俳句例:101句目～
一ペンの家となる日の弥生富士/加藤知世子
あしたより玩具買ひゆく弥生かな/石橋秀野
煮ころがしの慈姑にがしや弥生尽/青木重行
弥生卯月と遅遅たり籠に白よもぎ/金子兜太
時は弥生書を売り山を買はんずる/尾崎紅葉
檜葉の上に生ものを置く弥生かな/山本洋子
弥生期過ぎたり一望の野の春疾風/金子兜太
遠方に友、朝の魚骨煮の弥生かな/坪内稔典
田毎なる水の弥生のいたりけり/猪俣千代子
師のもとに速達ふえて弥生なり/小島千架子
金魚田のはやなまぐさき弥生来ぬ/澤田緑生
降りつづく弥生半ばとなりにけり/高濱虚子
葉ふるひし木々に屋根浮く弥生尽/富田木歩
糊利かす綿のブラウス弥生来る/岡部名保子
けふはまだ誰にも逢はず弥生尽/久保田万太郎
朱の袍を召せる華族に弥生尽く/長谷川かな女
弥生なりひもときそむる古事記の序/田中英子
弥生とは洗ひ縮みし足袋のことか/米沢吾亦紅
弥生尽追ひ着せられて羽織るもの/能村登四郎
針のひく糸の尾ながき弥生かな/久保田万太郎
俳句例:121句目～
降りながら退りゆく雪弥生かな/阿部みどり女
雪掻いて普請はじまる弥生かな/阿部みどり女
くちばしに鋭きひかりある弥生かな/夏井いつき
海も山も弥生を待つてゐたりけり/阿部みどり女
妻や子に看られて病める弥生かな/吉武月二郎句集
弥生ここに白紙春のあなたに『妾薄命』/宇多喜代子
われ寂し青き季の花に似て弥生の空のもとに悩める/三ケ島葭子
