俳句例:101句目～
遠目には動かず痩田耕せる/菖蒲あや
耕人にあぶりて届く蓬餅/高橋テイ子
耕して胴揺さぶつて牛帰る/井上純郎
西行の寺をうしろに耕せり/佐川広治
耕して鶴をまねけよ杖の友/松岡青蘿
古墳出て耕人耕馬玲瓏と/野見山朱鳥
丘の斜面に耕馬現れ海光る/木下夕爾
耕しの一人が千曲近きかな/村越化石
耕せる老に鶫のつき添へる/小石秀子
耕しの休んでばかり老の鍬/大野林窓
空にたゞ雲とんで人耕せり/高浜年尾
湯の宿や丘の耕人と顔合はす/瀧春一
草焼きの煙の中を耕せり/岩淵喜代子
萌ゆる色を耕してゆく土色に/及川貞
鷹かえる夫婦尺土を耕して/細谷源二
鍬肩にとんと畦とび耕し女/橋本鶏二
耕せば土に初蝶きてとまる/大野林火
耕牛の尻に脈うつ大地かな/内藤吐天
燕返す端を耕すに道へ出て/香西照雄
耕牛の谷を隔てゝ高く居る/高浜虚子
俳句例:121句目～
耕牛や打たるるたびに胴の音/冬一郎
耕牛をのせて舟ゆく春の木/野村泊月
短くて耕牛にのみ通ずる語/津田清子
耕牛を叱る手綱を波うたせ/国弘賢治
耕人が抛りぬ若き鳶の屍を/堀口星眠
蜑老いぬ話相手の耕馬また/橋本榮治
叡山を背に春耕の人となる/加藤耕子
嶺の畑に僧の春耕雲雀鳴く/飯田蛇笏
春耕の一鍬にして断乎たり/石川桂郎
春耕の田や少年も個の数に/飯田龍太
深く耕して夢殿みちに沿ふ/田中菅子
春耕の鞭に月まひ風ふけり/飯田蛇笏
息あらく馬行く雲を耕しに/岩間愛子
春耕や生命線に胼胝できて/村本畔秀
生涯を耕して病む蝉しぐれ/石田あき子
男鹿の荒波黒きは耕す男の眼/金子兜太
眼光をふつと消しまた耕せる/鈴木鷹夫
耕してひと日言葉を忘じをり/佐藤国夫
耕して怠けの虫を追ひ出せる/橋本榮治
耕して耕して父母消えにけり/清水志郎
俳句例:141句目～
耕しの五体しづかなリズムなり/及川貞
耕しの母石ころを子に投げて/西東三鬼
耕し馬叱られつゞけ歩き居り/櫻井土音
耕すや塚にかくれて又いづる/野村泊月
耕すや航跡遠くへは行かず/冨川仁一郎
耕せし日の余温ある膝の継布/久米正雄
耕せばうごき憩へばしづかな土/草田男
耕せり憩へりありのまま遠し/津田清子
胡麻の花耕す人のみな青衣/上野さち子
遠き祖の墳墓のほとり耕しぬ/前田普羅
風花のひまひまに出て耕せり/吉田鴻司
鳶の輪の内の行き来を耕せり/杉崎妙子
麻耶山にむかひて牛の耕せり/西岡和子
黙々と土と語りて耕せり/阿部みどり女
影す耕牛春日に浮いて風の椎/岩田昌寿
春霜や耕人今日をたたへ合ひ/西山泊雲
櫨紅葉一と枝に耕馬つながるる/瀧春一
父を憶へば耕馬から泥がとぶ/友岡子郷
耕人にさゝやく鳥語こまごまと/小提灯
耕人に夕日の落つる椰子の丈/桂樟蹊子
俳句例:161句目～
耕人に日照雨の大地傾斜なす/岩田昌寿
耕人のちひささ水田のげんげ/北原白秋
耕人の肩にて睡る夜の雲雀/磯貝碧蹄館
耕人の遠くをりさらに遠くをり/不破博
耕人の鋤き込んでゆく光かな/工藤眞一
耕人をはるかに涅槃し給へり/中川欣一
耕人を見てたたずみて吾弱し/木村蕪城
耕牛が幟の部落をわけ出づる/栗生純夫
耕牛について或は身を反らし/高野素十
耕牛に就いて或は身を反らし/高野素十
耕牛のふと大声を揚げにけり/楠瀬薑村
あはれ衣の短かく人ら耕せる/岸風三楼
耕牛の底びかりして戻りくる/成田千空
いい汗をかいて一畝耕せり/城野都生子
耕牛の触れて波うつ籬かな/軽部烏帽子
くろぐろと田毎の土を耕せる/京極杞陽
耕牛の足短くてれんげ田鋤く/茨木和生
耕牛の鼻叩かれて耳ふるふ/大久保橙青
耕牛やどこかかならず日本海/加藤秋邨
しぐれても耕すばかり輪中人/近藤一鴻
俳句例:181句目～
しづかなる土の遠くを耕せる/宮津昭彦
仰がずに比叡が見えて耕せり/茨木和生
出でて耕す囚人に鳥渡りけり/島田青峰
耕馬の胴黒奴一撥の報ここに/成田千空
耕馬明眸岬の朝風縞なして/大峯あきら
墓地買うて猶葬らず耕しぬ/中塚一碧樓
耕馬無く石はさびしき力持つ/成田千空
荒東風を頭押しに島の耕牛は/橋本榮治
学帽のまま耕しの端を占む/中戸川朝人
金無垢の耕牛置けり野の没日/内藤吐天
顔天使前向き耕人うしろ向き/西東三鬼
風説もなき明るさに耕馬立つ/友岡子郷
寸馬となり豆人となり耕せる/鷹羽狩行
山吹を折りかへしつゝ耕せり/前田普羅
春耕のこれが今年の田の香り/米澤勝廣
春耕のむちに月まひ風吹けり/飯田蛇笏
折れし墓碑倒れし墓碑や耕しぬ/日原傳
春耕の憩ひの上衣鍬に掛く/鈴木三四郎
果樹植うや庭隅の土耕して/遠藤ちづる
梅の白散れるそこより耕せり/太田土男
