俳句例:101句目～
野に仰ぐ峠の道や秋の晴/内田百間
冬麗の城は離れて仰ぐべし/樋笠文
終りよき裸木凛と天仰ぐ/口村洋子
便追を仰げば火口壁近し/目黒十一
竜骨に仰ぐ赫き日夏終る/河野南畦
紅椿仰ぐにさらす喉仏/伊丹三樹彦
初護摩の煙の中に滝仰ぐ/中村桑摘
月仰ぐ人に目礼して通る/朝日勝子
十三夜旅に仰ぎし疲れかな/杉本寛
禁煙の夫初鵙を仰ぎをり/中村明子
千社札春雨傘に仰ぎ見る/清原枴童
神杉の樹齢を仰ぐ淑気かな/東天紅
南国は馬上に仰ぐ木芙蓉哉/森鴎外
師のこゑを仰ぐ三月欅立つ/神蔵器
神品の桂黄葉とうち仰ぎ/高澤良一
卵白し天を仰ぎて羽抜鶏/西東三鬼
神の藤美し過ぎずやと仰ぐ/森田峠
原爆忌今宵の星の数仰ぐ/長野深郷
参籠の皆出て仰ぐ盆の月/高井良秋
破芭蕉仰ぐ十指を組合せ/川崎展宏
俳句例:121句目～
石枕して雲仰ぐとき秋風/福田蓼汀
八月の一粒栗の木や仰ぐ/石川桂郎
君仰ぎ流転うべなふ爽やかに/林翔
後の月仰ぎ生涯一学徒/大久保橙青
白雲を出る日仰ぎつ緑蔭に/草田男
もの忘れするたび仰ぐ春の山/黛執
乱れなき二百十日の滝仰ぐ/林糺苑
町中や仰げば鳶の霞む空/正岡子規
狼を詠みたる人と月仰ぐ/茨木和生
月の出て再び仰ぐ象頭山/酒井黙禅
坑を出て荒男の仰ぐ星寒し/三谷昭
木蓮を仰ぎ仰ぎて郵便夫/西村和子
城仰ぐ二ン月白き衿重ね/梅津智子
堅灰岩仰ぎ黙祷梅雨晴間/岡田日郎
会葬の何人か鷹仰ぎをる/茨木和生
息一縷白樺の花仰ぎけり/藤田湘子
息白く仏顔仰ぐ大和かな/中里美恵
狐嫁入るかと仰ぐ一の午/千原叡子
燭をもて初花仰ぐ酔ひにけり/龍男
煤掃の覆面の母子が仰ぐ/辻田克巳
俳句例:141句目～
夕月を仰ぎて科白舟芝居/猿渡青雨
仰ぐとき人は瞬く杉落葉/鈴木鷹夫
細氷現象氷野の夜に仰ぐ/深谷雄大
無思想にゐて鴬を仰ぎけり/斎藤玄
灯台を女神と仰ぐ葉月潮/西野敦子
仰ぎ見る峰雲一基一菩薩/熊野鳥湖
野分雲箱根山中にて仰ぐ/細見綾子
夢違観音仰ぎ年惜しむ/市野沢弘子
九百号なむ冬麗の塔仰ぐ/渡辺恭子
打仰ぐ大枯木枝飛ばしをり/上野泰
朝を雁背高き夫が仰ぐなり/及川貞
大木の落葉を仰ぐ五六人/橋本鶏二
冬山を仰ぎ通しの項かな/草間時彦
朝の雁背高き夫が仰ぐなり/及川貞
大比叡を仰ぐ蹴鞠始かな/那須茂竹
渡り鳥出雲は空を仰ぐ国/鈴木鷹夫
渓空に仰ぐ日疎し冬菫/下村ひろし
冬山を仰ぐ身ふかく絹の紐/岡本眸
天の川仰ぎ黒髪背に流す/川又曙光
晴れ渡る幟を仰ぎ空仰ぎ/吉光久馬
俳句例:161句目～
晴天や一遠に梅仰ぎゐて/河野南畦
春著きし乙女を父が仰ぎみる/羽公
月仰ぐ終生吾に蹤く影と/石川文子
歯舞の島影仰ぎ昆布干す/平松公代
新松子仰ぐ無防備喉仏/小林あきを
夜学生思ひ思ひの星仰ぐ/安松正義
花暗の仰げば樹齢応へけり/中村明子
峯仰ぎつゝ遊船や余花の淵/高濱年尾
仰ぎたる一切合財普賢象/山内こころ
花を見にゆく家桜仰ぎ出て/大橋敦子
峰の花仰ぎよりたる籬かな/野村泊月
芙蓉峰うち仰ぎもす汐干狩/飯田蛇笏
良弁忌慈顔を仰ぎ寒からず/芦田善子
舟よせて鳥居を仰ぐ若葉哉/正岡子規
仰ぎみる高さや子規の撫子図/辻桃子
仰ぎゐておのれ忘るる冬桜/根岸善雄
仰ぎゐるわれも暮れゐる釣忍/森澄雄
仰ぎゐる人の面の花明り/深見けん二
仰ぎ得し巴里の秋の空の紺/河野静雲
臥すは嘆き仰ぐは怨み流し雛/岡本眸
俳句例:181句目～
背の順に並び一列椋鳥仰ぐ/太田土男
職工で終るほかなき雁仰ぐ/菖蒲あや
仰ぎ見る大注連飾出雲さび/杉田久女
春の月仰ぎて踏みて尼寺へ/植村通草
仰ぎ見る楝の花のちる音か/山西雅子
老骨の反り身に仰ぐ朴の花/大原一花
老の眼に仰ぐ高さや涅槃像/河野静雲
仰ぎ見る諏訪の鳥居や桜餅/松藤夏山
羽抜鶏天を仰ぎて水飲めり/吉田晶二
仰ぐこと多くなり春の空となる/秋を
星仰ぐ皆猪食ひし息吐きて/茨木和生
松蝉の上に妙高仰がるる/沖津をさむ
鳴く度に天を仰げり寒鴉/ふけとしこ
美しき銀杏落葉を仰ぐのみ/星野立子
仰ぐとは愛しき姿勢鵯渡る/奈良文夫
緑蔭の磴の高さを先づ仰ぎ/稲畑汀子
市ヶ谷に虹を仰ぎて別れけり/日原傳
絶壁を仰ぐ雄ごころ初蝶来/菅原鬨也
鳥雲に仰ぎ透かして癌写真/秋光泉児
鳥渡る山の高さを仰ぎけり/島田青峰
