俳句例:201句目～
星はなくパン買つて妻現われる/林田紀音夫
春の正午少女の咽をパンとおる/田川飛旅子
春日のパン与へむ子なく柔かし/山田みづえ
木村屋の餡パンを買ふサングラス/田中純美
正午の海と本の厚さのパン明るし/阿部完市
うらゝかな朝の焼麺麭はづかしく/日野草城
灯こぼしてパン屋捏ねゐし豆の花/小池文子
五月来ぬアカシヤの蜜麺麭に塗り/鈴木栄子
餡パンに臍のぽちりとあたたかし/小原紫光
父と子の清餐の卓パンとりんご/柴田白葉女
寒食や耳たぶほどに麺麭ちぎり/上田五千石
甘きパンかじる夜のがれきの上で/松本恭子
疲れるな鯨のハムをパンにはさむ/古沢太穂
鷹鳩と化して人よりパンもらふ/西坂三穂子
白い道来てひとりパンの中へはいる/中野茂
白南風や一番パンが焼きあがる/矢島三榮代
パンを噛む唾液こまやかみどりの森/細見綾子
地階の体臭耳まで焦がし焼けるパン/小倉緑村
一茶忌や一ト切れのパン夜半に欲し/石川桂郎
冬陽浴びパン食へば靴底向けらるゝ/岩田昌寿
俳句例:221句目～
この夜銀河パンの大樹を透きて見ゆ/香西照雄
パンの実の熟れしにおいの戎衣かな/金子兜太
文化の日児の掌に驢馬のパン歪み/佐野まもる
雪を来し犬とパン食むさびしさよ/石橋辰之助
パンと子の顔均等に射す四月の陽/磯貝碧蹄館
寒き汽車パンを輪型に噛み切つて/田川飛旅子
パンが焦げくさくて装飾過剰の室/八木原祐計
餡麺麭に夜景の如き黴のある/たかぎちょうこ
スキー列車くらくてパンの水こぼれ/岸風三楼
妖気なし日日パンに生く葬にも行く/鷲見流一
パンうまし楡若葉身に染むばかり/稲垣きくの
窓霽るるフランス/パンと一羽の鳩/上田都史
銃のごとパンもつ初夏のパリジェンヌ/岡谷潮
累なるパンはゆたかな母性新樹透く/友岡子郷
麺麭かうて梅雨暮れやらぬ我が家路/西島麦南
バードウイーク鸚鵡と語りパン頒つ/加藤温流
かげろふや市場の驢馬はパンを食ふ/小池文子
モディリアニ生まれし日なりパンに黴/皆吉司
花冷えのパンねんごろにちぎりけり/戸板康二
若葉してうるさいッ玄米パン屋さん/三橋鷹女
俳句例:241句目～
少しづつ虹消すパンを千切りをり/本庄登志彦
パン焼いて男鹿の朝日をぬって食う/斎藤白砂
松過ぎのけだるさパンを焦しけり/倉田しげる
花に彳ち農場の麺麭を喰ひちぎる/石橋辰之助
胡瓜刻んで麺麭に添へ食ふまたよしや/安住敦
朝の麺麭焦がしこがして麗らなり/持田/旋花
食パンの上にサーフィンのせて食う/山内嵩弘
帰りきて梅雨はさぶしゑ麺麭焼くも/西島麦南
パン焦げる匂ひしてくる四日かな/澄田玄志郎
うそ寒きラジオや麺麭を焦がしけり/石田波郷
いそ～と麺麭むしり食ふ暖炉かな/大場白水郎
パン屋が出来た葉桜の午の風渡る/河東碧梧桐
セラミックほどよく焦がす今朝のパン/東和歌子
パン生地を叩いて義士の日とおもふ/宮内とし子
いかなる星ひかりしかパン一斤買ふ/小川双々子
血を吐くにいたらむ麺麭を焦しける/林田紀音夫
埋立地の北風にひからぶ不思議なパン/齊藤夏風
松蝉にパンのたやすく焦げしかな/久保田万太郎
塩つけパン喰う旅への誘いいきいきと/金子兜太
パンむしる手に春近き日ざしかな/久保田万太郎
俳句例:261句目～
栗鼠にパン盗まれしてふキャンプかな/岡田安代
パンにバタたつぷりつけて春惜む/久保田万太郎
神話の店でさやさやパンを焼くけむり/阿部完市
孤児ら同じパン食ぶ墓域濃紫陽花/鍵和田ゆう子
菩提樹咲くやほのぼのとパン抱き帰る/小池文子
飯炊くつらさ花屋もパン屋も灯らぬ夜/阿部完市
被弾のパンの樹島民の赤児泣くあたり/金子兜太
まつさらのパンの切り口ギルギルとぶ/伊丹公子
液状のパンとて飲めり昇天祭/関森勝夫「親近」
こんがりとパンしやつきりと朝の萵苣/平井郁子
軽井沢の昼下り東京パンの匂ひのこる/田中冬二
ヒンドゥー神を繋ぐ火うすくパン焦げる/伊丹公子
金星ロケットこの日燦燦とパンむしられ/金子兜太
梅雨のパン気をつけてゐて焦しけり/久保田万太郎
朝のパン葉唐辛子の煮られけり/岡田鉄/『卆心』
メーデースクラム麺麭の匂ひの少女たち/熊谷愛子
ひばりの声いつときたてこみ朝のパン/平井さち子
沖の曇天パン抱いて漂泊をこころざす/林田紀音夫
ポインセチアの赤がパン屋の一つの灯/浅香さとみ
焼きたてのパンを食わえてパラグライダー/中里良
俳句例:281句目～
ナプキンにパンぬくもれるしぐれかな/久保田万太郎
それからそれから棒パン抱き合う朝の会話/伊丹三樹彦
水母うく微笑はつかのまのもの/柚木紀子「麺麭の韻」
小夜食やパン焼けつ皿光りをり/『定本石橋秀野句文集』
夜の秋のパン屋パンこね帰路照らす/西垣脩「西垣脩句集」
パンが黄ばら色に焦げてミュージツクサイレン鳴り/吉岡禅寺洞
麺麭を焼く香を家庭の幸福と喩え喩えて/喩こそわが罪/藤原龍一郎
口よりし入るものなべて浄しとふパン/果實/水/聖霊/男根/高橋睦郎
天上に富積めといふパン/ワイン/實のオリーヴもそに含ましめ/高橋睦郎
