俳句例:101句目～
暑い朝市突いて両手の間が店/加倉井秋を
新米にしばらく両手うづめけり/栗林明弘
菱とりの遠き両手をかがやかせ/後藤夜半
月を看る窓より両手出して居る/京極杞陽
桃の実よ両手ぬらして啜りけり/寺田浩子
セーターをくぐる両手が宙を突く/大高翔
起きぬけに両手を洗ふ立夏かな/中谷葉留
打診する医師の両手の日焼かな/佐藤サヨ
両の手を机に突いて咳込める/千本木溟子
両の手を耳の帽子に枯野行く/四条ひろし
あたたかき両手をさげて冬の潮/石田郷子
あめんぼになりたき両手源流に/山内/愛
もの譬ふ両手をひろげ春めく日/藤田湘子
鵲の巣と言ふ両手広げてみせ/猪俣千代子
両手拡げて闇より案山子出て来たり/清水仁
芋吹いて食うて両手で貧につよし/橋本夢道
手相見に両手をひらく日脚伸ぶ/深見けん二
両手で抱へ落葉投げ合ふ遊びかな/須川洋子
赤い羽根小さき両手が来てつける/伊東慶子
ひとひらの紅葉両手でうけとめる/酒井弘司
俳句例:121句目～
フランス絵画両手に余り寒の入り/前田保子
行く秋の残せるものを両手に包む/國安/愛
葡萄大房みるみる両手湖となる/河野多希女
縄綯ひの両手さしあぐ影法師も/木附沢麦青
ヒロシマ忌すすぐ水あり両手あり/北さとり
枯鶏頭抜きし両手のほてりかな/中島たけ子
栗拾ふ両手のほかに何もなし/佐土井智津子
わが両手稼ぐことなし蚯蚓鳴く/星川佐保子
セーターを両手縛りに肚決めて/平井さち子
打水の両の手やがて消え失せる/林田紀音夫
雀らと両手の陽焼け春はゆくかな/金子皆子
刹那々々に生く焚火には両手出し/津田清子
風の両手が空から落ちるクラブ裏/阿部完市
駆ける子の両手はつばさ野に游ぶ/山中敬子
鬼を視たるが義民はじめや飛雪の両手/林桂
両手伸べてみな～今朝の案山子かな/渡辺水巴
合歓の径下り来る両手つばさにし/田中午次郎
両手を挙げる白雲ありき出雲ありき/夏石番矢
スケートの両手ただよひつつ止まる/森賀まり
降る木の葉両手に受けて楽しき日/つじ加代子
俳句例:141句目～
胼切れし妻の両手にみとらるる/佐々木太刀男
両手に星をつかみたい子のバンザイ/住宅顕信
両手の荷/自動ドアにおじぎして/近藤三知子
抱きつつ両手を使ふなりけり地に起つ両手/林桂
両手をいれものにして木の実をもらふ/尾崎放哉
雛あられ両手にうけてこぼしけり/久保田万太郎
紙風船ふくらんだかたちの小さな両手/大橋裸木
晶子忌や両手にあます松ぼくり/永島靖子「眞晝」
どこへ飛ばんとするか焚火に両手ひろげ/野澤節子
万力尽きて辰之助死にしも両手は天にあげず/橋本夢道
青田の沖へ手を振るつひに両手振る/斉藤美規「春の舞」
海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり/寺山修司
