俳句例:101句目～
花冷や目の色冥き午後となる/仙田洋子
午後の日の薄るる雪解雫かな/行方克巳
落葉焚午後の落葉を加へけり/高澤良一
葉牡丹に午後の人出の駅広場/若倉文子
薔薇五月午前の海と午後の海/原田青児
黒潮の午後のかゞやぎ椿照り/高濱年尾
蝗跳び午後の日脂ぎりしかな/坂巻純子
蟻の穴大きく見ゆる午後三時/柿本多映
豪雪報心跼めて午後すごす/平井さち子
カレーに舌燃え冬晴の睡き午後/中拓夫
遠泳や午後を高まる波ながら/野中亮介
午後の部屋明るし卓に梨二つ/橋本耕二
遠足に午後の日曇り帰校かな/島田青峰
午後の雲動き学園下萌ゆる/深見けん二
午後の髯のび桃畑の中にあり/館岡沙緻
スパイスは光の食物午後永く/伊丹公子
午後はまだ視力薄れて松の雪/野澤節子
金魚皆喘ぐや午後の雲低し/西脇茅花女
雨の芙蓉土曜の午後はただ眠し/樋笠文
風塵の午後となりたる桜かな/新村寒花
俳句例:121句目～
風萎えてゐし午後と知る鯉幟/稲畑汀子
午後もまた山影あはし幟の日/田中裕明
鳥渡る午後より大き曇りかな/椎橋清翠
午後家を出る秋晴の明るさへ/右城暮石
午後長し人から人へ虻とんで/高柳重信
友情をこころに午後の花野径/飯田蛇笏
喝采も噛み砕かれた午後の事務/徳弘純
埋葬を終へ午後四時の竹煮草/永島靖子
壬生狂言雲退屈な午後となる/山田弘子
夏痩の神父午後よりシヤツ姿/大島民郎
人混みの中の空ろや花の午後/千田一路
大破璃に山霧迫る午後のお茶/小川晴子
学生に午後のけだるき薔薇の門/青山悠
室咲や午後は机辺に塵うかび/岸風三楼
寝違へし頸午後となる今年竹/鈴木鷹夫
午後二時のピエタを貫くX線/夏石番矢
山茶花の午後深くして低き声/草間時彦
元日の服喪家族に午後長し/玉置かよ子
元日の雨や静かに午後は止む/細見綾子
川底に日当る午後の紅葉かな/奥田杏牛
俳句例:141句目～
兵舎の黒人バナナ争う春の午後/島津亮
冬支度午後より椎の下にきて/山尾玉藻
冬松の幹あたたかし午後の飢/内藤吐天
年酒くむ午後から別の家に居て/大串章
後園の薔薇に雨降る午後三時/内藤吐天
凌霄や午後は日の渦風の渦/古賀まり子
手紙書く午後しんしんと蝉の山/中拓夫
切干に午後の日うすし垂井宿/後藤和朗
掛稲や午後四時ごろの田が光る/中拓夫
日覆のはためきつづけ午後の波/桂信子
春雷や午後の微熱の去りやらず/沢渡恒
朝の晴午後につなぎて運動会/稲畑汀子
割干に午後から波の納まりぬ/高澤良一
北窓を塞ぎし午後の風凪げり/千田一路
朝刊の午後もある駅日短かし/右城暮石
朝顔のうなだれ午後の処刑台/丸山嵐人
木蓮も開ききつたり午後の客/遠藤はつ
束縛の右に林檎を置いて午後/櫂未知子
枯原の雪解卒に午後のごとし/野澤節子
カツプにはカップの漣午後三時/佐藤成之
俳句例:161句目～
午後の日はとろりと睡し花蜜柑/菅沼琴子
午後二時の日南の圏に柘榴の実/佐野良太
蜥蜴の尾切れて女の午後緊まる/中村明子
うつくしき寝棺の午後や裏日本/折笠美秋
からたちの風ある午後の影つらね/飴山實
きらきらと若葉に光る午後の風/正岡子規
午後二時の炎天くらし簾の外に/相馬遷子
蛞蝓がダイヤ呑み込む雨の午後/島田高志
夏ひばり微熱の午後の照り曇り/日野草城
眠りつつ相槌うたれ春の午後/南澤ひつじ
蛍袋詰めるは午後の鬱ならむ/原田かほる
その雪崩午後二時頃といふ悲し/京極杞陽
午後二時の玉突き父の悪霊呼び/寺山修司
虻つれて水辺をまはる老婆の午後/桂信子
たつぷりと午後の刻あり青胡桃/二羽光枝
虫籠に午前と午後のありにけり/あざ蓉子
ねこじやらし醜き雲の集ふ午後/小林康治
藺草もて午後の洲ひろく干し埋む/有働亨
はこべらや雪嶺は午後うつとりす/森澄雄
葭切や午前むなしく午後むなし/相馬遷子
俳句例:181句目～
葛切の舌にはかなき午後三時/文挾夫佐恵
朝曇午後は灼くべし頭のほてり/石塚友二
朝寝して句会は午後の一時より/鈴木花蓑
日曜の午後の銀座の薄暑かな/成瀬正とし
萱刈や午前も午後も日がひとつ/矢島渚男
またせうぞ午後の花降る陣地取/攝津幸彦
新雪にひたひた及ぶ午後のいろ/櫂未知子
草風船午後を遊んでしまひけり/大石悦子
午後五時の西日つれなし枕もと/皆川白陀
花時計とまりて午後の枯木らよ/行方克巳
わが盛夏午後をあゆみたちどまり/山崎聰
午後四時の安田講堂銀杏散る/蓮見ミエ子
注連貰午後の支局にやつて来し/小田道知
花は葉に少年にある午後の飢え/田中太朗
午後の陽の厚さとなれり寒の藪/石塚友二
花の日の午後無蓋貨車来て溜まる/穴井太
コスモスの相摶つ影や壁の午後/西山泊雲
百日紅の午後盛り上る泉の芯/田川飛旅子
サッカー少年午後の秋天喪失す/萩山栄一
サフランの午後の吟遊詩人かな/沢木美子
