俳句例:201句目～
死にし人別れし人や遠花火/鈴木真砂女
死にそこなつて虫を聴いてゐる/山頭火
死にたがる子は風花の中にあり/石寒太
人の死にささやくばかり冬の川/石寒太
死にたるは他家の人なる秋簾/池田澄子
死にたれば一段高し蝋涙ツツ/西東三鬼
死にて後一緒になりし墓洗ふ/荻野泰成
啼き方もまた死に方も蝉愚直/高澤良一
君の死にまむかへば詩生きる秋/石原八束
河豚喰うて死にし哀れや寺男/高橋淡路女
死にたれば熊大形に拡げらる/永田耕一郎
幼く死にし妹ふみ子を懐ふ/長谷川零餘子
母死に給ふどれが真綿か白髪か/小寺正三
秋祭生き種子死に種子選りて父/齋藤愼爾
弱り目に崇り目の咳死にはせぬ/原田柏生
御死にたか今少ししたら蓮の花/夏目漱石
秋晴に駱駝の歌で死にたいね/越高飛騨男
砂町は冬木だになし死に得んや/石田波郷
生き死にを清水のふちに蟹赤し/川崎展宏
生き死には言葉とならず忍釣る/河野南畦
俳句例:221句目～
死にゐたる蟷螂をわが窺へり/百合山羽公
かく暑き日を西鶴は死にたるか/綾部仁喜
死に難き世の煤ぼこり払ひけり/橋本榮治
拡げおく白紙へ何か死ににくる/森田智子
麗かや野に死に真似の遊びして/中村苑子
生き死にの話とぎれてメロン食ふ/三宅桂
故郷へ死にゝ帰りしや河豚の友/村上鬼城
死に順は突然決まる葉付き柚子/池田澄子
生き死にの言葉同じのふぐと汁/河野南畦
ころころと蝉が死にをり原爆忌/引地冬樹
死にてからび羽毛吹かるる冬鴎/西東三鬼
死に真似をして逝きにけり黄金虫/小島健
死に顔が童女に変はる雪明り/笹本千賀子
髪の奥より死にゆく暗さ寒く来し/齋藤玄
生き死にのほかなる鳴子一二声/飯田蛇笏
馬の死にでけでけでけと夏の月/攝津幸彦
死にたれど猶汗疹ある髪の際/芥川龍之介
風船の離るるごとく死にゆけり/平井照敏
死にせれば雨夜帰雁の声の数/千代田葛彦
顔死にてゐし冬蜂の針を出す/加藤知世子
俳句例:241句目～
青時雨この池のもの死に絶えて/依光陽子
日向ぼこ鳥の死に処に思ひ馳せ/高澤良一
はればれと冬蝶海へ死ににゆく/河合凱夫
月光に打たれ死にする桔梗かな/柿本多映
昆虫の冬さまざまに死にゆける/松村蒼石
生き方は死に方に似て花の雲/佐藤ます子
死にしこと忘れておりぬ麦の秋/高澤晶子
朝顔は死にたる壁のうしろかな/立花北枝
死に消えてひろごる君や夏の空/三橋敏雄
雪を床やはり孤りで死にゆきし/佐野良太
ほとゝぎす死に近づける面たひら/上村占
まつすぐに飛んで死にたる黄金虫/小島健
死に残りたる人ばかり彼岸河豚/桑原三郎
沢瀉やいくさに死にしみなわかし/森澄雄
死にかけて猶やかましき秋の蝉/正岡子規
死に様の美学もありし憂国忌/藤田よしお
もう寝るといつて死にたる菫かな/龍岡晋
春塵や東京はわが死にどころ/鈴木真砂女
鈴虫の死に絶えるまでいくつ寝る/鈴木明
玉虫の何するすべもなく死にし/中村汀女
俳句例:261句目～
死にかたをこころに浮べ老小春/富安風生
鈴虫のからりと死にし小籠かな/原田浜人
金の死はらからの死に続きけり/高澤良一
死につゝもまた振り返る乗馬服/攝津幸彦
死に方に差をつけてゐる冰かな/島田牙城
足つって死にそこないし海を前/高澤良一
春泥や泥という字の笑い死に/増田まさみ
沙羅の花楸邨の死にかかはらぬ/宮慶一郎
一落花追ひくる吾子は死にし筈/香西照雄
昼寝する猫死に時を知つてをり/谷口桂子
杣の死に斧を祀るやほととぎす/飯田蛇笏
三ケ日に死にたくなしと或僧が/高浜虚子
熱湯にたじろがず蟻死ににけり/右城暮石
死に怯えおり夕顔の白に和し/長谷川草々
井に落ちて死にたる鶏や麦の秋/野村泊月
西国に人の死にたる独楽あそび/田沼文雄
月に暈死におくれたる人訪へば/栗林千津
無患子の下に死にたるもの多く/山西雅子
炎天やいくたび人の死に逢ひし/斎藤空華
人の死に始まり寒さゆるみなし/村越化石
俳句例:281句目～
人の死に始まる一日雪降れり/古賀まり子
潮澄んでをり生き別れ死に別れ/石田勝彦
死に神は近づけまいぞ着膨れて/鉄山幸子
沈丁花少しあばれて死にゆけり/久保純夫
栗鼠の死に青深みゆく秋摩周/文挟夫佐恵
蟷螂もこゑ出せば死に易からむ/藤田湘子
住職となれば死にけり鶏頭花/荻原井泉水
何となう死に来た世の惜まるる/夏目漱石
何の苦もなささうに死に金亀虫/右城暮石
桐の花死に花咲かすときがきて/津川あい
俳人は死に顔佳けれ雪の家/たむらちせい
働きて忽と死にたし稲びかり/古賀まり子
死に給ふ父に茂吉のつばくらめ/品川鈴子
死に至るわが道草のおほばこよ/佐藤鬼房
冬ざくら死に逆らはぬ鳥けもの/木内彰志
冬の蜂サツシの窓を死にどころ/木下雪洸
冬仕度さて死に支度をもせねば/小林一歩
水餅や死に関したる書の溜る/田川飛旅子
蜻蛉の死にても臭ひあらざりき/右城暮石
死に至る襁褓二とせ蝉しぐれ/赤松けい子
