季語/虹(にじ)を使った俳句

俳句例:101句目~

海上に驟雨の虹や鱚を釣る/鈴木花蓑

医師迫る最大の礼す虹の方/岩田昌寿

寒鰤は虹一条を身にかざる/山口青邨

虹の野の校舎教師ら白髪に/橋本鶏二

十月の母の忌日や虹かかる/佐藤和子

海原の円虹神のはかりごと/桑田青虎

虹の根に雉啼雨の晴間かな/高井几董

失ひし青春のごと虹消ゆる/常石芝青

美しき虹なりしかば約忘る/相馬遷子

虹の輪の中に人立つ堤かな/西山泊雲

虹の輪の下に金剛峯寺あり/伊藤柏翠

虹の足とは不確に美しき/後藤比奈夫

夕立や上總へぬけて虹の橋/寺田寅彦

虹の根に近づき虹を見失ふ/貝森光大

吊橋も虹のかけらも覚束な/山田弘子

奇蹟とや夕立虹立つ神殿址/桂樟蹊子

寒鰤は虹一筋を身にかざる/山口青邨

三月や虹のひといろ残す海/朝倉和江

虹の脚凍らんとして波かぶる/岸田稚

虹の松枝ゆさゆさと鴉発つ/右城暮石

俳句例:121句目~

定型の中に暫く虹たてり/中尾寿美子

吾子死後の虹の七色胸の上/中村祐子

疎開苦や村から町へ二重虹/香西照雄

時雨虹消えて舟音残りけり/稲畑汀子

欄干に幾人か減る虹の裾/林田紀音夫

百日虹百日を経て娶らむか/杉山岳陽

比良かけて僅かの虹や葦の角/飴山實

珊瑚咲く海に生れて虹淡し/吉野義子

美しの湖上の虹や若菜摘む/鈴木花蓑

市ヶ谷に虹を仰ぎて別れけり/日原傳

窓開き虹と晩鐘入れにけり/有馬朗人

黒板にあしたの予定虹二重/藺草慶子

皿二枚虹二重なる午餐かな/仙田洋子

虹懸りゐて大切の時々刻々/津田清子

曇天の虹怺へをり消えつつも/小澤實

朝の虹森の彼方に雉子孵り/松村蒼石

虹の後つづけゆく旅瑞々し/都筑智子

虹消えて了へば還る人妻に/三橋鷹女

虹消えて心の虹は奏でつつ/橋本鶏二

虹消えて忽ち君の無き如し/高浜虚子

俳句例:141句目~

朝の虹消えて一ト雨半夏生/酒井黙禅

虹消ゆと女いへりし芽桑原/太田鴻村

虹生る噴水の水せめぎ合ひ/柴田奈美

虹生る滝と光と出逢ひては/稲畑汀子

虹たるるもとや樗の木の間より/召波

虹立ちて忽ち君の在る如し/高浜虚子

虹立ちて空は平衡保ちをり/岩田昌寿

虹立ちて鯉飼ふ村の空闢き/高澤良一

虹立つやますほの小貝掌に/大橋敦子

虹立つや少女にあまる弓の丈/神蔵器

虹立つや狂女の唄ふ唄悲し/稲畑汀子

群千鳥顧るとき濤の虹/阿部みどり女

虹たつや常山木に顫ふ烏蝶/飯田蛇笏

虹立てり青木繁も見し海に/大屋達治

蔬菜園朝虹たちて花いちご/飯田蛇笏

後山の雲を高みに虹消ゆる/飯田蛇笏

虹鱒の虹寒中をおとろへず/宮津昭彦

虹鱒は星明りにも逸るなり/佐野良太

虹鱒を焼く火に山の雨の糸/大島民郎

小さき母に一片の虹藁の村/館岡誠二

俳句例:161句目~

蛤の虹より生れし夜の蝶か/石塚友二

大虹の真下に黒人街ありぬ/対馬康子

赤松も今濃き虹の中に入る/中村汀女

走り梅雨沖に一片の虹遊ぶ/小林康治

踏み鳴らす虹の音階誕生日/仙田洋子

今も瞻ゆ指より指へかかる虹/枇杷男

週末は虹を門とす籐寝椅子/中島斌雄

人寰や虹架かる音響きいる/寺井谷子

聖鐘や虹へ押しゆく乳母車/那須淳男

釦もうひとつ外しぬ虹の後/鎌倉佐弓

銀の笛ほし滝しぶき虹となり/桂信子

虹たつと青蘆むらに人声す/西島麦南

滝の神所蔵の虹を滝に懸け/鷹羽狩行

産むならむ湖暗がりの虹鱒は/中拓夫

陰暦八月虹うち仰ぐ晩稲守/飯田蛇笏

虹のごと山夜明りす旱年/河東碧梧桐

靴磨くも磨かすも貧虹久し/川口重美

音たてて色流れをり虹の幅/宮津昭彦

撒水のしぶき虹なす春休み/鈴木智子

風邪の傘重し虹立つ沖明り/小林康治

俳句例:181句目~

虹が出るあゝ鼻先に軍艦/秋元不死男

白虹忌銀杏大樹を燭とせり/寺井谷子

虹梅や欄あますなき採点簿/福永耕二

虹告る声無形の救ひも刻争ふ/香西照雄

糸游やはるかな国の虹の音/小枝秀穂女

虹出でて金魚の口を揃へだす/斎藤石雲

山よりも低く初冬の虹立ちて/阿部静江

山刀伐に虹かかれよと虹の橋/加藤楸邨

虹追ひて郊外電車カーブ切る/伍賀稚子

虹二重二重のまぶた妻も持つ/有馬朗人

紫蘇の実の一穂を手に山の虹/古沢太穂

虹二タ重妻の細肩つかみ起つ/石川桂郎

虹二タ重みはる瞼の形なりに/野澤節子

巨人一度手振へば虹や夕立後/中野三允

虹七線わが箴言をこゝに書く/高柳重信

虹に啼き雲にうつろひ夏雲雀/飯田蛇笏

虹一刻別れ近くて声かけ合ふ/奈良文夫

立春の翌日の虹君知るや/阿部みどり女

海づらの虹をけしたる燕かな/榎本其角

こぼさずに虹の雨溜め蕗の薹/宮津昭彦