俳句例:201句目～
鮭下げて師走のバスを乗り過す/河野南畦
ぼろのごと放つちやれ鮭の横たはる/林火
もう飛べぬものは流され鮭の門/対馬康子
鮭同士ぶつかりあふは木の音す/今瀬剛一
鮭小屋の仮寝の夜具か片まくり/大畑善昭
鮭小屋の戸に砕けたる氷かな/石島雉子郎
オホツクの夜々の海鳴り鮭の秋/小島海王
一塊のくろがねとなり鮭のぼる/菅原鬨也
一眼の抜けたる鮭の吊られをり/佐川広治
二タ囮仕掛けひとつの鮭番屋/村山/志水
云ひ置いて妻の発ちゆく切身鮭/辻田克巳
口あけて抗ふ鮭は打たれけり/藤田右丞子
鮭の切身の鮮紅に足とむる旅/能村登四郎
鮭のぼるかはたれどきの十勝川/今城余白
吊るされし新巻鮭がきわみかな/二村典子
多摩川や鮭群来群来と昼の虫/伊藤いと子
尾鰭とも背鰭とも鮭のぼり初む/岡安仁義
鮭のぼる日や雄阿寒の俄か晴/石黒/沼楓
山家への負ひ荷新鮭反りうたせ/中島斌男
月光の騒ぐところが鮭どかな/加藤蛙水子
俳句例:221句目～
望郷の鮭打たるるよ一茶の忌/北見さとる
鮭のぼる河口と見れば啻ならず/後藤一秋
水ばかり見て鮭捕りと別れたり/細川加賀
鮭のぼる金色けぶりその夜以後/和知喜八
激流に身を躍らして鮭のぼる/吉良比呂武
鮭盗むきつねの罠のかけてあり/田中冬二
男らの鮭打ち終へし背が溜る/蓬田紀枝子
鮭突のみな薄鬚ののびてをり/中田みづほ
鮭簗のあたりうろつく熊ならず/高澤良一
鮭簗を解きしみちのく霙れけり/伊東宏晃
春愁や眼に塩詰まる鮭とどく/赤松ケイ子
秋鮭は人情うすく切られけり/山田句蓮洞
粕汁に頭を割つて鮭とばしたり/石川桂郎
網の蟹海鴎にぶつつけ鮭不漁/青葉三角草
群鮭の身を震はせて浅瀬打つ/紺野美代子
蔵王荒れつゞき阿武隈鮭不漁/佐久間庭蔦
鮭の簗月下に修羅をなせりけり/大橋敦子
鮭遡上もつとも鳶の知れりけり/三村純也
雨漏りにランプを移す鮭の小屋/田中冬二
鮭飯のほの赤味さすぬくみかな/大野林火
俳句例:241句目～
雪代やいち夜にうごく鮭番屋/白澤よし子
鮭鱒の孵化のさかりや寒の入/河東碧梧桐
鮭打を阿修羅の貌と見たりけり/大橋敦子
波蹴つて鮭飛ぶさまもして追はる/田村了咲
寒い哉つるされた鮭の大なるが斑/幸田露伴
極暑なるひりひり鹹き鮭食うぶ/長谷川素逝
鮭のぼる川青すぎるさみしすぎる/菖蒲あや
背鰭たてけもののごとく鮭のぼる/村上渡鳥
返り咲く藻の花のあり鮭孵化場/鈴木洋々子
鮭取りのししむら濡れて走りけり/沢木欣一
鮭の身の木目のごとくほぐれけり/中嶋延江
鮭提げてくる人に掃く門べかな/金尾梅の門
出羽富士の明るき日なり鮭のぼる/佐藤幸寿
一握の火やがてごうごう鮭獲る火/寺田京子
鮭小屋の舟の出ぬ日は炉を焚きて/高橋卯木
疲れた声流されている鮭こぬ川/鈴木八駛郎
ブナ鮭の水かったるく打ちにけり/高澤良一
鮭のぼる肉の襤褸のあかあかと/小檜山繁子
鮭のぼる気配満たして拝み小屋/加倉井秋を
もの影のごとくに鮭のさかのぼる/阿部慧月
俳句例:261句目～
鮭のぼる夜波の騒ぎあきらかに/高見とねよ
鮭のぼる川しろじろと明けにけり/皆川盤水
インデアン俯向くは鮭突く構へ/左右木韋城
鮭打棒濡れたるままに焚かれけり/小原啄葉
なま鮭や擦生姜の匂ひ菊に似たり/渡邊水巴
鮭の川見てゐるけふの澄雄かな/藤田あけ烏
ともしびもなく舟かゝる鮭とると/山口青邨
さざ波をかきたて鮭競つて来る/阿波野青畝
鮭網の鈴が鳴るなりゆめうつゝ/軽部烏頭子
旅の吾も眼なれて鮭ののぼる見ゆ/皆吉爽雨
鮭網や苫にあめふるしんのやみ/軽部烏帽子
鮭網をあげし水勢やしんのやみ/軽部烏帽子
攻め網にかゝりし鮭の水しぶき/渡部余令子
鮭網を苫にあめふるしんのやみ/軽部烏頭子
鮭網打つ孤りに雪のつのりくる/文挟夫佐恵
ごてごてに酔うてしまひぬ鮭の鍋/小原華石
投げられてはかなや鮭の死いらち/立花北枝
鮭の貌けはしく吊られ妻病めり/大岳水一路
こびりつく汚れのごとく鮭死せり/岡田史乃
霧降るや鮭追ふ舟の灯のみだれ/岡本まち子
俳句例:281句目～
この川に鮭は打たるるほかは無く/坊野早苗
はららごをぬかれし鮭が口を開け/清崎敏郎
手負鮭火の粉のごとく腹子撒く/八牧美喜子
川の面のささくれ立つは鮭のぼる/西村和子
鮭を突くひとりを海猫の遠巻きに/中村四峰
日へ吊る鮭郵便夫は郵便配るべし/磯貝碧蹄館
初鮭や部下のアイヌの兵士より/阿部みどり女
鮭のぼり来る撲たれても撲たれても/道山昭爾
はららごを抜かれし鮭の目のうつろ/相馬沙緻
鮭のぼるまつはりのぼるもののあり/依田明倫
オホーツクを引きしぼり鮭網あぐる/広川康子
鮭打たるわれも打たれてしまひけり/渡辺恭子
初鮭を部下のアイヌの兵士より/阿部みどり女
はららごをこぼして鮭の撲たれけり/田原愛子
遥かなる目をして鮭の打たれけり/ほんだゆき
はららごの炎を抱く鮭も打たれけり/渡辺恭子
アーギライトは森の昏れいろ鮭くる街/伊丹公子
転んで泣かぬ子鮭の切身と灯が待つよ/磯貝碧蹄館
地べたで鮭焼く昨日も今日もつまづきどほし/磯貝碧蹄館
アノ世ヘモ鮭送ラント宛名書キ十二月ノ雲呼ンデミルナリ/疋田和夫
