「種浸し」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「種浸し」について
【表記】種浸し
【読み方】たねひたし
【ローマ字読み】tanehitashi
子季語・関連季語・傍題・類語など
・種浸け(たねつけ:tanetsuke)
・種かし(たねかし:tanekashi)
・種ふて(たねふて:tanefute)
・種ふせる(たねふせる:tanefuseru)
・籾つける(もみつける:momitsukeru)
・種時(たねどき:tanedoki)
・種俵(たねだわら:tanedawara)
・すじ俵(すじだわら:sujidawara)
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季節による分類
・「た」で始まる春の季語
・「春の生活」を表す季語
・「晩春」に分類される季語
月ごとの分類
種浸しを含む俳句例
ゆら~と水底浅き種俵/志波彦
橋杭や一つ離れて種俵/会津八一
門川に恋する蜷や種俵/原本神桜
よもすがら音なき雨や種俵/蕪村
揚ぐるとき水にも力種俵/檜紀代
太秦の門べに作る種井哉/松瀬青々
種俵大口あけて陽炎へり/前田普羅
水深く縮まつて見ゆ種俵/高浜虚子
八方に山ある安堵種浸し/阿部静雄
波音の高き日続く種浸し/茨木和生
絲遊や夜雨に浸りし種俵/石井露月
富士よりの湧水の池種浸す/中拓夫
種浸しあり霊山の雪解水/松井利彦
観音堂雨意の門川種浸す/佐野美智
急流に力棒架け種浸す/山口都茂女
絲遊や夜雨に浸りし種俵/石井露月
種浸す朧夜の杉くろぐろと/中拓夫
種浸す縄文の水かさねおき/神蔵器
羽賀寺をいできし水に種俵/飴山實
藪竹につなげる縄や種俵/鈴木花蓑
俳句例:21句目~
金田に沈めてありし種俵/広瀬峰雄
種浸けて水桶の耳力張る/伊藤京子
おほかたは同姓の村種浸し/赤塚五行
朝風に夕風に澄む種井かな/福田蓼汀
種浸すしろがねの濃き空の裾/中拓夫
二タ筋の縄にそれぞれ種俵/若土白羊
口とぢて打ち重なりつ種俵/前田普羅
前山の雨晴れて行く種浸し/森光義子
種浸す若狭は雪嶺遠巻きに/西村公鳳
種俵揚げ来し雫土間濡らす/木全一枝
種俵水の重さのまだ抜けず/木内彰志
種俵沈めあるらし泡立てり/山崎一角
種俵焼く農やめし父ひとり/皆川白陀
種俵緋鯉の水につけてあり/星野立子
種俵あげたる飛騨の径かな/前田普羅
弥彦嶺に荒星ひとつ種浸し/本宮哲郎
橋杭に縄いくすぢも種浸す/木俣杏仁
澄みかぬる水の温みや種俵/会津八一
雨濁りややに澄みゆく種俵/福田蓼汀
川すじの水まだ眠る種浸し/房川喜三男
俳句例:41句目~
出序でに覗く種井や燭かざし/竹内余花
大いなる種井まはりて人来る/高野素十
大山の伏流といふ種井かな/波出石品女
槻大樹ある一郷の種井かな/河東碧梧桐
煦々として麓畑あり種井あり/友岡子郷
産土神に隣れる家の大種井/波多野爽波
種俵影の小鮒がつゝきをり/篠田悌二郎
しばらくは水の抗ふ種浸す/加倉井秋を
しばらくは潮の匂ひの種浸し/田中裕明
又すこし肥りし妻と種浸す/松倉ゆずる
燦々と日照雨は過ぐる種浸し/斎藤夏風
種は井に浸し来て灯し読書かな/原月舟
種俵飼ふはつがひの真鴨なり/木津柳芽
種井澄み観世世に出し土舞台/北出礼子
種浸し俵にすだく小蜷かな/松根東洋城
花びらの上に花降る種井かな/青木重行
種浸す予後の夕焼ながかりし/赤尾兜子
種籾を浸せりむかし産湯桶/青柳志解樹
雨水を甕にたゝへて種浸す/松岡伊佐緒
雨水の濁りさしこむ種井かな/浅野白山
俳句例:61句目~
おがたまの木に縄さげし種井かな/支考
八十八夜種井の用もなくなりぬ/皆川白陀
風呂桶に風呂の温度の種浸し/深見けん二
種浸す諏訪明神の湯を足して/伊藤伊那男
月影に種井ひまなくながれけり/飯田蛇笏
種浸すありけるわざをいまになほ/上村占
ふくらみてくくりきびしき種俵/福田蓼汀
種浸けし夜は短かきものを読む/本多静江
舂くや温む種井の水うごく/菅原師竹句集
琵琶湖より低き田持ちて種浸し/萩原麦草
映りたる畦木が揺るゝ種浸し/瀬戸きよ子
小流れも利根のうちなり種浸す/小杉余子
ざつくりと切つたる縄も種浸し/波多野爽波
花の土手遠くにありし種井かな/長谷川耕畝
灯を消してかぼそき音す種浸し/福田甲子雄
ひらひらと蛭すみわたる種井かな/飯田蛇笏
地震のあと水脈変りたる種井かな/成田黄二
種つける大百姓となりにけり/安斎桜カイ子
冷ゆる手のすこし種井をさそふかな/田中裕明
日を抱いてけふを惜しめる種井かな/飯田蛇笏