俳句例:101句目～
春星や少年辞書に眠り落つ/永方裕子
眠りをるときの暗さを梅林/大石雄鬼
春暁の草木の眠りうつくしく/白水郎
春暁や眠りのいろに哺乳瓶/河野友人
よき眠りなりし雪積む二重窓/有働亨
春泥の眠り深くて月昇らず/内藤吐天
湯婆の湿りを抱いて眠りけり/辻桃子
春眠の児に人形も眠りをり/後藤二木
春雨にぬれて野牛の眠り哉/正岡子規
春風を懐に入れ眠りつく/廣田千代子
潜水艦のごとく眠りぬ熱帯夜/森須蘭
蓑虫に眠り季風一波二波/岡本まち子
落し水老鶏はやき眠りかな/大獄青児
菜の花や孕み土偶の深眠り/大森和子
暗がりに秋蚕が眠り馬籠宿/竹前康子
苦瓜の眠り重ねし太さかな/竹中一花
若葉守虫に疲れて眠りけり/林原耒井
眠りゆく冬の銀河の片側に/野澤節子
月光を知らず原石眠りをり/朱間繭生
月山の両翼を張る眠りかな/赤間悦子
俳句例:121句目～
月明を眠りて流れゆく如し/吉田汀史
月青しかたき眠りのあぶれもの/篠原
朧夜の朧と化さむ眠りかな/村越化石
花の昼永久の眠りの糸車/成瀬櫻桃子
三十三才氷の上に日が眠り/鈴木鷹夫
聞法の眠り落せし団扇かな/河野静雲
寒鮃まなぶた動く眠りかな/高橋将夫
二番蚕が眠り遠くで蝉が鳴き/森重昭
木枯や耳張りづめに馬眠り/六本和子
木葉木菟悟堂先生眠りけり/石田波郷
灯すや眠りたまはぬ雛の顔/長谷川櫂
羽抜鳥瞼ゆるめて眠りをり/上野澄江
羽の国の日は眠りがち花杏/大橋一郎
枯れる音男の首を抱き眠り/高澤晶子
枯山国を眠りつづけて時失ふ/森澄雄
雁やひとりの眠り芯深く/河野多希女
信濃路に子は眠りゐむ栗を剥く/楸邨
借景の山も如来も眠りけり/渡辺恭子
陶枕に浅き眠りを托しけり/鷲田裕子
山眠り日月眠りをらざりし/吉年虹二
俳句例:141句目～
入りてゆく眠りの壺に年の雨/森澄雄
炉の眠り浪こそきかね須磨明石/言水
長城へ眉研ぐ冷気驢馬眠り/小倉緑村
風花が舞ふよ金の深ねむり/石原喜城
霜月の奥処や藪の深ねむり/斉藤梅子
冬猫の眠りの渦の中に耳/小檜山繁子
霜月の奥処や藍の深ねむり/斎藤梅子
邯鄲や白樺ばやし晝ねむり/相馬遷子
凍蝶となり眠りたし透析日/朝倉和江
凍蝶の静かに眠りゐる如く/井口雪嶺
いそがしき妻も眠りぬ去年今年/草城
筬の音山の眠りを誘ひけり/朝倉和江
初雪や冬に眠りしものの上/角川春樹
山眠り流木砂に埋れをり/大峯あきら
前山の眠りはじめし庇かな/久垣大輔
剣士皆眠り山野の虫を聞く/上薗/猛
立ち眠りして飛火野の孕鹿/後藤一枝
山眠り激流国を分ちたる/松本たかし
桜貝箪笥の隅に眠りをり/船津つねを
竃猫貧富も知らず眠りをり/村山古郷
俳句例:161句目～
長き夜や書架に無数の文字眠り/林翔
瞳孔に獣身眠りおりしかな/和田悟朗
鍵束のそばの荒野で眠りおつ/岡宣子
花こぼしつつ柊の深ねむり/保坂敏子
受験子の煌々灯し眠りをり/堀口星眠
梅干して女の眠り浅きかな/菖蒲あや
胡桃干し深きねむりに山の人/大串章
炎天に猫の眠りの観世音/小島富士江
銃声に振向けば山眠りをり/鈴木鷹夫
百日紅園児ねむりの刻来る/飯田龍太
沼ねむり寒林これを見守れる/有働亨
毒醸しゐるかも蝮深ねむり/倉橋羊村
啄木鳥の促す木々の眠りかな/原天明
稲妻に近くて眠り安からず/夏目漱石
母ねむり葛湯さめゆく花の昼/桂信子
梟に近くねむりし吉野かな/後長耕浦
爪先の菫が消えて眠りくる/和知喜八
白山のまだ眠りをる柳の芽/細川加賀
團栗にうたれて牛の眠り哉/正岡子規
金蝶の眠り過せしが銀蝶か/田中芥子
俳句例:181句目～
浅間山空の左手に眠りけり/石田波郷
揚羽蝶ねむりの国の蒼くあり/桂信子
金泥経蔵して山の眠りゐる/菊地一雄
かんたんを眠り薬に封じけり/鈴木馨
寒天を晒し一村深ねむり/小林たみ子
力抜きて午をねむりぬ残る虫/岸田稚
点滴の母眠りをり遠ざくら/館岡沙緻
煙噴きつゝ浅間山眠りをり/中川瀑川
冬柏阿武隈山脈ねむりけり/加藤楸邨
夏明寺矜羯羅童子眠りさう/宮坂静生
山靴や炉を遠まきの深眠り/小宅容義
けふ買ひし金眠りぬ宵の春/渡辺水巴
峠越す僧形に山眠りけり/金尾梅の門
ねむりつぎ薄日ふたたび蝸牛/桂信子
牛飼はどこに眠りて春の草/正岡子規
かまつかの霜や老妓の深ねむり/林翔
秋の水眠りつくまで恐ろしき/峠素子
うす紙に花種嬰の深ねむり/長谷川双
煩悩のなき山々の眠りけり/満田春日
眠り足らざる向日葵の東向き/楠節子
