花の時計の廻るかな/岡本求仁丸

雪山に時計は遅々とすゝまざる/相馬遷子

夏時間名残りの時計ゆるく打つ/吉屋信子

夜の雪に駅の時計の機械透け/田川飛旅子

俳句例:281句目~

夜業の灯時計の音にひそむ力/堀之内勝衣

大正の時計の鳴れるしぐれ窯/筒井珥兎子

大雷雨去りよみがへる駅の時計/右城暮石

天炎ゆるダリの時計が正午打ち/橋本榮治

天高しペアの時計にやや遅速/長久加奈夫

家に時計なければ雪はとめどなし/森澄雄

風で埋まる塩ふく谷の白い時計/金子兜太

餅焼くや手巻の時計ゆるり打つ/川地五江

庭の百合にほひ来りし時計鳴る/高木晴子

廃れ金鉱村の時計は葉蔭で鳴る/伊丹公子

首に吊る砂の時計の息絶えて/増田まさみ

掛け時計はづせしあとや雁渡る/山本洋子

日の涯に酷暑の時計鳴りにけり/河合凱夫

日永しと止まれる振子時計かな/三橋敏雄

魂棚のつまの時計も寂びにけり/関戸靖子

鰤起し不意に鳴り出す掛時計/渡邊榮三郎

鰯雲原爆の刻指して動かぬ時計/内藤吐天

日盛の二時打つ屋根の時計かな/高浜虚子

日盛りや時打つ余韻時計の中/中村草田男

明日へ巻く時計城なほ夕焼けて/川口重美