季語/手袋(てぶくろ)を使った俳句

俳句例:101句目~

手袋の十本の指を深く組めり/山口誓子

白手袋はめて門衛交替す/小笠原須美子

手袋を落しゝも旅はろかかな/尾崎迷堂

手袋に紐つけし子よわれ教師/木村蕪城

手袋を脱いでも悔の残りけり/伊藤雅樹

手袋に付きて解けざる霜払ふ/茨木和生

細長く皮手袋をしまひけり/今橋眞理子

編みゐるはスキー手袋らしき縞/上村占

手袋に五指を分かちて意を決す/桂信子

手袋に明かるき昼の光かな/波多野爽波

手袋を買ふも銀座のつれづれに/星野椿

手袋のその小さきを口で脱ぐ/岡田史乃

誰へ編む手袋か躬を離さずに/中島斌雄

手袋なし手話の青年言葉光る/坂間恒子

手袋や或る楽章のうつくしく/山西雅子

遠い夜景へ手袋咥へぬぐ青年/藤田湘子

雪渓に手袋ぬぎて何を得し/橋本多佳子

手袋と紙幣使はずして病めり/野澤節子

手袋をはめぬ癖いつか妻に似る/杉本寛

黒手袋指にぴちりと神を説く/齋藤愼爾

俳句例:121句目~

手袋に息つつみ立つ夜の落葉/堀口星眠

手袋をしてふるさとの橋の上/加藤耕子

巷の灯低目にうけて手套嵌む/木村蕪城

手套より手が出て万の鴨動く/松山足羽

手套欲し千草も彩を失へる/大岳水一路

手袋のぶか~したる官吏かな/籾山柑子

手袋を銜へ脱ぎたる喪の疲れ/岡田貞峰

病室に忘れし手套寒ゆるぶ/石田あき子

手袋や終に指輪を買はぬ母/山田ゆう子

手袋のままに握手をして父子/村瀬/晋

手袋の両手で犬の背をおさへ/川崎展宏

落葉めく手套や若き恋ひとつ/橋本榮治

街の日は霜にさやけく黒手套/飯田蛇笏

雑踏に童女の手套踏まれづめ/品川鈴子

革手套北の任地へ子を帰す/佐藤いね子

鷽替や黒き手套の落ちてをり/館岡沙緻

黒き手套黒き鞄の未婚女醫/下村ひろし

手袋を探してばかりゐる日かな/稲畑汀子

手袋を脱いで握りし別れかな/川口松太郎

手袋を脱ぎて働く手となれり/徳永山冬子

俳句例:141句目~

手袋を脱ぐとき何か忘れをり/辺見じゅん

手袋を脱げと病者にもてなさる/萩原麦草

手袋脱いで握り合しし血動けり/原田種茅

新郎吾子つひに母視ず白手袋/柴田白葉女

歯もて脱ぐ手袋代案など持たず/奈良文夫

死を診来し手が手袋の中にあり/新明紫明

母の眼に青年吾子の大き手袋/柴田白葉女

海鞘むきの手袋の中爪をたて/小枝秀穂女

あそび足りない手袋のすぐ乾く/辻美奈子

照り昃りはげしき風の皮手袋/柴田白葉女

いくたびも失せては戻る手袋よ/吉屋真砂

うろたへてゐて手袋のなかの指/鎌倉佐弓

はめてみし革手袋の指反らす/深見けん二

わが旅の黒手袋のゆびぞ透き/関口みぐさ

皮手袋の匂ひがわれをへだてゐる/桂信子

亡き妻の手袋五指を入れてみる/杉浦範昌

人さかしく帽とるや手袋の手に/飯田蛇笏

砂丘ひろがる女の黒き手袋より/有馬朗人

人憎し手袋を手に持つて打つ/潮原みつる

空色のゴム手袋や牡蠣を割る/松本みず代

俳句例:161句目~

健康失せし手袋しろく吊皮に/柴田白葉女

卓になげし絹手袋のちぢむ見し/田中王城

学帽と派手な手袋置いてあり/成瀬正とし

背信いくつ手袋の中爪ぬくもる/川口重美

弥陀洞にゴム手袋の凍ててをり/大石雄鬼

衰運の卦の手袋を落しけり/久保田万太郎

徹宵にのぞむ手袋はめにけり/鈴木しづ子

思ひ断つごと手袋のぬがれあり/原田青児

手袋が恨むかたちに脱ぎ置かれ/平島一郎

手袋さぐるポケット底があり/河東碧梧桐

赤筋の手袋ながら借りかへる/川島彷徨子

手袋と明日出す文と置き揃へ/中口飛朗子

手袋と鞭置かれあるペチカかな/原田青児

鍬だこの五指手袋に充ち満てり/小出秋光

手袋にキップの硬さ初恋です/藤本とみ子

雪白の手袋の手よ善き事為せ/中村草田男

飛行機音春の手袋はめにけり/岩淵喜代子

手袋に明日出す厚き手紙載せ/肥田埜勝美

手袋に葬後の指をふかくさす/渡邊千枝子

黒くうすき手袋の手に云ふ別辞/横山白虹

俳句例:181句目~

手袋に首つかまれて夫に逢ふ/赤松ケイ子

コルト撃ち白き手套を地にさらす/三谷昭

手袋のかたち直して今日終ふ/水野あき子

デイトリツヒ懐かし黒き長手套/今泉貞鳳

手袋のしづかに柄杓つかみたる/岸本尚毅

手袋の幸と不幸を左右に握る/文挟夫佐恵

悲しみのかたちに置かれ皮手套/鷹羽狩行

手袋の手をもて撲つや乗馬の面/飯田蛇笏

手套嵌む空と水とに二つの日/大岳水一路

手袋の手を振る軽き別れあり/池内友次郎

手套脱げば自由の十指月掬ふ/佐野まもる

手袋の穴を見つけつバスを待つ/佐野良太

手袋は手のかたちゆゑ置き忘る/猪村直樹

手袋やバラバ許せし手をつつむ/有馬朗人

手袋や退社ばたばた椅子よせて/大津希水

手袋をあぐるや遠き眉うごく/黒田櫻の園

石棺に直に触れむと手套脱ぐ/佐野まもる

手袋をしてゐてうっかり落し物/高澤良一

脱ぎ惜しむ手套純白海鳴る夜/鷲谷七菜子

手袋をぬぐ手ながむる逢瀬かな/日野草城