薬を使用した俳句

俳句例:101句目~

思ひ出て薬湯たてる余寒かな/召波

薬壜に夕日映じて落葉哉/寺田寅彦

祭鬼面を外して薬飲む/長谷川青松

鰯雲不老不死薬並べおり/山田北夫

神渡し馬の薬を日々煎ず/下村槐太

薬効の口上ながしガマ祭/楚阪和彦

鯖雲や薬代にて追はれをり/有働亨

颱風は颱風として薬のむ/高澤良一

棘に触れ薔薇より紅き薬塗る/林翔

露燦と諸刃の剣の薬飲む/相馬遷子

雨やみし春竈べの駆虫薬/宮武寒々

薬出す医院の小窓聖五月/本宮鼎三

やや寒や高きところの薬箱/栗島弘

わか水や冬は薬にむすびしを/野坡

薬のむに何の涙ぞ鳥曇/肥田埜勝美

夕の梅僧の薬石どき早し/荒井正隆

皹の胼の薬も問はれけり/谷口雲崖

掛蓆薬の肉を売る家かな/根本露皎

百千鳥薬種箪笥に岩絵具/甲士三郎

夜を眠る薬つれなし子規/正岡子規

俳句例:121句目~

残暑光薬をこぼす胸の上/尾崎光尋

摂待の茶にかき立てる薬かな/几董

薬くさき尿して厠明易き/高澤良一

苑の恋眄る薬瓶手に提げて/三谷昭

残雪の余呉訪ふ薬行商と/羽部洞然

道元忌初栗焼かれ薬石に/佐藤宗紹

妻と分つ薬無惨や夏疾風/河野南畦

花あしび朝の薬に命継ぐ/巌谷小波

白散よ酒に交へて生く薬/松瀬青々

婢になくてはならぬ胼薬/細江大寒

家族みな使ふ一つの胼薬/香山節子

袷着て秋やうれしき薬取/尾崎紅葉

あん法の薬にしみる蟲の聲/横光利一

神農祭薬舗に人体血脈図/大出蕭々子

祭飴酸ゆし薬のあとくちに/石川桂郎

秋といふ風は身にしむ薬哉/榎本其角

竹伐つて薬石の時近づけり/石川桂郎

紫陽花の首の鮮烈薬のむ/小檜山繁子

絵薬を新茶で磨れり九谷焼/宮田正和

うづくまる薬の下の寒さ哉/内藤丈草

俳句例:141句目~

おのれ然も僻地教師か胼薬/木村蕪城

置き薬入れ替へ語る風の盆/田中英子

置き薬替へに来る頃麦の秋/石川文子

胼薬おとして熱き炉灰かな/西島麦南

かんたんを眠り薬に封じけり/鈴木馨

胼薬しみ入る農書開きけり/清水武を

胼薬つめし小磯の小貝かな/田中蛇湖

脛毛濃く冬の夜白い薬呑む/和知喜八

脳天に残る眠薬さめて雪/長谷川秋子

腹薬よと韮粥を焚きくれし/小西白扇

腹薬効けよ岩木の山晴れて/辻脇系一

自然薯は長寿の薬之ある哉/高澤良一

芍薬や棚に古りける薬箱/水原秋櫻子

花冷や眼薬をさす夕ごころ/横光利一

すみれ色の催眠薬の朧なり/内田美紗

茶の甘き薬のあとや西行忌/石川桂郎

草と木の薬の苦さ白雨来る/鈴木鷹夫

草の戸や薬を嘗に蝶の留主/高井几董

萩すすき紅さすための薬指/黛まどか

葛野萩薬餌提げ来て通ひ妻/石川桂郎

俳句例:161句目~

蓬やのれんゆるがぬ家伝薬/高橋淑子

薬いま利いてきてゐる遠蛙/石川桂郎

薬きらへば日空より朴落葉/長谷川双

ほらねども山は薬のひかりかな/来山

薬のむあとの蜜柑や寒の内/正岡子規

薬呑む刻をまもりて寒の水/池田秀水

薬壜の口のひかりて秋隣/佐藤美恵子

やや寒の指輪忘れし薬指/小松世史子

薬室にて春著の袖をひるがへす/静塔

薬局の灯の商へる避暑名残/行方克己

薬煎る鍋の下よりきり~す/寺田寅彦

薬袋に日付印押す初仕事/西田れい子

薬袋のゴム輪束ねや神渡し/島田武重

薬鍋やりて嬉しき歳暮かな/立花北枝

ピアニスト黄金の手に胼薬/小島左京

薬飲むさらでも霜の枕かな/松尾芭蕉

薬飲むための食事よ目借時/平林孝子

一茶忌の煎薬やこれ恙なく/金井苑衣

薬飲む白湯の匂へる夕桜/大岳水一路

七粒の薬にたよる獺祭忌/黒田櫻の園

俳句例:181句目~

薬飲む竹の朧を通りぬけ/大岳水一路

世に薬おびただしきに夕燕/友岡子郷

蚊やり火や袋より出る薬屑/水田正秀

水薬泡立てて飲む春の風邪/宮坂静生

行く年や薬ひそます旅鞄/石田あき子

衣更しても薬臭厭はるる/下村ひろし

袷着て薬を合すしづかさよ/松瀬青々

谷に夜が来て胼薬厚く塗る/村越化石

酒やめる薬のなきや三汀忌/石川桂郎

鎌倉へ来て田疲れの貼り薬/中島畦雨

長き夜の熱きが薬地蔵の湯/高澤良一

入退院して三伏の薬づけ/宮澤富士男

隣人の薬くさくて彼岸かな/松本文子

雁瘡やむらさき色の塗り薬/柴原保佳

出来過ごす麦の薬や春の霜/水田正秀

雛の灯へ薬行商荷をひろぐ/羽部洞然

副作用ありて薬に懲りし夏/高澤良一

効く薬あり春風に面吹かれ/村越化石

露霜ののどやく薬ぬられけり/龍岡晋

風邪の子のうす紅の水薬/長谷川回天