俳句例:101句目~
動きだす雲のたちまち九月かな/桜井京子
顔暑く陽はひろびろと九月来ぬ/大井雅人
子規庵にしばし端座も九月かな/村上谿聲
鯖うまくなりて九月や雨ばかり/草間時彦
黒葡萄表裏を食うべ九月十日/蓬田紀枝子
広々とありし九月の木蔭かな/播磨てるみ
廃船に日ざしまぶしく九月果つ/杉本苑子
九月の教室蝉がじーんと別れにくる/穴井太
九月の地蹠ぴつたり生きて立つ/橋本多佳子
鈴木さんあなたは九月の木の匂い/坪内稔典
九月終るキリンの首は空に残り/永田耕一郎
ひろい葉の九月はゆれる首飾り/津沢マサ子
九月来箸をつかんでまた生きる/橋本多佳子
どこまでが九月の風となるいのち/大西泰世
川えびの身の透きとほる九月かな/大嶽青児
しんじつは醜男にありて九月来る/三橋鷹女
裸火に九月一日の男の子生まる/水原秋櫻子
さざなみのからだにおよび沼九月/鳴戸奈菜
九月蚊帳天気はよしと思ひ寝る/大場白水郎
鰤寄せの撒き餌はじまり島九月/前島たてき
俳句例:121句目~
燈台守に九月の空の澄み来にけり/鈴木鵬于
うらぶれて釣るや雨夜の九月蚊帳/日野草城
よそほはず会ふや九月の風の中/小野恵美子
逝きませし九月晩節きよらかに/下村ひろし
九月蚊帳吊られて一夜波郷が辺に/石塚友二
ゆく雲や九月榧の実まみどりに/鈴木しげを
九月なりめくばせをまたうくるごと/岡井省二
茄子通草九月はものの濃むらさき/稲垣きくの
九月かや世を好きつりて果てにけり/飯田蛇笏
オリオンを九月の深夜見るかなしさ/相馬遷子
わけもなくシヨートカットや九月なり/櫂水尾
身を容るる葉蔭あかるき九月かな/鷲谷七菜子
朝顔のべたべた咲ける九月かな/長谷川かな女
きみと会う九月丸太ン棒をわたり/津沢マサ子
雨音に馴れしこのごろ九月かな/阿部みどり女
木草にも九月のたゆさあるべきか/相生垣瓜人
九月はや白をさみしきいろとなす/工藤久仁年
九月かや銭をつつんで返しけり/吉武月二郎句集
迷路より抜けて九月の蝉しぐれ/しらいししずみ
猫だましと言う手もありて九月場所/波多野寿子
俳句例:141句目~
こころのおくの燠がこぼれてくる九月/大西泰世
九月四日わが裸のうらおもて獄吏のまえ/橋本夢道