俳句例:201句目～
郵便の来る日来ない日秋深む/武藤善尚
秋深み朝夕山を母として/阿部みどり女
秋深き下駄幅決めし人を愛す/永田耕衣
秋深く遊ぶ銭なき学徒かな/高橋淡路女
雨降りて秋深きかな手を眺む/日野草城
子が娶り旅立ちしあと秋深む/相馬遷子
首位打者へ残り試合の秋深し/大島民郎
深秋の隠沼古鏡のごとくあり/福田蓼汀
秋深きもののうちなる枕かな/矢田喜堂
嫁ぐ子に遣る何も無し秋深む/相馬遷子
秋深し神馬も恋ふる五十鈴川/石井露月
女背に負へば秋深き小流れよ/清水基吉
鳶稀に鳩は常なり秋深む/阿部みどり女
黄をもつて一望を刷き秋深し/富安風生
龍にさせるものの意に秋深し/富安風生
深秋の悟りきれない旅をする/藤木清子
秋深し足あげて虫流れゆき/小檜山繁子
秋深し跼みて土に近づけり/大岳水一路
遺影秋深し自刃供へまつり/佐野青陽人
秋深し逢ひ得し小面の雪と花/福田蓼汀
俳句例:221句目～
秋深し道まつすぐに森に入る/岩見静々
秋深き旅となりつゝ林檎食ふ/高濱年尾
秋深う阿波浄瑠璃の首がくり/筑紫磐井
深秋の猫をあつめて病んでゐる/柿本多映
深秋のはんなりまとふ草木染/つじ加代子
手向けの句ふところに秋深き旅/林三枝子
秋深む駱駝はまぶたばかりなり/柿本多映
ひとつぶの涙見てより秋深し/古賀まり子
秋闌けし奈良に泊つるも句の縁/高木晴子
深秋や飼はれて熊の立ち歩き/三田きえ子
栗鼠渡る秋深き樹を皆仰ぎ/阿部みどり女
眼を閉ぢて即ち眠る秋深し/野見山ひふみ
秋深まる以外は何にも驚かず/加倉井秋を
秋深く歯にしむ柿と思へども/水原秋櫻子
子規庵の見取り図なるか秋深し/高澤良一
声あげて泣くばかり秋深みたり/高濱年尾
秋深き小鳥を飼ひて住みつきぬ/太田鴻村
秋深き天間の簀の子に躓きて/坂本山秀朗
神仏の我家にひとり秋深し/阿部みどり女
椅子を立つ音にも書庫の秋深し/山本歩禅
俳句例:241句目～
高き嶺の秋さぶ景を惜しみ去る/高木晴子
秋深む何をなしても手の汚れ/鈴木六林男
秋深みひとりふたりと逃亡す/鈴木六林男
秋深し何処に連れてゆかれるか/平井照敏
秋深き吾にのみ寄する湖の波/加倉井秋を
秋深し右手なき左手置く膝に/文挟夫佐恵
深秋に水掻きあるは恐ろしき/増田まさみ
獣園のホモ/サピエンス秋深む/高澤晶子
火の島の火山灰降る音に秋深し/高濱年尾
秋深き石やひとごゑあたたかし/加藤楸邨
秋深し梅酒を満たす江戸切子/内山由美子
秋深む眉を描かねば祖母に似て/柏岡恵子
深秋や身にふるゝもの皆いのち/原コウ子
深秋や旅の終りのカフェオーレ/指澤紀子
秋深し獅子より匂ふナフタリン/吉原文音
秋深く痩せたる川の鵜を見せず/石川桂郎
深秋の背を正しつつひとり喰む/佐野美智
秋深し胸のボタンはくるみの実/有馬朗人
きたきつね見しより浜の秋深む/小井沢芹水
どことなくなんとなくゐて秋深し/行方克巳
俳句例:261句目～
なつかしきものかげ戻り秋深し/佐藤美恵子
ひとりにもたつきの音や秋深き/渡邊千枝子
ふるさとの秋深し古きいなむら/川島彷徨子
剪り剪れど咲きつぐダリヤ秋深み/中尾白雨
夢をたのしむ夜々の眠りの秋深く/臼田亜浪
秋深しなにか幸ある今日あした/池内友次郎
秋深しふとんを雲のごとく被る/北原志満子
病むといふ言葉忘れむ秋深し/阿部みどり女
珠数まろし天地まろし秋深く/長谷川かな女
漁樵の灯寄り合うて秋深みけり/鷲谷七菜子
秋深く子なきは子の死よりまさる/川村紫陽
秋深きかげともなひて部屋にあり/高濱年尾
秋深し玉をくだいて紅を見ん/長谷川零余子
秋深む銀のフオークに血がついて/藤岡筑邨
秋深きものにはるかな瀧ひとつ/大木あまり
高西風に秋闌けぬれば鳴る瀬かな/飯田蛇笏
深秋の身に纏ふもの濃きいろに/来栖かをる
秋深しすぐ目のまへの山の襞/久保田万太郎
秋深し身をつらぬきて滝こだま/鷲谷七菜子
秋深き木をゆりをるはすだまかな/太田鴻村
俳句例:281句目～
どこへ行くにもかむる編笠秋深む/秋元不死男
みるものゝひとつひとつに秋深く/高橋淡路女
よき師匠よき弟子かくて秋深き/久保田万太郎
秋深しはじめて逢ひし人ながら/久保田万太郎
秋深き清水つぶやきつぶやき湧く/加藤知世子
よきひとの妻をめとりぬ秋闌けて/鈴木しづ子
閑居秋深うして猿に小鍋を洗はしむ/巌谷小波
れんげワインどくだみワイン秋深まりぬ/栗林千津
