薬を使用した俳句

俳句例:201句目~

食すすむ薬代の芹山と積み/相馬遷子

古民家の薬箪笥や小鳥来る/渡辺光江

名月を夜匐の薬にがからず/尾崎紅葉

和蘭陀人が薬で殺す花の鬱/筑紫磐井

唇に薬つめたき清水かな/阪本四方太

夏菊に薬の露もなかりけり/子規句集

夕立の田畑にかかる薬かな/水田正秀

夜に入ればいとま心や胼薬/小杉余子

大年や薬も売らぬ隠君子/芥川龍之介

天高し薬の匂ひうつる水/三浦和歌子

妻の手に託すたつきよ胼薬/小林康治

寒の水今日の終りの薬飲む/朝倉和江

寒夜ただ月も素通り魔薬窟/成田千空

小春日の丸薬を干す袋かな/田口孤雁

帰りには薬もろうて桜桃忌/阿波岐滋

平服の医師に薬臭曼珠沙華/奈良文夫

忍冬に眼薬を売る裏家かな/正岡子規

我慢して蛇の匂ひの薬のむ/国弘賢治

春の風邪いろ美しき薬購ふ/菖蒲あや

春一番煎薬の火を細めたり/石川桂郎

俳句例:221句目~

春寒く痰の薬をもらひけり/正岡子規

春愁や薬臭に似し青インク/土生重次

春暁を告げて天台烏薬の香/稲畑汀子

暑き日や水薬ぬるむ枕もと/会津八一

暗がりに胼薬塗る母を見し/鷹羽狩行

月光が添寝眠薬効くまでを/三好潤子

朝曇さきほど薬飲んだっけ/高澤良一

朝霜や雨戸立てたる施薬院/会津八一

栄螺の腸良薬にして弾む酒/高澤良一

桐一葉薬の量を増やす日に/朝倉和江

梅擬日にち薬というくすり/太田洋子

椎匂ふ白砂のごとき頭痛薬/鈴木鷹夫

残雪を踏んで薬屋廻り来し/島田青峰

母かなし眼薬冷やす冷蔵庫/片山楸江

母の日の花も薬も喜ばれ/五十嵐哲也

水仙や薬の御園守るあたり/黒柳召波

水薬うすめて飲めば青葉木菟/長田等

亀鳴くや離島に提げて薬函/古舘曹人

清水ある家の施薬や健胃散/内藤鳴雪

爽かや薬の間ヒの茶一服/徳永夏川女

俳句例:241句目~

玉を煮て仙薬をとる飢餓の春/中勘助

盆僧に薬飲む水所望さる/奥野ただし

眼薬の一滴に冬きたりけり/前山松花

眼薬をさしてわが年改まる/西村公鳳

短日の薬臭の歯にとる夕餉/山田弘子

神農祭ぬかづく吾も薬剤師/品川鈴子

もも色の薬まろばせ春の風邪/森本節子

手に余る薬袋鵙に憑かれおり/塚田愁星

小鳥来る身のはうばうに貼薬/草深昌子

いさゝかの肉を薬に貰ひけり/小林天風

妻の名の薬包放る焚火どっと/深川哲夫

うそ寒や持薬加へて旅かばん/毛利友美

薬煮る香にしたひよる小蜂かな/中勘助

薬箱の中に椿が入れてある/夏井いつき

汲む水に氷浮かべる薬餌かな/石川桂郎

薬塗るやうに冬日を背に当つる/岡本眸

買ひためて信濃の子等へ胼薬/加藤楸邨

渋柿は馬鹿の薬になるまいか/正岡子規

試供薬溜まり卯の花腐しかな/内田美紗

薬のむ水かたはらに年忘れ/吉本伊智朗

俳句例:261句目~

裏町薄暑見知らぬ南蛮薬微光/伊丹公子

しめっぽい木霊とびかう置き薬/穴井太

草の花曲がりづらきは薬指/水野真由美

菊なます肺の一薬抜かれけり/巌谷小波

彼岸みちゆつくり薬瓶提げて/関戸靖子

にんにくを薬の食や冬ぬくし/石川桂郎

はこべらを薬に食べし恋の猫/太田土男

寒夜覚めまじく小さな薬飲む/菖蒲あや

徐福の廟天台烏薬芽吹きそむ/川口/修

ひたとやむ咳の薬や寒の内/筏井竹の門

ふくらんで四角薬屋の紙風船/小沢信男

木枯の過ぎしあとなる傷薬/小泉八重子

またひとつ薬のふへて灸花/西島美代子

母の為めに薬を煮るや菊貧し/尾崎迷堂

時の日の時きめられし薬飲む/安田晃子

螻蛄鳴くや薬が誘ふわが眠り/楠本憲吉

落鮎の薬餌の腸も食ふべけり/皆吉爽雨

蝦夷からの土産水虫薬とは/加藤あさじ

着ぶくれて薬用植物並べ売る/高橋恭子

ハンカチに薬臭のある薄氷/正木ゆう子

俳句例:281句目~

虫鳴くや母へ解きやる薬包紙/影島智子

寒柝や夜尿薬買ふ終ひの客/八牧美喜子

薬香る上昇気流チューリップ/依田明倫

一葉忌折目を六ッに薬包紙/秋元不死男

三伏の火に煮つめたる薬召せ/筑紫磐井

五臓六腑薬が柱を組み立てる/春海教子

薬餌ひさし赤き風船枯枝に/鷲谷七菜子

人来ぬは無上の薬風邪に臥す/宮原信子

薬餌には親しみをらず額の花/後藤夜半

今朝秋の何とはなしに薬指/猪俣千代子

余寒なを姑の薬を小分けする/佐野笑子

催眠薬買いて使わず雨又雪/田川飛旅子

死ねる薬を掌に、かがやく青葉/山頭火

兎。薬を搗く此頃月の朧なる/正岡子規

八目鰻は眼の薬とよ食ふべしや/安住敦

薬飲むや四葩の雨にかや明し/西島麥南

薬屋の地下の怪談かきつばた/桑原三郎

涼しくて薬の草の花も咲く/大峯あきら

眼薬さす落花を仰ぐさまをして/安住敦

眠り薬まだ効いてをり冬の蝶/久米正雄