俳句例:101句目～
朝寒の旅果つ鍵をフロントヘ/山田弘子
木守柿この里いまも鍵要らず/品川鈴子
木戸に木の鍵して蛍囲ひけり/星野紗一
狸すぐ隠れ前世紀ホテルの鍵/伊丹公子
猫の子や尼僧の掌なる巨き鍵/小池文子
甃みちの五月の聖女鍵を掌に/石原八束
鍵握る孤りの冬となりにけり/石原八束
秋河原/を騙れば鍵あいて/増田まさみ
死ぬ順に浅春の鍵鳴らしけり/栗林千津
腰に鳴る鍵にぎやかや蔵開き/宮田戊子
船鍵を仮に置く除夜の畳かな/宮武寒々
花の闇ひらくに銀の鍵使ふ/鳥居真里子
花八つ手鍵かけしより夜の家/友岡子郷
花冷えや鍵の掛かりし子の机/河合澄子
花芥子や家族のみ知る隠し鍵/山田弘子
寒い鍵束おのおの持ちて鳥の群/栗林千津
秋天澄む真昼鍵かけもの書けば/寺田京子
缶ビール濡れた手で持つ鍵の束/二村典子
鍵束を河口に鳴らし雪待つか/加倉井秋を
小さき鍵かけられてをり社会鍋/田口風子
俳句例:121句目～
受難節鍵穴一つにみな鳴る鍵/平井さち子
鍵穴を鍵もてさぐる夜の薄暑/佐々木静江
鍵の錆手につく侘びし晝千鳥/中塚一碧樓
鍵一つが償ひに似て朝ひぐらし/友岡子郷
かたばみ草閉ぢ大門の鍵かける/堀田晴子
さすらひに用なき鍵ぞ春みぞれ/佐藤鬼房
しはぶける男に鍵を返しけり/大木あまり
朝寝して体内ふかき鍵ひとつ/能村登四郎
鍵を持つ禰宜のあとより登山客/野村泊月
鍵のない村の明るい茄子の花/吉田不可止
人日や髪を染むるに鍵かけて/吉田つよし
忘却の扉を開く銀の鍵つめたし/内藤吐天
鍵ひとつ無くせしままに黄落期/木内怜子
春泥を鍵屋への字の眉で来る/浅野津耶子
茶屋ふたつ鍵屋の辻のうららかに/石川子
浜納屋へ鍵提げゆくや秋の暮/金尾梅の門
鍵かけていづる看取りや竜の玉/帰山綾子
書庫を守る鍵鳴り落葉乾き反る/木下夕爾
鍵かけて夜の浴槽たのし雪降れり/畑耕一
鍵かけて耳鼻科へ通ふ晩夏かな/原田青児
俳句例:141句目～
夏空を航くに何にも鍵かけず/加倉井秋を
昼ひとり鍵して病めり著莪の花/岡田和子
雨かきれいな鍵かけて有馬山奥/阿部完市
霜夜ふかしひびく鍵音咎をこめ/赤尾兜子
啓蟄や首に吊るしてドアの鍵/北村かね子
風の桜作業者が弾き鍵よごす/田川飛旅子
風邪に臥す妻に鎖し出し鍵を袂/森川暁水
うすものの中より銀の鍵を出す/鷹羽狩行
おるがんの鳴らぬ鍵ある夜学かな/木村蕪城
鍵ひとつ恃むくらしの瓜をもむ/稲垣きくの
鍵を置く音して八月去りゆくか/岸本マチ子
短夜や締めてたしかむ部屋の鍵/稲垣きくの
おぼろ夜やアパートの鍵店の鍵/鈴木真砂女
ふところに暮冬の鍵のぬくもりぬ/飯田蛇笏
秘めるものなくて鍵ある日記買ふ/辻三枝子
一少女ジヤケツの胸に鍵垂らし/田川飛旅子
短夜やどこへまぎれし部屋の鍵/稲垣きくの
園の鍵合はす冬咲く薔薇見えゐて/津田清子
一日終へ冷たき鍵を手にしたる/五十嵐哲也
醒めし蛙鍵かけし井をくぐらんと/栗生純夫
俳句例:161句目～
余花落花ポケツトの鍵まさぐりて/井本農一
鍵かけるうしろに冬日来てゐたり/谷口桂子
いつものやうに鍵かけ松も過ぎ/加倉井秋を
映画みる衣嚢つめたき鍵のあり/鷲谷七菜子
千鳥なくやかほどの華奢の箪笥鍵/久米三汀
北風吹く硝子戸に鍵かけてある/川島彷徨子
柘榴割る鍵屋が辻の古き碑に/長谷川かな女
鍵つ子と呼ばれしことも秋狂言/佐々木六戈
芋虫のころりと鍵のかくし場所/北見さとる
鍵っ子なりし亡き子よ雨中の迎火ぞ/香西照雄
年立てり家政の鍵の錆ぶまゝに/竹下しづの女
秋も行くと鍵束鳴らしながら言ふ/加倉井秋を
胡麻咲いて人にけものに鍵ある世/大木あまり
鍵ろひ三度笠る中二階屋のエポケー/加藤郁乎
日もすがら鍵音蝉は眼を張つて鳴く/岩田昌寿
浜木綿に鍵を忘れず持たれしか/長谷川かな女
鍵つ子なりし亡き子よ雨中の迎火ぞ/香西照雄
氷雨東京ひとりで寝ろとホテルの鍵/伊丹三樹彦
バレンタインデー心に鍵の穴ひとつ/上田日差子
薄ガラス二重鍵かけ寒気とまぼろしくる/寺田京子
俳句例:181句目～
性欲を鍵として解く評伝の通俗性が好きなんだなあ/藤原龍一郎
鍵をした窓から月の光差し君はいっぷう変わった壜だ/吉川宏志
