季語/汗(あせ)を使った俳句

俳句例:201句目~

額に汗お山詣での首手拭い/高澤良一

顎の汗肩口で拭き城の段/平井さち子

食の湯の汗に出たるをどりかな/李由

少年の汗もかかずに鰻裂く/岸本尚毅

高原や貸馬の汗腱に寄る/平井さち子

鳩尾に汗ため晒布巻き余す/岸風三樓

鹿茸や人力車夫の首に汗/ふけとしこ

麦刈の汗たる胸に夜は妻を/西島麥南

汗しつつ転院勧告糾しをり/大石悦子

黙々と憩ひ黙々と汗し行く/相馬遷子

汗しとど写楽の目して口をして/林翔

汗しゆく山に一基の墓あれば/上村占

デモの年汗に腐りし腕時計/沢木欣一

山頂の鳥に多汗の病かな/宇多喜代子

岬山の蝶の恋ひたる妹が汗/大屋達治

汗し働く基地の炎天生々し/小林康治

汗し病み黄天に背に撒水車/片山桃史

汗し話す笑ひて憎し髭の口/桜井博道

汗すゞし働くのみに身を任せ/及川貞

帝井に汗ばむ眼すすぎけり/富田潮児

俳句例:221句目~

汗とりや唯泰然と坐りゐて/野村喜舟

汗とりや弓に肩ぬぐ袖のうち/炭太祇

帰郷の荷桃畑へ出て汗拭ふ/川崎展宏

汗とりや板の堅さの帯の下/野村喜舟

帽とれば頭青き兵と汗の馬/京極杞陽

汗のもの山と洗うて看取妻/山田不染

汗の手に土や埃や大豆引く/松藤夏山

中年や泪は汗に似てにがし/石原八束

一本の木蔭に群れて汗拭ふ/相馬遷子

弔辞読む兜太の猪頸汗噴けり/小島健

汗の耳老眼鏡を落しけり/黒田櫻の園

汗の膚はつと冷たし花柘榴/右城暮石

汗の身を慮りて訪はず/竹下しづの女

汗の顔人が拭くゆゑ我も拭きぬ/林翔

汗の馬馬具はずされて沖望む/源鬼彦

汗ばみて初金毘羅の段登る/三谷美子

汗ばみて旅の形代流しけり/細川加賀

仁王門汗し過ぎれば膝笑ふ/高澤良一

汗ばむや泥人形の楊貴妃も/大島民郎

汗ばめる母美しき五月来ぬ/中村汀女

俳句例:241句目~

応召の髪成り笑ひ汗拭へり/石川桂郎

汗ひいて洞然と銭洗ふなり/石川桂郎

汗ゆるやか七つの丘の一つ越え/林翔

今生は遊行なり汗重ねつつ/渡辺恭子

今眠し眠らんとして汗つたふ/森田峠

汗垂れて落石に耳聡くをり/小林碧郎

仏見て引きたるを又旅の汗/皆吉爽雨

代田掻汗と光を撒き散らし/相馬遷子

汗女房饂飩地獄といひつべし/小澤實

汗手貫はづさせ僧を診察す/階堂杏庭

汗拭いてふと掃苔の山甘し/岡井省二

汗拭いて七百八十五段の労/高澤良一

汗拭いて卒然とわが塒無し/石塚友二

成田山詣での汗の帯解ける/宮武寒々

汗拭いて縦に走れる手術痕/高澤良一

汗拭きて質疑応答終りけり/稲畑汀子

汗拭くや膩乗り来し年の胸/石塚友二

汗拭ふ貧厨トマト浸しあり/岸風三楼

汗拭小さき滝に打たせけり/篠崎霞山

汗涸れぬ高梁雲を凌ぐ午下/相馬遷子

俳句例:261句目~

汗涼し一刻に鞭あつる旅/赤松ケイ子

汗滂沱神よりも人信じゐて/上井正司

手刀男汗にまみれし金箔屋/伊藤敬子

光る森馬には馬の汗ながれ/西東三鬼

汗拭くやトラックの氷塊疾し/原田種茅

汗のてのひらを泳がす無言劇/行方克巳

口もとの薄き黒子も汗ばめる/京極杞陽

汗垂れて慾を失ひをりにけり/大内迪子

いい汗をかいて一畝耕せり/城野都生子

汗いさぎよし朝粥の火に仕へ/塚本久子

汗のみを垂れゐて涙なかりけむ/斎藤玄

いとほしき児の寐汗や枕蚊帳/松下紫人

いねゐつつをさなき指汗の髪掻く/篠原

汗拭ふ束の間澄める己れかな/中島月笠

二十年の髪切り捨つる汗熱し/永井龍男

おもしろう汗のしみたる浴衣かな/一茶

汗を押さへて蛇使ひ出番待ち/茨木和生

汗の中一針ごとの願ひかな/加藤知世子

汗の季節梧桐の幹ひそりとす/友岡子郷

汗垂れて日々の草食雲が往き/中島斌雄

俳句例:281句目~

口紅の汗かいてゐる晶子の忌/黛まどか

かにかくに玉の汗かく千余段/高澤良一

汗拭ふ手拭ひ大き郵便夫/小笠原須美子

白杖の人を追ひ越す汗なりき/松山足羽

室の花汗ばむほどの譎詐かな/久米正雄

白文を読み下されてどつと汗/筑紫磐井

夏ちかし髪膚の寝汗拭ひ得ず/石橋秀野

汗かかぬを羨しと見てゐたり/高澤良一

汗の玉類句の如く流れけり/小川原嘘帥

病院へ行く道いつも汗を拭く/横光利一

異教徒の汗してのぞく懺悔室/相馬遷子

夕ベつかれ厨ぞせまく汗拭ふ/岸風三楼

汗拭いて開口一番ありがとう/野田梅月

しづかなる汗八朔の白がさね/筑紫磐井

今年竹皮剥ぐころの汗少し/鈴木真砂女

消し幕が汗の屍を連れ去りぬ/須川洋子

失言の汗が目に沁む亀鳴く夜/澤田緑生

汗かきの君に訣るる暑さかな/大石悦子

すぐに了る竜踊の汗生者死者/和知喜八

多情佛心汗拭き葬の列の尾に/小林康治