季語/稲刈(いねかり)を使った俳句

俳句例:101句目~

日曜の不作の稲を刈りはじむ/稲畑汀子

夜田刈に闇が流るる灯の列車/橋本榮治

田が刈られ畔豆黄ばむ出雲崎/森田公司

稲車押し込む門を押さへをり/塚本英哉

水浸く稲陰まで浸し農婦刈る/沢木欣一

刈りし早稲跡方も無き田一枚/右城暮石

水漬く稲陰まで浸し農婦刈る/沢木欣一

刈りかけし田面の鶴や里の秋/松尾芭蕉

顛倒をまぬがれて稲車すゝむ/右城暮石

萱を刈るとき全身を沈めけり/稲畑汀子

落日をのせ稲車ひいて来る/深見けん二

妻が押す稲車いま悪路出づ/田川飛旅子

稲舟が灯を吊つてくる門の濠/西村公鳳

稲を刈りゐる父の音母の音/渡邊かおる

稲を刈るその時母の手の太く/青野沙人

稲舟をとほすながれの尚ほそる/瀧春一

豊作にあらねど稲を刈る楽し/大隈草生

稲を刈る夜はしらたまの女体にて/静塔

稲を刈る妙義は空を刻み暮れ/皆吉爽雨

稲車すゝけ障子に挽きつけし/清原枴童

俳句例:121句目~

稲を刈る風の眩しき敷居村/風間ふく子

稲刈日和刈る稲の名も日本晴/大熊輝一

狭田高田落穂すら無く刈られけり/林翔

田の氷刈株ごとに骨張れる/川島彷徨子

田一枚刈りたるあとの風の音/橋本榮治

疲れ来て田舟にすがる深田刈/吉良蘇月

稲舟と夜目にも分り漕ぎ来る/星野立子

刈稲を置く音聞きに来よといふ/飯島晴子

古里は痩稲を刈る老ばかり/竹下しづの女

女ひとり廣田の稲を刈りゐたり/相馬遷子

庄内は稲の刈りどき虹立てり/鷲谷七菜子

故郷は稲の刈りごろ雲とべり/福田甲子雄

枯萩の塵かぶらねば刈られずに/稲畑汀子

田の端の芦も晩稲も刈られけり/水谷晴光

稲を刈られしと太陽にわめく蠅/津田清子

稲を刈る人よ師の碑をたのみます/大串章

稲を刈る利鎌の冴えの音はしる/大橋敦子

稲を刈る生駒の山の庇護受けて/塩川雄三

稲架とけて刈田の中の村ちいさ/山口草堂

稲架組んで手刈りの頃の話かな/高澤良一

俳句例:141句目~

笠売れぬこと考へて菅刈れる/稲畑広太郎

背の子を畦にころがし稲を刈る/藤原香雲

虎渓てふ村あり稲を刈りほせる/三好達治

西山は雲を置き初め稲を刈る/瀧澤伊代次

稲舟の音もなく漕ぎかはしけり/吉田冬葉

稲舟や灯火もなくもどりくる/楠目橙黄子

稲車あはれ地窪に落ちこんだり/西山泊雲

如窓ケ岳を去らぬ雲影稲を刈る/日野草城

稲舟に立ち稲架を下り見送れる/高野素十

子を乗せてこれがしまひの稲車/飯田楽童

稲舟のゆきあひ波を送りあふ/猿橋統流子

稲舟の家鴨追ひあぐ棹振れり/米沢吾亦紅

人よけてしたゝか揺れぬ稲車/五十嵐播水

どの細江にも稲舟の暮れ残り/三宅まさる

とかくして稲舟あげし夫婦かな/西山泊雲

胃袋を毛だらけにして稲を刈る/穂原丸申

不作の田刈つてしまへば露浄土/成田千空

うしろから月の追ひくる稲車/小田島十黄

刈り上げし田の香ばしき祭かな/宮津昭彦

刈跡の田に疳だかきわれの咳/川島彷徨子

俳句例:161句目~

稲舟の水尾も大河に入りにけり/斉藤夏風

山影の夕冷え犇と二期田刈る/千代田葛彦

はや稲を刈る稲架を組む安房の国/長田等

夜田を刈るはずが炉辺に酔ひ臥しぬ/蕪城

三日月や水禍の稲はなほ刈らず/福田蓼汀

田の端の芦も晩稲も刈られけり/水谷晴光

田を刈つて光陰滝のごときかな/平井照敏

中稲には雨がつきもの刈り難し/山川喜八

稲束をかついでずるずると沈み/今瀬剛一

亀石の前より今日の稲を刈る/小澤満佐子

降り止まぬ雨に重たき稲を刈る/瀬戸十字

稲舟の通ふ加賀路のとある町/鈴鹿野風呂

刈稲の泥にまみれし脛幼し/竹下しづの女

遊び場が展がる父母が稲を刈り/品川鈴子

陵守が出て来て田刈見てをりぬ/関戸靖子

草を刈る匂ひ押しつけられてをり/稲畑汀子

刈らるべき稔田や黄に透きとほり/相馬遷子

田の肥えに藻や刈り寄する磯の秋/広瀬惟然

稲架組んで明日や刈りなむ日和待/石塚友二

稲舟のさらに土手より高く積む/米沢吾亦紅

俳句例:181句目~

銑鉄船のなかを稲船ぬけてゆく/川島彷徨子

磐梯颪に農衣はたはた稲束緊む/加藤知世子

稲舟をつなげば水の揺れやみぬ/五十嵐播水

いつまでも積んでをるなる稲車/浜井武之助

牛角力きのふに稲を刈り終へて/伊藤いと子

月に目がなれて夜稲を刈りつゞけ/藤原湯玉

撓はせて白穂の稲を刈りにけり/八木林之介

いまならば落ちはなされじ田刈時/広瀬惟然

妹婚期を知らぬごとくに泥田刈る/大熊輝一

手刈せる浮塵子の稲のはかどらず/来嶋浪女

鬼無里晴れ稲を刈る音蕎麦刈る音/高澤良一

秋の田や刈しほ見舞ふかかり人/ぜぜ-昌房

稲を刈りつむる軌条をあばかんと/栗生純夫

実無稲のそゝけ白穂も刈るらむか/石塚友二

刈稲をひるがへしては置きにけり/京極杞陽

早稲刈つて田の面暗さや鳴く雀/芥川龍之介

昨夜の雨峡田は半ば刈られをり/村上しゅら

穂重もりの手応へしかと稲を刈る/桜井土音

泥稲の刈ッ干し急ぐ貰ひ照り/飛鳥田れい無公

水漬きたる稲を刈らんとする日かな/中村汀女