季語/蛾(が)を使った俳句

俳句例:201句目~

誘蛾燈うしろに墓の山据わる/幸治燕居

咬む蟻の蛾の骸うらがへし/佐々木六戈

火取虫村の芝居は一夜ぎり/濱本/八郎

蛾が卵生みをり推理小説閉づ/横山白虹

視力図に蛾は卵産む爆音下/田川飛旅子

山宿の壁に紛らふ蛾なりけり/臼田亞浪

山昏れてよりの親しき誘蛾灯/鶴原暮春

火取虫こんど飛んだら百年目/高澤良一

蛾這入り大きな陰や誘蛾燈/阿波野青畝

蛾落ちてさゞめく水や誘蛾燈/西山泊雲

蚕の蛾交りし翅をびゝ~と/射場秀太郎

山頂ホテル霧に盲ひし火蛾宿し/樋笠文

吾れに白紙蛾に白壁のしろき夜が/鷹女

岩積みし雄山が放つ蛾の淡さ/新井英子

火取虫火を取る夏も終りけり/高澤良一

誘蛾燈の下のくらきに畦あつまる/篠原

席かへて告ぐる病状火取虫/三田村智生

夏果つ灯蛾の鱗粉を漲らし/篠田悌二郎

蛾打ち合ふ音にはなれて眠りたる/亜浪

短夜の蛾が死んで居り盃洗に/岡本松浜

俳句例:221句目~

夏きざす窓掛に蛾の朱一点/篠田悌二郎

深海のホテルの壁を蛾が叩く/横山白虹

誘蛾燈の埃り払うて父寝たり/萩原麦草

蔵の中二三百とぶ麦蛾かな/廣江八重櫻

誘蛾燈光あつめて峡昏るる/阪尻勢津子

大江の雨衝いて来し燈蛾かな/岡本松浜

恋の胸みだれ果なし火蛾を前/石塚友二

火取虫翅音重きは落ちやすし/加藤楸邨

萱厚く氷室を葺きて白蛾湧く/吉田紫乃

大燈蛾香炉に貌をおさめたり/下村槐太

秋の蛾の堕ちてしばらく漣す/福永耕二

火取虫飛び廻る輪を拡げつゝ/高澤良一

北ぐにの蛾の舞ひ出づる能舞台/桂信子

大藪の灯に蛾がとんで蝕月夜/西村公鳳

故郷なり終夜群れをる誘蛾燈/江里昭彦

故郷はつかのまにして誘蛾灯/対馬康子

荒涼の夏野の月へ蛾が消ゆる/佐野良太

真白な蛾や掛稲を飛び出づる/岸本尚毅

病める子の病める匂や火取虫/小坂順子

断水や妻てらてらと蛾をつまむ/松田進

俳句例:241句目~

大蛾きし障子の外の浅間の夜/前田普羅

大蛾去りし林檎は寂し青磁色/前田普羅

大蛾来て動乱したる灯虫かな/高浜虚子

誘蛾燈夜靄深くてまたたかず/福田蓼汀

部屋に来る白蛾宥して行者宿/毛塚静枝

星辰に潮鳴りやまず未明の蛾/木村蕪城

白雄忌の火取蛾一夜蔦沼に/鳥居美智子

大蛾舞ひ小蛾しづまる秋の宵/前田普羅

晩夏の蛾娼婦かげひく街燈に/西島麥南

晩学の更くる夜ごとの火取虫/宮崎佳子

病む母の見て誘蛾燈の青地獄/齋藤愼爾

切子貪欲一山蛾族翔け参じ/橋本多佳子

色つきの夢の疲れや真白き蛾/有馬英子

壁の上着両腕を垂れ火蛾舞へる/轡田進

円を描きまた円を描く火取虫/川口利夫

航海燈夕立が蛾をぬぐひ去る/福永耕二

火蛾が来し後より来る音楽師/斉藤夏風

聖堂の火蛾の暗がり耳冷たし/伊藤淳子

奈落より来し貌見たり火取虫/河合未光

畳這ふ山の蛾を掃き月見酒/小川斉東語

俳句例:261句目~

考へて気づく真夜の蛾の白さ/成田千空

火取虫ふたゝび闇に戻らざる/山田桂梧

蛾を寂と止まらせしめし金襖/村越化石

姫鱒を主菜となして灯蛾の宿/北野民夫

生れ際に謝罪する蛾よ天の川/永田耕衣

灯虫さへすでに夜更のひそけさに/汀女

火蛾を掃く一夜に海のさま変り/上村占

羮に火蛾落ちつ皆酔ひしれし/高田蝶衣

木鐘の連打に山の蛾のまなこ/吉田紫乃

全身の金をふるつて死の灯蛾/河野南畦

繭蝶に山蛾の来てさかりけり/西山泊雲

蛾を以て扇としけり須磨の浦/永田耕衣

子規は眼を失はざりき火取虫/浅香甲陽

夕づく蛾柏大樹をめぐりをり/石田波郷

燈をとりに来し蛾の闇は雨降れり/誓子

駅頭の灯蛾舞ひ帰郷の一集団/原子公平

鱒池に小雀が落す蛾の青し/阿部ひろし

鱗毛を飛ばし蚕蛾の交み合ふ/小倉桑平

鵜篝に滝作し落つる灯虫あり/京極杞陽

明日予定たたずも楽し火蛾の宿/星野椿

俳句例:281句目~

すさまじや沖の汐瀬の蛾の馳逐/太田鴻村

たまゆらの郵便受を蛾はたてり/下村槐太

つまみたるだけ白蛾の白奪ふ/加倉井秋を

のぼる蛾に立山のみの夜空あり/岡田貞峰

はばたく蛾の銀粉を紗に微光の町/桂信子

ひたと青蛾暁雲動きそめにけり/福田蓼汀

びろうどの翅して蛾は草を出づ/松瀬青々

ほそ~と眉をふるふや繭出し蛾/桜井土音

まとひつく火蛾や流言とは承知/柴田奈美

めぐる蛾も花魁草も暮れにけり/西岡荘人

めざめては蛾の闇染むる莨の火/西島麥南

よべの火蛾浮ぶ朝湯に身を浸す/浅野右橘

ガラス窓に蛾の眼爛々と夜の秋/佐野良太

ナイターの万燭逃れきれざる蛾/本田青棗

ワイキキの黒き夜空の火取虫/深見けん二

一匹の蛾にこだはりの灯を点す/石塚友二

一燈に執して果つる火蛾なるべし/樋笠文

一蛾だに許さず通夜の刻更くる/岸風三樓

下闇や大いなる蛾の幹うつり/大橋櫻坡子

二の腕の若さ真白き蛾を殺す/稲垣きくの