俳句例:101句目～
笹鳴や渚を越ゆる波ばかり/脇田裕司
円空仏吾より長身笹鳴ける/奈良文夫
空濠の底に径あり笹鳴ける/西本一都
冬鴬われは病弟子胸あつし/石田波郷
笹鳴の径があるいつもの枝/原田種茅
笹鳴けり機は仕舞ひて事始め/及川貞
冬鶯米塩清くあるばかり/百合山羽公
笹鳴や浄土追はれし磨崖仏/加藤楸邨
西空の朱もわづかや笹鳴す/岩田昌寿
笹子来て殉教の墓淋しくす/大橋敦子
切片をなし笹鳴の水際なり/山西雅子
裏山に笹鳴殖やし醤油蔵/冨田みのる
臘月と眼といづれ啼く笹子/北原白秋
笹鳴のほとを忘れしほとの神/森澄雄
笹鳴や日移りはやき竹の幹/村上光子
笹子視む肝腎のとき躓けり/後藤綾子
笹鳴は空耳なりし雪が降る/原田青児
笹子鳴き人々起きて働けり/橋田憲明
笹鳴は汀に濡るゝほど近し/高橋馬相
大工来て笹鳴聴かず二三日/富田木歩
俳句例:121句目～
安住の笹鳴く庭となりにけり/隈柿三
箸箱に箸二並び笹子鳴く/赤松けい子
笹鳴や手沢出でたる桐火鉢/日野草城
笹子鳴く山々靄に隠れけり/竹川武子
笹鳴や手は見え足は忘じたり/島津亮
笹鳴や我はひと代を火炎上/加藤秋邨
笹子鳴く泉に声を試すごと/羽部洞然
笹鳴の主なき庵に今年また/川口咲子
笹鳴いて洗濯物の脇抜けぬ/高澤良一
笹鳴の隠密の声しきりなる/川端茅舎
笹鳴の途切れては又源氏山/山田閏子
笹鳴や思惟の手解かぬ苔仏/三橋迪子
酔ひし顔母に見られぬ笹鳴ける/桂信子
間のありて又笹鳴の磴となる/中川秋太
この町に赤福つつむ笹子かな/古舘曹人
降る雪に弾み付ききし夕笹子/高澤良一
雛つくる人に老なし冬鴬/長谷川かな女
雪ちらちら笹子ちらちら峠越/大橋敦子
馬鈴薯の花に笹子の雨暗し/赤堀五百里
来て遊ぶ鶯の子はいつも二羽/室積徂春
俳句例:141句目～
玻璃打つて鶯の子の落ちにけり/原石鼎
笹鳴を聞いて居籠る夫婦かな/野村泊月
一切の先づ笹鳴にあひにけり/斎藤空華
何もせず障子明るし笹鳴けり/瀧井孝作
佛間まで幽かに雪の夕笹子/千代田葛彦
冬鶯吸ひ付くやうに梅が枝に/高澤良一
冬鶯火中出てなほ炎える鉄/大峯あきら
前略と書いてひと息笹子鳴く/増田斗志
千仏のうしろに一鬼笹子鳴く/斎藤梅子
双塔をつなぐ古道笹子鳴く/赤松けい子
夕笹子障子の桟の濃く浮けり/関森勝夫
大藪を洩るる朝日や笹子鳴く/藤本哲夫
客去れば笹鳴とわが時間かな/加藤秋邨
山吹の黄葉のちりぢり笹鳴す/室生犀星
崖裾の干汐にかわき笹鳴ける/内田百間
弁当に牛蒡うれしく笹子鳴く/岸本尚毅
文弱にながるる月日笹子鳴く/古舘曹人
日の萱に逃避の我や笹鳴ける/相馬遷子
日もうすれ閑まる家ぞ笹鳴す/室生犀星
案内を聞き洩らさずに笹子きく/堀恭子
俳句例:161句目～
横臥より仰臥は親し笹鳴けり/神生彩史
水中の日を見てあれば笹鳴す/渡邊水巴
燈台へ笹鳴の径折れつづく/砂田貴美子
砂糖水ドーナツと来て笹鳴す/石川桂郎
笹原に笹子の声のみちさだか/皆吉爽雨
笹子ゐる葭の洲のいま日の柱/岡井省二
笹子鳴き世に古びたる渡来仏/大橋敦子
笹子鳴くいま来し道に日の当り/神蔵器
笹鳴いてゐて灯りぬ料理待つ/鈴木花蓑
笹鳴がきこえて土の中ならず/萩原麦草
笹鳴が初音となりし頃のこと/高浜虚子
笹鳴きに系図正しくして貧し/藤木清子
笹鳴くや旅のつかれを昼の風呂/上村占
笹鳴くや石にいろなき野の夕日/上村占
笹鳴くや雪駄は小島政二郎/芥川龍之介
笹鳴にうつむいてゆく癖捨てよ/有働亨
笹鳴に前歩かれて背が寒し/加藤知世子
笹鳴に蛇口のさらし袋かな/長谷川倫子
笹鳴に逢ふさびしさも萱の原/加藤楸邨
笹鳴のけふこの道を何故歩む/相馬遷子
俳句例:181句目～
笹鳴のひとつ来てゐる庭仕事/石田郷子
笹鳴のまにまに麻酔きかさるる/斎藤玄
笹鳴の内向の声われも持つ/田川飛旅子
大年の笹鳴る闇となりにけり/石橋秀野
笹鳴の日課の如く来て去りぬ/桜井照子
笹鳴の杜にいろはにほへとの句/平/清
笹鳴の来そめて関守石一つ/八木林之介
笹鳴の渡りすぎけり枇杷の花/室生犀星
笹鳴の移りし影と思はるゝ/大久保橙青
笹鳴の移りて残る日差しかな/星野恒彦
笹鳴の笹の高さを移り来つ/黒坂紫陽子
笹鳴の路せばまりて風の消ゆ/原田種茅
笹鳴の鳴く間黙す間時が充つ/加藤楸邨
笹鳴は水沁む原を飛びにけり/右城暮石
笹鳴は袂に留まるごとくなり/友岡子郷
笹鳴やさそはれ抱く膝がしら/杉山岳陽
笹鳴やふたりの影の道祖神/猪俣千代子
笹鳴や世をしづめたる山家集/野村喜舟
笹鳴や勤めなければ門を出ず/三溝沙美
笹鳴や十能の火を書院まで/大峯あきら
