俳句例:201句目～
毒たべて夜寒の鼠なほ駆くる/山口波津女
駆け寄りてさし出す諸手聖五月/有坂馨園
神輿護る提灯宇治署駆くるあり/岸風三楼
菜の花やバイクで駆くる島の婆/中真靖郎
菱形となりて大瑠璃駆くるそら/高澤良一
駝鳥現れ砂漠の時空駆けぬけし/津田清子
踏む大地駆くる大地のある子馬/水見寿男
鯊を釣るうしろ原つぱ犬駆けり/富安風生
あぢさゐの毬より侏儒よ駆けて出よ/篠原
けものらのさわに山駆け翔る冷夏/林荘俊
鶏乗り童子山駆けて万作が咲く/金子皆子
さるをがせ夕霧富士を駆け下る/阿部悦子
たんぽゝや少年畦を駆けり来る/岸風三楼
麦秋のかぎりを駆けて入日かな/工藤義夫
恋ふ雉の畑駆けて鳴き飛びて鳴き/森山英子
駆けゆきしあと春潮のくつがへり/岸風三樓
紫雲英田を駆けて来るなり鐘供養/茨木和生
いつよりか駆けることなく夏帽子/安斉君子
メーデイの少女ら遅れ駆けりつぐ/岸風三楼
アリゾナのあかき大地を蜥蜴駆く/仙田洋子
俳句例:221句目～
火の帯の駆け抜け裾野焼き尽くす/伊東宏晃
脱兎のごと雨駆け抜けぬ浜おもと/高澤良一
梅雨晴れの天駆けきたり筑紫野に/高井北杜
二階より駆け来よ赤きトマトあり/巌谷小波
駆けのぼるごとくに伸びて今年竹/宮津昭彦
山火点けて人駆けにけり真の闇/成瀬櫻桃子
夕波に駆けて仔馬よ避暑期去る/小野恵美子
みそさざい岩駆けのぼり囀れり/市村究一郎
畦火駆く我を火伏せの神として/大木あまり
あれは軍歌苺ケーキのうえ駆ける/伊丹公子
とまらんと欲りつ落葉の駆けてをり/上野泰
春の夢天空駆けてゐる「わたし」/樋口津ぐ
雪嶺に駆けのぼりたき夜ぞ街ヘ/石橋辰之助
つなぐ手のほどけて駆けて夏帽子/対馬康子
地吹雪の駆け降りて来る段々田/森田かずを
ペガサスの天駆くる夜やひめ始め/市川栄司
左義長の周りを子らの駆け通し/瀧澤伊代次
冬霧を駆けりきて灯に大息つく/大橋櫻坡子
駆くる子のこゑを秋風うばひけり/仙田洋子
保母が駆け子ら駆け冬浜甦る/鍵和田ゆう子
俳句例:241句目～
春驟雨駆け出した子をもう追わず/奥美智子
下萌や駆け出しさうに靴干さる/来栖早殳子
遠き田の春著の吾子ら駆けちがふ/石川桂郎
くちなしや路地を駆け抜く雨匂う/鈴木敬治
ラグビーの離り駆くるがみな斜め/岸風三樓
火の玉が闇駆け抜けて修二会の序/田代澄子
かけろかけろ鶏が駆けて冬の景/佐々木六戈
薔薇散らす真夜の巨人の荒駆くる/中尾白雨
山車駆けて秋日香み込む鯛の口/伊藤いと子
防毒マスク路次駆け冬日呆けたり/岸風三楼
駆けゆきて野の陽炎の芯となりぬ/大石悦子
駆ける子の両手はつばさ野に游ぶ/山中敬子
天長の佳き日に駆けるフランス機/今泉貞鳳
一揆駆けし野の土筆無数無言かな/小林康治
子が駆け来蜂に螫されし頬抱いて/加藤楸邨
曲がり家の子馬彼方を駆けるかな/石田順久
生き別るほどに駆け出し凧上がる/対馬康子
駆け終へてことさら息の白さかな/阪井邦裕
騎馬像の駆け上がらんと春の空/上村ミチル
短夜を夜叉駆け抜ける目覚めかな/榎並信一
俳句例:261句目～
鰯雲あとからあとから子が駆け来/椎橋清翠
秋郊の湖畔ゆるりと駆けゆけり/稲畑廣太郎
子が駆けて秋の大きな夕日の輪/永田耕一郎
穴を出て小蟹疾っ疾と駆け出せり/高澤良一
ラグビーの駆けてかけてに胸躍る/小川/隆
鷭の子の親より先に駆けて巣へ/石井とし夫
風もみどりの一族となる森駆けて/櫛原希伊子
香水の緋とおぼしきが駆け抜けし/鳥居おさむ
馬駆ける寒気ひろげて無垢の原稿紙/寺田京子
駆けこみしあとの土砂降り青りんご/遠藤慶奈
駆けてきてなほも枯野を駆けんとす/谷中隆子
駆けてゆくポニーテールや夏の海/今橋眞理子
駆けながら梅を咲かせているのは誰/鎌倉佐弓
ヨット駆けさせ海で重たくなる対話/阿部完市
セーターの男タラップ駆け下り来/深見けん二
抓めばみな駆けてくるやうさくらんぼ/中拓夫
にはとりの駆けこんで来る神の留守/吉田鴻司
にはとりの不意に駆け出す花ぐもり/根岸善雄
揮発せむばかり牡鹿の駆け抜けし/正木ゆう子
修二会や炎が駆けのぼる巨き闇/伊勢谷紅月女
俳句例:281句目～
駆け廻り蟹は干潟のプロデューサー/高澤良一
朝のものごい氷柱小路は駆けぬけて/寺田京子
二騎駆けり又二騎駆けり加茂競馬/山田正二郎
駆け降りて高尾の蕎麦屋新酒汲む/矢野春行士
片陰をひとり来る吾子駆けもせず/金箱戈止夫
野火げむり駆けぬけ郵便単車の朱/平井さち子
うりずんへ一気に駆ける野山かな/小橋川恵子
ランニングシャツ駆けてゆく雲の峰/坊城俊樹
火が痩せて痩せて修二会の駆け廻る/山口誓子
野を駆くる子らの勲章ゐのこづち/北住/京子
不知火へ駆けおりてゆくまなむすめ/夏石番矢
駆けてゆきて野の陽炎の芯となりぬ/大石悦子
戦没学徒ら透明に群なし春塵駆く/磯貝碧蹄館
四十路いま駆くるごとしや野火走る/影島智子
駆け抜けしものよ野ねずみほどの夏/津沢マサ子
ヴェルディ犬月光にとび駆け寄りぬ/久保田慶子
熱砂駆け行くは恋する者ならん/三好曲「空港」
むささびの腹ほたほたと駆けのぼる/正木ゆう子
駆け去れりヴァレンタインの日と囁き/小池文子
連れられて鷭の子駆けてばかりゐる/石井とし夫
