「羅」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「羅」について
【表記】羅
【読み方】うすもの
【ローマ字読み】usumono
子季語・関連季語・傍題・類語など
・絽(ろ:ro)
・紗(しゃ:sha)
・明石(あかし:akashi)
・透綾(すきや:sukiya)
・上布(じょうふ:jofu)
・綾羅(りょうら:ryora)
・軽羅(けいら:keira)
・薄衣(うすぎぬ:usuginu)
・薄ごろも(うすごろも:usugoromo)
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季節による分類
・「う」で始まる夏の季語
・「夏の生活」を表す季語
・「晩夏」に分類される季語
月ごとの分類
羅を含む俳句例
羅の人美しき色のこし/立子
羅に遮る蓮のにほひ哉/蕪村
羅の臀に風月常新/松瀬青々
羅の風に吹るゝ月夜哉/春石
羅の僧三人の三色に/古舘曹人
日盛や馬の腹覆羅に/野村喜舟
羅の喪服北鎌倉に降り/松本進
羅や帯に真珠の粒光り/館岡沙緻
羅の仏下ろしに畏まる/高澤良一
金屏の羅は誰ガあきのかぜ/蕪村
羅にすけて尼僧の香袋/椎橋清翠
羅の喪服に紅き隠し紐/品川鈴子
羅に着痩の腕通しけり/百瀬美津
羅に衣通る月の肌かな/杉田久女
羅に透く鰐皮の阿弥陀経/穴井太
盆僧の羅硬し雑踏裡/殿村莵絲子
羅に不貞の相の美しや/吉屋信子
羅の膝に手を置き鬼貫忌/森澄雄
羅の肩をおほへる稲光/中村汀女
羅の裾ひるがへし不倖/岩坂三枝
俳句例:21句目~
羅や水中深く塔揺らぎ/児玉輝代
羅に天女の壁画舞ひをさむ/原裕
羅に女の息のかよふらく/上村占
夏袴羅にしてひざ正し/高濱虚子
羅や樓の独居雲四隣/松根東洋城
羅の女となりて旅始め/林真砂江
羅のひと墓原に唄ひをり/日原傳
羅にそひて夕透く芦の丈/野澤節子
羅の商人通る日本橋/阿部みどり女
艫拍子や風羅衣に颯々と/尾崎紅葉
息づきに濃くまた淡く薄衣/檜紀代
羅着て大正の歌唄ひけり/津上清七
羅を風がよろこぶ水の際/飯村愛子
羅に余命も透きて母の影/井上蒼月
羅に動きて見ゆれ水の色/藤井紫影
羅に包みきれざる好奇心/山田弘子
羅を裁つや乱るゝ窓の黍/杉田久女
羅を着て遠方の不幸かな/長谷川双
羅を着て蜉蝣のごとくゐる/森澄雄
羅の女の堕つる地獄かな/尾崎迷堂
俳句例:41句目~
羅に汗さへ見せぬ女かな/高浜年尾
羅に螢のやうな子を宿し/眞鍋呉夫
羅の裏直線の糸の張り/小檜山繁子
さらさらと羅みづのごとたたむ/占
羅の折目たしかに着たりけり/草城
羅を着て月光に逆らへり/齋藤愼爾
羅を着こなし上手水海月/高澤良一
羅を昼掛けてあり竹婦人/菅原師竹
羅のおゐどに二枚足の裏/茨木和生
羅をひくや天女の天つ風/内藤鳴雪
羅の紺にほやかや太り肉/野村喜舟
羅を着て茶を點つる暁の夢/及川貞
羅や外出と云へば仏参に/尾崎迷堂
羅の二人はよけれ納涼図/高澤良一
羅の二月堂僧杉間より/赤松けい子
羅に身透きまぎれず楢林/野澤節子
うすものの螢を透す螢かな/泉鏡花
羅の近寄りがたき気品見し/今村青
羅の人に音あり猫になし/筑紫磐井
羅の人のくれたる握り飯/岸本尚毅
俳句例:61句目~
羅の如母佇ちぬ生姜畑/川田由美子
羅や風渡り居る庭古松/松根東洋城
抱籠や碧紗を隔つ夜の空/石井露月
うすものや月夜を紺の雨絣/泉鏡花
羅や韋提希夫人末利夫人/尾崎迷堂
羅や細腰にして不逞なり/鈴木真砂女
羅や花火見に立つ裾さばき/吉屋信子
羅を着てお点前の美しく/石川/梨代
逢へどもう藍の羅応へなし/野澤節子
羅や人悲します恋をして/鈴木真砂女
堂守の軽羅に透けて神の紋/石川桂郎
羅や母とて女ざかり経し/上田五千石
羅衣や風に勝へさる三挺立/尾崎紅葉
昇降機又も軽羅の人や吐く/久米正雄
うすものの袖の香れり魂迎/伊藤京子
羅にすはまの紋のうす~と/高浜虚子
羅にただよふ罪の匂ひかな/小林康治
羅にちらりと肌の動きたる/伊藤柏翠
羅につめたき風や今朝の秋/赤木格堂
羅に包まれてゐし悲しみも/稲畑汀子
俳句例:81句目~
羅に旅の著崩れ見せざりし/山田弘子
羅に母のつけたる折目かな/影島智子
羅に秘めた恋あり絹の糸/清水三千代
羅に角ばりて茶の師匠くる/山辺浩子
羅のうしろ鏡も既に寡婦/殿村菟絲子
羅のそもそも鰻嫌ひなる/藤田あけ烏
羅のたもとにすきぬ汗拭ひ/高濱虚子
羅のたゝみて藍の深きこと/島田鈴子
羅の乙女は笑まし腋を剃る/杉田久女
草市や軽羅をまとふ鄙乙女/相馬遷子
羅の女の肩のとがりをる/青葉三角草
羅の妻と待つ月光舟を待つ/折笠美秋
羅の島倉千代子肥りしか/八木林之介
羅の模様の波の立ち上る/豊田八重子
羅の肩にひとすぢ折目かな/長谷川櫂
羅の胸に懐紙の透き見ゆる/高浜虚子
羅の胸のあたりに青ふくべ/岩田由美
羅の蛻を抱いてゾクとせり/筑紫磐井
たそがれの羅にほふ野外能/大石悦子
羅の袖やダリヤの色透けて/角田竹冷