俳句例:101句目~
風死せる画廊かつかつ登山靴/宮坂静生
桶の水のんで踏みだす登山馬/下田きぬ
駅に列登山者足をもてあます/岡本信男
鳥の羽根刺し完璧の登山帽/ふけとしこ
ケルンには石が殺到して残る/平畑静塔
ケルン灼け足奪はるる地獄谷/河野南畦
ケルン経て風届くなり車百合/高澤良一
山登り憩へと云へば憩ひもし/高浜虚子
月よしと誌して登山日記閉づ/福田蓼汀
登山隊川を漕ぎつつすれ違ふ/岡田日郎
快晴や癒えし証にケルン積み/影島智子
時かけて風の第三ケルンまで/高澤良一
松虫草ケルンに走る雲の影/永井由紀子
流星に夜は肩落すケルンあり/岡田貞峰
火の山登る翁褐色の犬を連れ/金子兜太
朝蝉に膝締めて負ふ登山の荷/太田蓁樹
客乗せて素直になりし登山馬/三甲野一魂
富士登山うしろに迫る馬の息/黒坂紫陽子
徹夜登山せし若者に吾もまじる/右城暮石
追ひ越して音のこしゆく登山靴/奈良文夫
俳句例:121句目~
道幅のせまき登山路しかと続く/右城暮石
銀河懸け富士に流るる登山の灯/橋本榮治
松虫草登山カードに年齢記し/伊藤いと子
濃くあまきみどり滴る登山口/柴田白葉女
炉語りに思ひ立ちたる登山かな/野村泊月
犬がまづ迎へに来たる登山宿/常盤しづ子
登山して傷めし脚を炉ほとりヘ/野村泊月
登山の荷と別に女らリンゴ持つ/津田清子
登山バス著きたるらしき人通り/半田朝月
登山リフト掌中すこし鉄くさし/辻美奈子
登山口それぬ鳥居をくぐるより/田村了咲
登山小屋地獄谷より湯を引きて/渡会昌広
登山小屋男くさき灯ともしけり/長沼紫紅
登山杖かの日の土をのごはずに/栗生純夫
登山杖どれも突き減りたるを借る/森田峠
登山杖御師の宿より突き出づる/勝俣泰享
登山の荷松本駅をせばめけり/白岩てい子
鯉に落つ水を見てゐる登山前/神尾久美子
登山道なか~高くなつて来ず/阿波野青畝
わが影の外に月下のケルン立つ/岡田貞峰
俳句例:141句目~
登山道川へ消え入りまたつゞく/右城暮石
登山靴あぶら塗らんと掴みをり/河野南畦
鍵を持つ禰宜のあとより登山客/野村泊月
登山靴穿きて歩幅の決りけり/後藤比奈夫
天上にちかき淋しさケルン積む/仙田洋子
山上に雲突き上げてケルン立つ/寺岡捷子
花過ぎしゆすらや茱萸や登山道/山口誓子
まだ登山道とはいへず岩桔梗/片山由美子
山登るリュックの林檎背に当る/桜井博道
みそはぎやバケツで洗ふ登山靴/皆川盤水
よな汚れせる人に混み登山茶屋/宇川紫鳥
荷の雹を払ひて発てり登山隊/望月たかし
松虫草ケルンにわかれの唄残し/青山和子
マンシヨンの建ちて登山の道変る/林照江
初登山神と飲み干す缶ジユース/吉原文音
十年振りに履く登山靴巨塊めく/奈良文夫
爽やかやケルンにつどふ風の音/飯村弘海
嘶くといふことのなし登山馬/片山由美子
登山馬よろけついでに歩き出す/遠藤若狭男
岩灼くるにほひに耐へて登山綱負ふ/辰之助
俳句例:161句目~
登山者の荷より重くてダム作りに/津田清子
登山着原色ホームの燕翔けどほし/宮坂静生
居るはずの木椅子に登山帽子かな/細井啓司
白桃を登山ナイフで削ぎて食ぶ/栗田やすし
大杉を過ぐれば登山道となる/谷口/かなみ
雨あがるまでのにぎはひ登山小屋/阿部子峡
三千メートルの風が攫ひし登山帽/松尾隆信
はちきれむばかりに詰めて登山の荷/長田等
雨にきし登山宿月となりにけり/金尾梅の門
足垂らし涼みゐるなりケルンの端/高澤良一
おぼろ夜を斜めに登山電車かな/今井杏太郎
登山衆が桃がトマトが濡れて着く/林原耒井
雁渡るケルンに小石積み足せば/戸口千恵子
登山提灯捨てぬ白樺明けてあり/金尾梅の門
雪谿の夕日まぶたに背の登山綱/石橋辰之助
ケルンの辺蜻蛉憩へばすぐせせる/宮坂静生
兄を知る人まだ居りぬケルン積む/三浦忠雄
ケルン積む手にひびきくる山の音/石原八束
登山綱干す我を雷鳥おそれざる/石橋辰之助
登山道みえゐてあはれ絶頂まで/稲垣きくの
俳句例:181句目~
登山バス出づることなき雲に入る/山口誓子
登山道次第ほそりに暁けそむる/鈴鹿野風呂
四方より霧ぶつつかるケルンかな/下村梅子
地獄谷ここにもケルン積まれあり/塩川雄三
夕焼の天へ段なしケルン立つ/とよなが水木
登山の荷羽摶ちて過ぎし夜鷹あり/渡辺立男
番犬が坐してまどゐの登山小屋/岩瀬/木蘭
熔岩道にささくれそめし登山杖/山崎新多浪
月明の富士にまばたく登山の灯/福田甲子雄
山葵田を一望にしてケルン立つ/松本サキ子
登山者のタテヤマリンドウ色の帽/高澤良一
登山靴の紐に序破急みえにけり/田川飛旅子
岩肌を叡智の登山綱灼け垂るゝ/石橋辰之助
うしろより霧を噴きゐる登山小屋/深見けん二
登山バス霧がかかればゆるやかに/松本たかし
ケルン大聖堂大島紬を着て呆れている/峠素子
ケルンよりケルンヘ金の虻つれる/岩淵喜代子
霧ふかき積石に触るゝさびしさよ/石橋辰之助
登山杖雉子吊る茶屋に買ひにけり/石島雉子郎
峡中陽さすを一瞥す登山日短き/安斎櫻カイ子