俳句例:101句目～
屠蘇祝ふ病みても夫の長寿眉/増田富子
われ病みて国敗れたる震災忌/京極杞陽
山茶花や病みて琴ひく思ひ者/正岡子規
母病みぬ夕日とどける胡麻畑/館岡沙緻
雨がちの四月や誰も彼も病み/石塚友二
陽炎とつぶやく一会その後病み/上村占
長病みの秋の扇となりしかな/澤村昭代
短夜の汗さへ惜しみ母病みぬ/橋本榮治
片肺病み八ツ手の花の照り昃/川口重美
長病みの母抱き浸る柚湯かな/羽生敏子
思ひきの母の長病み師走来る/大橋敦子
悒嶺に白き花咲く病みがたき/三橋孝子
病みて聴く秋の厨のもの音を/三橋鷹女
懐手病みたる鶸のぬくもりて/清田寿一
病みて日々百日草の盛りかな/村山古郷
我病みて冬の蝿にも劣りけり/正岡子規
戦車工病み大陸に戦車めぐる/細谷源二
眼を病みて黄昏長き薄暑かな/長野迅男
相病みて君知るえにし天の川/宮津澪子
病み涯の屍かろし走り梅雨/古賀まり子
俳句例:121句目～
田螺買ふ遠母病みてゐ給へば/小林康治
星祭る病みてすぐ泣く妻と二人/有働亨
秋の蜂病み臥す顔を歩く日よ/石原八束
茉莉花や病みて束ねる髪の嵩/下山芳子
人は病み人は娶りて鳥雲に/福永みち子
春深し恥知らぬごと病み腐ち/小林康治
病みてなほ気性はげしく糊浴衣/矢津羨
人病みてうすき汗かな八重桜/高橋馬相
長病みの夫の背中に隙間風/浅見まき子
月光の仄と一鵜の病みゐたる/齊藤梅子
望の夜もともしび明く病みにけり/草城
長病みの今年も参る雑煮かな/正岡子規
百日病み金の愛を底から見る/三好潤子
枕低く母が病み澄む蚊帳かな/小林康治
病みしこのかたの天井の節穴/大橋裸木
癰病みし人も行水名残かな/河東碧梧桐
桐の花母病みて父旅をせず/小檜山繁子
働く妻の裾に病みをり寒の内/小林康治
桜桃や病みても響く声を持つ/朝倉和江
春の蝿眼澄めりて病み呆け/小原菁々子
俳句例:141句目～
荒園に落葉とぶ日ぞ病みおもる/中尾白雨
蓑虫や永病みしてもかがやく肌/香西照雄
豆咲けり病みては永きたそがれか/有働亨
遠花火かくれ病みをり夫が辺に/小池文子
長病みの医師こそかなし韮の花/相馬遷子
霧藻採る山人腹を病みにけり/石島雉子郎
青葉闇ネロも病みたる虫歯病む/鈴木公二
青鬼灯病みつつ淡くありしひと/遠山壷中
鯛焼きや姉妹病みても笑いぐせ/安井昌子
鶴は病み寒日あゆむことはやし/飯田蛇笏
わが病みし日の綿入を受験子に/堀口星眠
オルゴール短きうたを永病みに/小田武雄
一夜病み髪膚たちまち黴にけり/小林康治
三秋を病みて和服に親しみぬ/下村ひろし
三鬼病み時頼忌淋しかりにけり/石塚友二
京に来てひたと病みつきぬ花盛/正岡子規
余花寒し一師一弟子離れ病み/鷲谷七菜子
冬薔薇やどこも痛まず病み臥る/北野民夫
凍蝶や妻を愛さざる如病み臥す/石田波郷
十六夜や離ればなれにわれら病み/松本進
俳句例:161句目～
十日病み黄落十日とどまらず/町田しげき
千両や夫病みてより月日濃き/飯野てい子
地に伏して父病み居りし甘蔗畑/野村泊月
夜鷹聴けり病みても髪の漆黒に/酒井鱒吉
天に赤き凧その日より母病みき/宮崎光治
妻の病みつきさうな顔火を吹く/大橋裸木
妻病みて母病みてひとり秋の暮/茂里正治
妻病みて篭の大根の重かりし/前田たかし
妻病みて髪切虫が鳴くと言ふ/加倉井秋を
妻逝きて我も病みつつ年暮るる/福井圭児
寒木瓜や病みて変らぬ片ゑくぼ/西尾照子
小百姓桑も摘まずに病みにけり/村上鬼城
少女期より病みし顔映え冬の匙/寺田京子
山茶花病みやすし中国より手紙/高田律子
山賤のうすき布団に病みにけり/清原枴童
心炎天の花掴み病みこけてゐる/大橋裸木
心病みきのこの森に入りびたり/西口昌伸
懐手病みしところに掌を置きて/堀内蛙子
我れ病めば吾が外套も病みにけり/上野泰
昃れば白きぼうたん病みにけり/渡辺恭子
俳句例:181句目～
昇天す長病み果てし梅雨晴れに/渡辺恭子
晩秋を病み水薬のごとき日暮れ/藤木清子
毛糸編む母子の世界病みて知る/大野林火
水中花どこに置きても母病みぬ/渡辺恭子
永病みて使はざる傘凍てにけり/朝倉和江
浅蜊鳴かせ主人十年病み申す/赤城さかえ
火口壁に咳きて胸病み視界病む/石原八束
病みがちの高きに登る夢もなし/石川桂郎
病みこもり秋雨降るを土に見る/茂里正治
盛装す心もつとも病みたれば/沼尻巳津子
病みてより夜の粉雪の音が好き/森田愛子
病みてより涙もろさよ夏蒲団/高橋淡路女
病みて噛めば大き音して年の豆/石田波郷
病みぬきし二月底抜け空の青/稲垣きくの
病みぬけし子の青春や雪焼す/殿村莵絲子
病み倦めば煤の降りゐる氷かな/石田波郷
病み克ちし身に殷々と除夜の鐘/中嶋秀子
病み抜きて春愁いつか遠ざかる/高濱年尾
病み抜けてふくら雀の辺に戻る/茂里正治
病み抜けて女人高野の露を踏む/千原草之
