季語/毛糸編む(けいとあむ)を使った俳句

俳句例:101句目~

家のこと何もせぬ娘が毛糸編む/口友静子

幸せを編み込んでゐる白毛糸/土橋いさむ

幸福は不意に来るもの毛糸編む/菖蒲あや

忘れたき事突きさして毛糸編む/中井啓子

手がかりのなき青空や毛糸編む/仙田洋子

持ち歩き小さき暇を編む毛糸/嶋田摩耶子

朝霧の雨ときまれば毛糸編む/殿村莵絲子

毛糸編はじまり妻の黙はじまる/加藤楸邨

毛糸編みつゝの考へゆきもどり/竹腰朋子

毛糸編みつゝ愚かしく思ひつめ/神田敏子

毛糸編みつゞけ横顔見せつゞけ/右城暮石

毛糸編むことを忘れてをりし指/稲畑汀子

毛糸編むこの刻も児は育ちつつ/都筑智子

毛糸編む一燈暗し肩凝らすな/榎本冬一郎

毛糸編む何やら帽子らしきもの/石塚友二

毛糸編む余裕も出来て毛糸買ふ/西村和子

毛糸編む冬夜の汽笛吾れに鳴り/細見綾子

毛糸編む向かうの部屋を疑へり/松本文子

毛糸編む夫象つてゆきつつあり/鈴木貞雄

毛糸編む愚痴の相槌うちながら/種市清子

俳句例:121句目~

煖房なき車中毛糸を編みつゞく/右城暮石

毛糸編む母子の世界病みて知る/大野林火

毛糸編む看護婦のふと深き息を/藤後左右

毛糸編む紅のジヤケツの子が紅を/上村占

毛糸編む羽毛のやうな刻の中/猪俣千代子

毛糸編む膝に平穏かへり来し/石田あき子

毛糸編む音なき指の動作かな/本山キヨ子

玉二つころげ相うち毛糸編む/斎藤八千代

生涯を決めるに毛糸編みながら/伊藤玉枝

白壁に消えも入らずに毛糸編み/平畑静塔

祈りにも似し静けさや毛糸編む/戸川稲村

空と海の色二本どり毛糸編む/山田みづえ

竿売りの声遠くなり毛糸編む/高野イツ子

編みかけのつづきの毛糸妻は編む/上村占

若からぬ寡婦となりつつ毛糸編む/桂信子

若き日の指に戻らず毛糸編む/田口佐和子

論理には弱くひたすら毛糸編む/岩崎照子

赤好きで赤ばかりなる毛糸編む/横町陽子

邦語ラジオ始まる頃よ毛糸編む/西岡敏子

隠し事ある日多弁に毛糸編む/小林沙丘子

俳句例:141句目~

離れて遠き吾子の形に毛糸編む/石田波郷

饒舌は聞き流すのみ毛糸編む/岡林知世子

ぎりぎりの忍従静かさの毛糸玉/齋藤愼爾

吾子ほどは遠くへ行かず毛糸玉/今瀬剛一

若き日の愁ひの眼伏せ毛糸編む/吉屋信子

春待つや捲いて太らす毛糸玉/成瀬桜桃子

毛糸玉客迎ふるに付き来たり/白岩てい子

毛糸玉或る時いのちふつと無し/池田澄子

毛糸玉見てをり微震過ぎにけり/細川加賀

ある期待真白き毛糸編み継ぐは/菖蒲あや

いつの日の恋の始まり毛糸編む/石田仁子

かつぎ女の一人離れて毛糸編む/吉浜冬石

胸ふくるる思ひ毛糸玉大きくて/内藤吐天

まだ編めぬ毛糸買ふなり回復期/朝倉和江

わが思ふそとに妻ゐて毛糸編む/宮津昭彦

毛糸編み上げし時間もプレゼント/山田弘子

毛糸編みをり妻の明日の暗からず/岡田貞峰

眠ること忘れて編みし日の毛糸/高田よし子

毛糸編みながらも涙ためてゐし/石井とし夫

毛糸編む座辺の明るさ暮れんとす/内藤吐天

俳句例:161句目~

毛糸玉幸さながらに巻きふとり/能村登四郎

毛糸編むといふ愚かさを夫の前/上野さち子

毛糸編む何かに辿りつかむとし/小檜山繁子

純白に子をくるまんと編む毛糸/赤松ケイ子

毛糸編みつつ米子まで行くといふ/辻田克巳

毛糸編む幸福を編み魅力を編む/上田春水子

編みかけの毛糸を棚に海女の小屋/近藤巨松

編みかけの毛糸編む気のなき如く/後藤夜半

きつぱりと別れ来て夏毛糸編む/八木三日女

編み残す去年の毛糸のけぶりをり/中嶋秀子

毛糸編みそこねては編み年惜むか/石川桂郎

うしろより擁く腕欲し毛糸編み/上田五千石

耳に日が射してひとりの毛糸編む/菖蒲あや

耳貸して毛糸編む手の小止みなく/麻田椎花

聖樹ともして彩やわらかき毛糸編む/浜芳女

うさぎほどの温もり膝に毛糸編む/西村和子

階下までわれに蹤ききし毛糸玉/小野恵美子

母となる日の遠からず毛糸編み/遠藤若狭男

毛糸玉追へば逃げゆくことばかり/野中亮介

いくたびも十字架を重ね毛糸編む/対馬康子

俳句例:181句目~

毛糸編み来世も夫にかく編まん/山口波津女

毛糸編む妻をはなれずあづかり子/森川暁水

毛糸編む吾が眼差はやさしからむ/津田清子

毛糸編む老いの刻々打ちこみて/橋本多佳子

贈りたき人ゐて毛糸編む子かな/井田/美絵

毛糸編む人のうなじの疲れたる/波多野爽波

時編むに似たるが愛し毛糸編み/余寧金之助

週末午下中座もまれに毛糸編む/平井さち子

毛糸編む機械かなしや膝を入れ/加倉井秋を

思ひ出もだんだら模様毛糸編む/深町まさこ

毛糸編む一つ想ひを追ひつづけ/波多野爽波

毛糸編む目をあげて遠き雲の嶺々/木下夕爾

毛糸編むや籠りゐる日は粧はず/山崎千枝子

家に児を置き来て毛糸編みつゞく/右城暮石

嫁して来て啄木が好き毛糸編む/杉岡せん城

妻よなほ未来あるかに毛糸編む/神保百合一

妻が編む毛糸ほぐす子かたはらに/杉山岳陽

夫となる人に編みをる毛糸かな/長沼/典子

ルノアルの女に毛糸編ませたし/阿波野青畝

いつの間にか遠くにありぬ毛糸玉/谷口桂子