俳句例:101句目～
寒鯉を雲のごとくに食はず飼ふ/森澄雄
寒鯉雄々し黒天鵞絨の座布団も/草田男
水洟をすすり寒鯉売つて居り/田中冬二
すれ違ふ寒鯉に渦おこりけり/岸本尚毅
わが堕ちし穴寒鯉の口なりし/熊谷愛子
記憶するために寒鯉にさわる/永末恵子
陽の下にただ寒鯉の尾鰭あり/田中鬼骨
鯉爺の寒鯉つきのなくなりし/久保青山
寒鯉の沈みきりたるあと知らず/館岡沙緻
寒鯉の雲のごとくにしづもれる/山口青邨
寒鯉の籠しづまらず秤らるる/波田/三水
寒鯉の散るとき水の厚みかな/伊丹さち子
寒鯉のふたたびよつてくる目つき/松澤昭
寒鯉のひとつの色にまはりけり/古舘曹人
寒鯉の鬱々としてたむろせり/五十嵐播水
寒鯉のそよぎに水の応へざる/上田五千石
寒鯉のふたつのひげを思ひ寝る/三橋敏雄
寒鯉の斑のとどこほるささめ雪/後藤夜半
たもとほる寒鯉釣の一人かな/阿波野青畝
寒鯉の澄むや奥より主客の声/赤城さかえ
俳句例:121句目～
寒鯉の身を摺り合ひて桶に澄む/中島杏子
寒鯉やみられてしまい発狂す/鈴木六林男
寒鯉の生き身をはさむひとの前/野沢節子
寒鯉や乳房の胸に手を入れて/鈴木六林男
寒鯉の口にひろがるかすみかな/久保純夫
寒鯉の班のとどこほるささめ雪/後藤夜半
寒鯉のけむりの如く去りにけり/杉山碧風
寒鯉や石ともなれず身じろぎぬ/但馬美作
寒鯉や見られてしまい発狂す/鈴木六林男
寒鯉のまなじりあげて喪を泳ぐ/松本照子
寒鯉をまな板にのせふたごころ/中山純子
寒鯉のかたまるあたりより昏し/嶋田麻紀
寒鯉の流れに耐へてをりにけり/谷口忠男
寒鯉のうねる心音ひそみをり/新谷ひろし
寒鯉に一すぢの日のさしにけり/渡辺一魯
寒鯉を持つ腕ぐいと突き出せり/茨木和生
寒鯉の色うつり来て消えにけり/河野静雲
寒鯉の叡智めぐらすごとくなり/高澤良一
寒鯉に隠るるところなかりけり/藺草慶子
寒鯉を真白しと見れば鰭の藍/水原秋桜子
俳句例:141句目～
寒鯉に影のずしりとぶらさがる/斉藤扶美
寒鯉に又きぬずれの音のして/大峯あきら
寒鯉にぴしりと脛を打たれたり/太田鴻村
寒鯉仮死の如く潜むも不倫めき/楠本憲吉
寒鯉にときをり青き葉も散りぬ/岸本尚毅
尾へ抜けて寒鯉の身をはしる力/加藤秋邨
帯ほどくごと寒鯉のうごきいづ/島谷征良
寒鯉となりてゐたりし夢の中/片山由美子
寒鯉の蹴たてし泥のまだひろがる/森田峠
寒鯉のしばしおのれを流しゐる/鳥居おさむ
寒鯉はしづかなるかな鰭を垂れ/水原秋桜子
寒鯉の売れのこりゐて日の暮るる/田中冬二
寒鯉のさびしらの目の動くかな/坂本山秀朗
寒鯉のぎくと向き変ふ帰心かな/鍵和田釉子
寒鯉のもの言ひつひに聞きもらす/嶋田麻紀
寒鯉の買はるる空のうすみどり/柴田白葉女
まざと見たり寒鯉沈むときの瞳を/川口重美
寒鯉のあとしざりつゝ相寄りぬ/三宅清三郎
寒鯉とわかる深さにをりにけり/新井ひろし
浮いて来し寒鯉にこゑかけにけり/細川加賀
俳句例:161句目～
寒鯉のかたまつてゐて触れ合はず/伊藤伊那男
