俳句例:201句目～
晩鐘に散り残りたる暑さかな/千代尼
盆暑しかててくはへて大目覆/万太郎
莚帆の風に暑さの残りけり/正岡子規
若人にたのしき暑さ海の紺/河合嵯峨
登る息胸にあてつつ霧暑し/桜井博道
町住の暑さもすでに西鶴忌/後藤夜半
子に深し暑さぐもりの水の皺/松澤昭
用のない髪とおもへば暑さかな/花嬌
學徒劇暑し解説つづきをり/後藤夜半
球場の暑しといへど球涼し/小路紫峡
宗論は暑し堕地獄/謗法華/筑紫磐井
暑き夜〔を〕にらみ合たり鬼瓦/一茶
腹ばへば～つのる暑さかな/小杉余子
猶暑し箕干の魚にはこび雨/加舎白雄
寝物語などして暑さ一頓挫/高澤良一
脱てもおなじ暑さを蝉の声/内藤丈草
犬聲の人語に似たる暑さ哉/内田百間
暑き夜の鉢木花咬む鼠かな/吉田冬葉
木の肌の人より暑し盆の道/藤田湘子
暑さくる小さき声の集金人/田中英子
俳句例:221句目～
楢櫟見るさへ暑し刻ながし/杉山岳陽
暑き日や一掬の水亡き人に/佐野美智
むら雨の木賊に通る暑さ哉/服部嵐雪
もてなしの女子舌長き暑さ哉/森鴎外
暑き朝蚤の歌など放送す/相生垣瓜人
爆撃の跡匂ひゐる暑さかな/椎橋清翠
長き日の脊中に暑しおそ桜/高井几董
手拭を一本持ちて暑がれる/茨木和生
繩文の石臼暑し廻らねば/文挟夫佐恵
工夫暑し古き枕木傷見せて/大井雅人
市中の暑さに中り男かな/阿波野青畝
師の墓の青桐伐られたる暑さ/杉本寛
縄文の石臼暑し廻らねば/文挟夫佐恵
玻璃暑し為すことあまたある机/飴山實
病人の暑さも言はぬこと悲し/吉岡恵信
痩馬に草畦咬まれし暑さかな/吉田冬葉
登山道瓦礫に明けて早や暑し/下村槐太
盆東風や波に日暑き須磨の浦/谷村凡水
真菰刈りて水濁しある沼暑し/倉田萩郎
石も木も眼にひかる暑さかな/向井去来
俳句例:241句目～
石切の火をきり出す暑さかな/水田正秀
砂川の松見ゆる宿や蚊帳暑し/吉田冬葉
砂浜や残る暑さをほのめかす/子規句集
いつまでも続く暑さや葛の花/上野静作
破るべき熊野誓紙ぞいと暑し/筑紫磐井
磯際は湖水のにゆる暑さかな/水田正秀
神の身も岩田帯巻く暑さかな/高橋睦郎
神主の砂浜わたる暑さかな/小酒井不木
おだやかに戻る暑さや稲の花/木下夕爾
神鈴の手綱暑きをたれも知らぬ/渋谷道
窓の景子になく暑き地下電車/大橋敦子
窓開けて残る暑さに壁を塗る/平間彌生
糠床をならす膝つき夜も暑し/菖蒲あや
糠漬の床盛りあがる暑さかな/高橋悦子
紅蜀葵いまだ花なき暑さかな/林原耒井
紫陽花に草紙干す時暑さかな/飯田蛇笏
けむるほど暑き空あり聾ひし/石原八束
こだはれば貧ぞ枷なす家暑し/清水基吉
織娘たち身暑し草履はき平め/中島斌男
群集して法華八講の暑さかな/筑紫磐井
俳句例:261句目～
聞くからに暑き地車囃子かな/西村和子
腰太し暑し天理のひのきしん/右城暮石
腰掛し石を飛びのく暑さかな/水田正秀
舞方の前のめり鳴る暑さかな/如月真菜
花ざくろ爛れて暑き雨かかる/石原舟月
草刈の草にむさるる暑さかな/水田正秀
落ち蝉の砂に羽摶つ尚暑し/河東碧梧桐
蒸し暑き夜を露光る下葉かな/渡辺水巴
蚊遣火の隣は暑しつるめさう/中村史邦
蛛の巣は暑きものなり夏木立/上島鬼貫
蜥蜴の尾草に余れる暑さかな/石川冬扇
さぞあらむ紫宸殿上の此暑さ/会津八一
蝉暑しうかうか保険契約す/石田あき子
蝉暑しとどろと動く雲の様/正木不如丘
蝶の舌ゼンマイに似る暑さかな/龍之介
蟹の手のひびも乾はらぐ暑さかな/野明
つくづくと医者殿を見る暑さかな/半朱
蠅打つて朝より暑き夫をり/小島千架子
街路樹の影定まりし暑さかな/戸田暮情
複眼の虫とゐて暑さを瞶む/千代田葛彦
俳句例:281句目～
見苦しや残る暑さの久しきは/高浜虚子
視力日々に衰へてゆく暑さかな/上村占
負うた子に髪なぶらるる暑さかな/園女
贋物は暑しゴッホの向日葵よ/本城佐和
赤蜂の交りながらも暑さかな/室生犀星
身暑しまが神焔ふき掛くるか/高田蝶衣
逆縁の身を灼く暑き日なりけり/滝青佳
遺作展春の暑さに耐へざりき/石田波郷
鉄の街鉄うちかさね夜も暑き/細谷源二
鉄条に似て蝶の舌暑さかな/芥川龍之介
鐵條に似て蝶の舌暑さかな/芥川龍之介
雲暑し摩文仁死の山何呼ばむ/石原八束
ふるさとを思ふ病に暑き秋/芥川龍之介
靄晴れて暑き空なり百合の花/石動炎天
頭陀一つこれさへ暑き浮世哉/正岡子規
騙されて来る葭町の暑さかな/筑紫磐井
まだ暑き庭の紫苑の仰ぐほど/林原耒井
鰈煮る暑さの家よ帰りたれば/宮津昭彦
世にも暑にも寡黙をもつて抗しけり/敦
信心の白き衣も暑によごれ/永田耕一郎
