「落し水」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「落し水」について
【表記】落し水
【読み方】おとしみず
【ローマ字読み】otoshimizu
子季語・関連季語・傍題・類語など
・水落す(みずおとす:mizuotosu)
・田水落す(たみずおとす:tamizuotosu)
・堰外す(せきはずす:sekihazusu)
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季節による分類
・「お」で始まる秋の季語
・「秋の地理」を表す季語
・「仲秋」に分類される季語
月ごとの分類
落し水を含む俳句例
二三尺秋の響や落し水/月渓
雨乞の小町が果や落し水/蕪村
打々の寝心更けぬ落し水/蕪村
行秋や皆橋かけて落し水/蓼太
鄙宿や水落す音襖にぞ/尾崎迷堂
村村の寢ごゝろ更ぬ落し水/蕪村
落し水遠くに聞え夜の闇/大森積翠
からうじて山田実りぬ落し水/几董
山鳩の声沁む霧の落し水/青木千秋
岩倉の夜はまつ暗落し水/岸風三楼
落柿舎の門前暗し落し水/北澤瑞史
落し水滔々と秋尽るかな/増田龍雨
落し水柳に遠く成にけり/蕪村遺稿
落し水瑞穂の国の音を聴く/滝青佳
菅原の丘なす道や落し水/岡本松浜
秋篠の人の早寝や落し水/前田普羅
印南野は一枚闇や落し水/吉川柳水
道の上澄み拡がれる落し水/西山泊雲
落し水溢れて道を清くゆく/平畑静塔
犀川に還りゆくなる落し水/西本一都
俳句例:21句目~
落し水は女もすなり石二つ/西山泊雲
三叉路に六地蔵立つ落し水/千原満恵
落し水忽ち音をたてにけり/楠瀬薑村
落し水喜びの音ありにけり/浜渦美好
草の花の畦を破るや落し水/西山泊雲
落し水老鶏はやき眠りかな/大獄青児
月虧けて山風つよし落し水/飯田蛇笏
倒伏の稲をくぐれる落し水/岡安紀元
姥捨の月に縷々たる落し水/西本一都
棚田十程一斉に白し落し水/西山泊雲
段々の山田を下だる落し水/寺田寅彦
母恋し首を伸して落し水/秋元不死男
浮草やしかも山田の落し水/水田正秀
野分雲夕田ごう~と落し水/西山泊雲
門に出て夫婦喧嘩や落し水/高浜虚子
三輪山をいよ~山や落し水/尾崎迷堂
水落すや隣田主の申し分ン/西山泊雲
誰置きし草籠邪魔や水落す/西山泊雲
何生きて水輪つくるか落し水/高井北杜
峡の田の暗きに鳴れり落し水/吉良蘇月
俳句例:41句目~
日焼田や二反はからき落し水/正岡子規
昨日見て今日見て雨の落し水/村沢夏風
林泉のまゝ田が有りて落し水/松瀬青々
激つ瀬へいそぐ月夜の落し水/白岩三郎
相ひびかふ智恵子泉と落し水/西本一都
磧湯やそびらにひゞく落し水/幕内千恵
落し水思ひ屈するときもなほ/田中裕明
稲を守る神の別れや落し水/広江八重桜
落し水きく夜淋しむ我も馬も/高田蝶衣
落し水静かにきけば二つとも/西山泊雲
落し水ひびく内侍の塚ひとつ/大東晶子
落し水五位一声の蘆間月/菅原師竹句集
落し水低き棚田を落ちにけり/松藤夏山
落し水夕ベに夜をつなぎけり/野村喜舟
落し水展けし方にのみひゞく/右城暮石
落し水跣の下にきこえけり/阿波野青畝
落し水闇もろともに流れをり/草間時彦
落ち~て月夜となりぬ落し水/石井露月
さざめきて月の見沼の落し水/折笠二風
ざりがにの稲掴みゐる落し水/白岩三郎
俳句例:61句目~
一と邑の落し水とて滝の状/佐野まもる
鯉黒く背立てゝ来るや落し水/野村泊月
息吸つて吐いて大事に水落す/長谷川双
水落すや空籠肩にかけながら/野村泊月
一と鍬に畦を欠きたり落し水/高浜年尾
水落す手慣れの石に声かけて/富永小谷
薬師寺の塔見ゆる田も水落す/斎藤小夜
三輪山に音の消えゆく落し水/堀部克己
小山田の水落す日やしたりがほ/炭太祇
落し水蕎麦畑の蔭を流れ去る/岡本癖三酔
落し水行く方ふたたび月添へり/近藤一鴻
落し水ひつさげ出づる鍬かろし/西山泊雲
太陽にかたちありけり落し水/神尾久美子
落し水だけの流れと思はれず/山下/輝畝
落し水鳴る洞ありて吸ひにけり/飯田蛇笏
足あとのなき田わびしや落し水/蕪村遺稿
落し水のとろ~ひゞき耳にあり/細見綾子
夜の音に寺領の田水落すなり/藤田あけ烏
秋もはやさらばさらばと落し水/尾崎紅葉
落し水して来し足で粟刈りに/長谷川素逝
俳句例:81句目~
水落すや株の田螺のほろと落つ/西山泊雲
落し水いよいよ空を濃くしたり/境入笙太
水落す信濃路ひかり翔ぶやうな/渡辺恭子
水落す落ち口にのみきらめく日/久米正雄
水落す顔おだやかにふりむけり/小川玉泉
茄子畑をひとすぢ掘つて水落す/高橋馬相
峡田育てし落し水行く重し睡し/加藤楸邨
落し水身ぬちを抜けてゆきにけり/萩原麦草
一つ居て啼き止まぬ虫や落し水/石島雉子郎
たそがれや庵の四方田の落し水/大橋櫻坡子
まくなぎの耳にも目にも落し水/米沢吾亦紅
落し水ひゞき来る炉の親子かな/大谷碧雲居
落し水もぐらの穴に鳴りにけり/向久保貞文
落し水しらしら明けを尽きにけり/野村喜舟
晴るる日は晴るる日の音落し水/後藤比奈夫
落し水落ちいそぐ夜となれりけり/木下夕爾
落し水落ち尽す音もなかりけり/東洋城千句
落し水すなはちひびき伊賀に入る/榎本冬一郎
びしよびしよの雨となりけり落し水/波多野爽波
背戸させは表に聞ゆ落し水柚味噌/安田木母、秋田握月