俳句例:201句目～
秋風や我長養す肚裏の物/小杉余子
夕霞連吾を待つ宿はづれ/正岡子規
鴬や我に親しき母の客/深見けん二
四十五年我に妻無し新走/岡本圭岳
中年を慎みて我セルの膝/喜谷六花
追憶が我をさいなむ鉦叩/福田蓼汀
吾を塗る弟憎し歌かるた/会津八一
九十九夜我も泣しよ磯千鳥/星布尼
馬追の我貧乏を鳴く夜哉/正岡子規
海焼の手足と我とひるねざめ/篠原
宝船我に敷かれて妻になし/森田峠
五月雨や我宿ながらかゝり舟/竿秋
跪く我は異教徒青畝の忌/平田冬か
夏見舞妻に一枚吾に二枚/高澤良一
人に家を買はせて我は年忘れ/芭蕉
墓参我拝むゆゑ子も拝む/和田敏子
涼しさや我船一つ鳰の海/正岡子規
涼風に紙片の如く我吹かれ/上野泰
涼風の我眉太し佐渡ケ嶋/尾崎紅葉
人ゆきて我往かねども寒き畦/槐太
俳句例:221句目～
実存の淵を我とす秋の暮/永田耕衣
人中の鮟鱇と我を罵りつ/中川四明
吾をまだ叱る母あり菊膾/石川文子
人我を忘れ去らんか冬籠/山田不染
人文字の我も一点秋高し/松崎麻美
吾れ朧世も朧なり猫を膝/村越化石
我こそはけふを生れ日花の春/来山
我ためか鶴はみのこす芹の飯/芭蕉
吾が影を映す暗さの冬泉/石川文子
阻む岩攀ぢ秋天の中に我/福田蓼汀
胴着抜いて我殻を見る畳かな/篠原
音楽堂出でたる吾に雪起/森永美保
青蛙吾を見る眼の動きたる/鎌田篤
声明は我胎内に花明り/伊丹さち子
こんなもの桜の齢吾が齢/高澤良一
我と来てあそべや親のない雀/一茶
吾の上父母の上雁帰る/村中トウ子
我と汝青木の花と苔の花/岩田由美
我と見て嘶く馬や木下闇/高浜虚子
能なしの寝むたし我を行々子/芭蕉
俳句例:241句目～
吾が影が海にたふれる冬旱/芦川源
青山椒一粒吾が遠くなる/大橋敦子
霧流れ積石に吾も石加ふ/宮坂静生
霧流れ日輪ながれ吾木香/藤田湘子
吾が影が居て寒鮒を濁らしむ/鷹女
鳰は潜水精進吾は句精進/高澤良一
霜柱総立ち吾を迎へたり/塩川雄三
雪鳴や吾が片肺の協和音/佐藤緑芽
雪間草翁は吾を恋ひをらむ/辻桃子
雁渡し佇みて吾れ晩年ヘ/村越化石
自画像が我を見てゐる春隣/堀政尋
銀婚の吾等の影を掛稲に/山口青邨
金環蝕名誉ある吾等かな/阿部完市
酔かなし雪女かも吾妹かも/京五紅
近づくだけ吾に近づき蛍過ぐ/誓子
我ままに枝のそろはぬ柳かな/如元
舞ふ我に新樹の風や薪能/金井綺羅
豊年の畝集りて吾家なす/久米正雄
我ものに手折らば淋し女郎花/蓼太
講義する吾も眠たし花曇/岡安仁義
俳句例:261句目～
酒やけの我顔思へ秋の風/小沢碧童
鳥雲に吾は一把の薪提げて/岸田稚
西行忌吾に離俗の詩はなし/磯直道
長子我長子ともなひ墓詣/福田蓼汀
我も亦秋の遍路の心もて/高濱年尾
我も又初天神の人となり/工藤隆子
蟷螂の立木と思ふ吾に寄る/森澄雄
我も死して碑に邊せむ枯尾花/蕪村
蟇と吾眼けだるく細め合ふ/有働亨
螢火の一直線に吾へ来る/右城暮石
蝗跳ぶ吾れを要の放射状/吉田孝江
年歩むその後より我歩む/工藤克巳
惜春や斯く老いて吾異国に/間崎黎
渡り鳥日本の我を見しらぬか/一茶
いたどりや汝と我の千曲川/原田喬
芹そだつ冬の水吾が旅の影/及川貞
仏の座我先づ摘んで帰らばや/祐昌
花冷や吾に象牙の聴診器/水原春郎
花供養瓦寄進を吾もせん/中田余瓶
脇指も吾もさびけり冬籠/水田正秀
俳句例:281句目～
花として我も交らん夕花野/水島稔
春愁の我に二つの影法師/千原草之
夏に入る等身鏡の吾に喝/長友千穂
春灯の下に我あり汝あり/高浜虚子
羽抜鶏吾も患ひ髪失せし/品川鈴子
春燈の下に我あり汝あり/高浜虚子
花の闇お四國の闇我の闇/黒田杏子
繭玉や吾を一瞥の老患者/関戸靖子
我を待つ雲の黄金海岸か/夏石番矢
名月や角田川原に吾一人/正岡子規
我を見て嘶く馬や木下闇/高浜虚子
紅梅の吾に一輪汝に一輪/後藤夜半
千灯の吾が一灯や初観音/湖城公子
仰向に我臍見せん女七夕/正岡子規
茶の水に我とふたする氷かな/守武
吾よりも妻に商才初戎/五島沖三郎
我事にわが嘆きある燻炭/石塚友二
寒日に面しゆく我や戎橋/飯田蛇笏
春風や天上の人我を招く/正岡子規
風花や我も一燭大師堂/深見けん二
