俳句例:101句目～
柚子風呂を母在りし日のごと沸す/栗原米作
金溜まることに縁なき柚子湯かな/鈴木真砂女
手離さむ我が家柚子湯を溢れしめ/楡井/秀孝
子の夫婦泊らす柚子湯繰り上げて/篠田悌二郎
柚子湯出ですぐに眠しやネルを着て/岸風三樓
さめかゝる肌に柚湯の匂ひけり/長谷川かな女
柚子湯出し子は母までの水脈ひいて/今瀬剛一
柚子湯して柚子より軽く浮ける身の/高澤良一
柚湯たて家族すくなくなりにけり/上井みどり
柚子湯して妻とあそべるおもひかな/石川桂郎
夫焚いてくれし柚子湯を惜しみなく/仙田洋子
遅き子に柚子湯の柚子を一つ足す/船坂ちか子
ししむらの淋しくなりし柚子湯かな/井上土筆
うちふして柚子湯の匂ひひろがりぬ/仙田洋子
雨やがて霧となりたる柚子湯かな/鈴木しげを
吾子はみな柚子湯の柚子を胸に抱き/山口青邨
たどりつく思ひのありて柚子湯かな/北村仁子
香の深き柚子湯や年のけぢめとす/加藤知世子
柚子湯より出すずつしりと子の重さ/今瀬剛一
妻の入る柚子湯さめしやと章や焚く/清水基吉
俳句例:121句目～
柚子湯して「石版東京図絵」と決む/永井龍男
柚子湯淡しまた後れたるひとりにて/小林康治
柚子の里いづこも真昼柚子湯わき/古賀まり子
柚子風呂の柚子が赤子に蹴られけり/神原栄二
果て近き旅を柚子湯にひたりけり/金尾梅の門
柚子湯出てこの世ほのぼの妻子あり/新明紫明
柚子風呂の重たき柚子となり泛ぶ/田中一荷水
柚子風呂や主婦業五十年とはをかし/吾妻ふみ
柚子風呂や寄り来る柚子を突き返し/岩田由美
柚子湯出て慈母観音のごとく立つ/上田五千石
あたたまり浮ぶほかなき柚子湯の柚子/井上郁夫
柚子湯してあしたのあしたおもふかな/黒田杏子
窓すこし開けて柚子湯の湯気逃がす/片山由美子
生まれ出るごとくに柚子湯上がりけり/高橋悦男
躬ひとつを入れて柚子湯を溢れしむ/平間真木子
柚子湯あふれしめもう父と入らぬ子/増賀美恵子
柚子風呂に九々の調子のよかりけり/多田みちよ
吾子はをみな柚子湯の柚子を胸に抱き/山口青邨
足るを知る身のしあはせの柚子湯かな/石井紅洋
一人あがり柚子湯のにごり熱さ増す/中戸川朝人
俳句例:141句目～
柚子湯出て家居のあかり減らしゆく/岩淵喜代子
柚子湯出てまた人の世のひとりなり/梅澤よ志子
旅ひとつきまりてはずむ柚子湯かな/石田あき子
残る日の柚子湯がわけばすぐ失せぬ/水原秋櫻子
をみなごのひとりあそべる柚子湯かな/川崎展宏
吾子ひしと抱きて柚湯にひたりけり/高橋淡路女
ひと年のつかれとおもふ柚子湯かな/成瀬桜桃子
ふぞろひの柚子のたのしき柚子湯かな/仙田洋子
うつうつと柚子湯に眉の溶けにけり/殿村莵絲子
あそび女の柚子風呂に音立てずゐる/鷲谷七菜子
まひるまの柚子風呂たててくれにけり/ふけとしこ
タイルを目盛ひとりの柚子湯溢れしめず/鈴木栄子
母にちかづくことの柚子湯をわかしをり/野澤節子
追はれゐるいのちたゆたふ柚子湯かな/文挟夫佐恵
ちよんとつく柚子湯の柚子をちよんとつき/川崎展宏
