季語/鮟鱇(あんこう)を使った俳句

俳句例:101句目~

鮟鱇の煮え隣の男の肘がさはる/喜谷六花

煮こごりにも裏鮟鱇を裏返し/橋本美代子

鮟鱇の髭もて持たれ値ぎらるる/加藤秋邨

鮟鱇や木の葉のような大伯母来/上原勝子

紐になり了る鮟鱇の吊し切り/田川飛旅子

鮟鱇のあぎとの残る鈎を見き/八木林之助

鮟鱇の肝喰つてまた逢ふ日まで/朝倉和江

鮟鱇や店に生きゐて日暮れなる/中川宋淵

鮟鱇に刃を入れてのち自在なり/原けんじ

鮟鱇に似て口ひらく無為の日々/木下夕爾

鮟鱇の口して義歯の型とらる/田川飛旅子

鮟鱇の昨日の骨と今日の骨/すずきりつこ

鮟鱇のふさぎこんだる面がまへ/市川栄次

鮟鱇の腹たぶたぶと曳かれゆく/角川照子

鮟鱇の骨のみいまだ吊られ居り/石井松江

鮟鱇の正体もなく糶られけり/高浜胡鈴子

夕鯵をまつ間わびしき鮟鱇かな/井上井月

鮟鱇の貌ほめあげて売られけり/那須淳男

身のうちに鮟鱇がゐる口あけて/奧坂まや

貧てふ文字鮟鱇のごと吊したし/小林康治

俳句例:121句目~

鮟鱇の骨まで凍ててぶち切らる/加藤秋邨

自転車につむ鮟鱇の尾が見えて/岸本尚毅

真つ先に肝を抜かれて吊り鮟鱇/福田貴志

水揚げの鮟鱇ビロード光りせり/高澤良一

息止めて見る鮟鱇の吊し切り/小俣由とり

鮟鱇を一尾といふも愚かなり/相生垣瓜人

吊るされし鮟鱇何か着せてやれ/鈴木鷹夫

鮟鱇の煮ゆる間侍り女将たり/鈴木真砂女

鮟鱇を吊りまた銭の笊吊るよ/富岡掬池路

吊し切る鮟鱇の腹すでになし/鈴木勇之助

鮟鱇を煮るにも痩せて書淫の手/石川桂郎

鮟鱇の聖者のごとく吊られけり/三谷和子

口紅ぬり鮟鱇食べしとは見えず/鈴木貞雄

鮟鱇のあんぐり湾の形せり/小島ノブヨシ

鮟鱇煮る妻のたかぶり声なさず/杉山葱子

鮟鱇の愚にして咎はなかりけり/村上鬼城

あんかうや孕み女の釣るし斬り/夏目漱石

風に背を押され鮟鱇買ひにけり/小坂優美子

身を削がれゆく鮟鱇の眼ありけり/牧野寥々

舟釣瓶ぶつかけられし鮟鱇かな/阿波野青畝

俳句例:141句目~

鮟鱇のむらぎもを食ひ独りなり/本宮銑太郎

鮟鱇の削がれつくして凍てにける/小林康治

鮟鱇が吊るされ河岸に雪降れり/伊藤みちを

鮟鱇の泣き寝入りして買はれけり/堀口星眠

鮟鱇を腑におとしたるところなり/西村純吉

鮟鱇のよだれの先がとまりけり/阿波野青畝

鮟鱇の口巨大迷路のはじまりとも/白石司子

鮟鱇のさかさまに日は闌けにけり/谷川護物

泪目のまゝ鮟鱇の割かれけり/佐々木/鳴子

出刃を呑むぞと鮟鱇は笑ひけり/阿波野青畝

イエスより軽く鮟鱇を吊りさげる/有馬朗人

あんこう鍋皆いつぱしの顔もてり/荒井正隆

あんこう鍋神田は路地の二階にて/藤岡筑邨

鮟鱇に目のあり二つちよぼとあり/藤田あけ烏

エリックサティ鮟鱇の肝食ひをれば/大石悦子

鮟鱇もわが身の業も煮ゆるかな/久保田万太郎

鮟鱇の飼はれてひげを静かにふる/永田耕一郎

あらたまの火を呑んで鮟鱇老いせぬや/中勘助

鮟鱇をねほりはほりとさはりけり/作山/大祐

ひたひに灯りを感じる鮟鱇をたべる/中塚一碧樓

俳句例:161句目~

ぬめりとる出刃を砥にあて鮟鱇割く/辻口八重子

鮟鱇のごとく胃袋は何んでも食いたがる/橋本夢道