俳句例:201句目～
花ほとゝぎす今宵の月のほとり也/松岡青蘿
島別荘に今宵灯入りぬ鳴く千鳥/大須賀乙字
手花火の今宵ひとしほ師に侍べる/河野南畦
少年の頃のこほろぎ今宵も鳴ける/内田百間
虫の世に今宵もひとりあそぶべく/緒方句狂
子規随筆今宵も読むや蒲団著て/岡本癖三酔
蟹となり今宵霜くだる砂を匐ふ/千代田葛彦
妻なきことつぶさや今宵セルを着て/森澄雄
あそび女に今宵も山の焼くるなり/清原枴童
辻飯に今宵どの餓鬼来ますらむ/山田みづえ
行火やめて今宵の茶の間四角なり/臼田亞浪
夫在らば椅子はこの位置月今宵/福永みち子
いつもこの椅子にある身や虫今宵/高浜虚子
くわりんの実今宵の月に安んじて/高澤良一
夜々おそくもどりて今宵雛あらぬ/大島民郎
ちちははの父の在らざる月今宵/上田日差子
こほろぎの伽も今宵は口ごもる/千代田葛彦
桑の芽に今宵の冷えの気がかりな/織茂吐月
すいと来ぬ今宵は火蛾のみなちさく/及川貞
歌かるたいとど今宵は塗られけり/会津八一
俳句例:221句目～
河豚汁や今宵は乳も濃くあらむ/赤松ケイ子
目刺うまし今宵の友ら部屋もせに/森川暁水
不機嫌な姑へ今宵の蚊帳を吊る/黒河内ちとせ
七夕の昨夜居りし椅子に今宵また/殿村菟絲子
われ病めり今宵一匹の蜘蛛も宥さず/野沢節子
かなかなしぐれ今宵の夢に雲湧かむ/太田鴻村
いつの間に蚊柱きえし月今宵/飛鳥田れい無公
七夕の昨夜居りし椅子に今宵また/殿村莵絲子
星今宵わかき博士は兵に召され/久保田万太郎
月今宵いさゝか風のつよきかな/久保田万太郎
雪降る降る今宵北国へと発つ人よ/文挟夫佐恵
須磨に居て今宵子規忌と思ふのみ/田畑美穂女
蚊火消ゆや今宵も岩魚焼く火見ゆ/石橋辰之助
スト終えし集い今宵は口紅を濃く/赤城さかえ
千々の秋ひとつの樽にはしかじ今宵の月丸/九石
さかづき干し難く今宵もゐるみなの中/喜谷六花
まついかも今宵なげきの火を振らん/金尾梅の門
メーデー今宵病者らほそく歌い和し/赤城さかえ
今宵今年のつづれさせ虫啼き出づる/竹下しづの女
レモンかじる今宵も壁越しトランペット/松本恭子
俳句例:241句目～
池辺来るいたちの音の今宵も端居はなるる/喜谷六花
我が年に今宵十五夜の月見かな/池浦知仲妹-十五才
傘かしに出でばや今宵月の雨/美濃-如行/元禄百人一句
秋今宵うづく歯に団子ばかり煮て/『定本石橋秀野句文集』
虫ひとつある甲斐もなき今宵かな/越前-洞哉/元禄百人一句
まどかなる若草山を奔る火の今宵は猛き思ひなるべし/藤井常世
秋もはや今宵を踊りをさめなる後の月夜の更けにけるかも/島木赤彦
家をいでゝ今宵も明治の紺かすりを着てあるく夏の夜/安斎櫻カイ子
サイパンに生き残れりと思はねば今宵は繁に吾子ししぬばゆ/半田良平
昏々たる空はむらさき雪しきる今宵わが墓あばかるるべし/多田智満子
今宵飲むビールは鉄の味のして凜きまで肉のおもひは滾る/小野興二郎
