俳句例:201句目~
端居して眠つてをるに若くはなし/鈴木花蓑
端居してみなとはなれてゐる心/成瀬正とし
端居してみな遠のけるものばかり/高澤良一
母刀自のあるかなきかに端居かな/下村梅子
しばらくのこゝの端居を許されよ/高野素十
端居してものも思はずゐたりけり/大橋敦子
端居して憂きこと忘れゐるをふと/上野章子
端居してをちかたびとと語りをり/西村和子
なか~に沖は暮れざる端居かな/大野きゆう
なまじかの孤高うとまし夕端居/猿橋統流子
端居してをりて夫婦の距離にゐる/兜木総一
端居して闇を眺めてをりにけり/石井とし夫
ひとり居のどこに坐るも端居めき/林めぐみ
生身魂こゝろしづかに端居かな/阿波野青畝
みちのくは端居といふも夏炉辺に/星野立子
みどり子の股くびれたる端居かな/相馬遷子
めつむりて一日を逝かす端居かな/村越化石
われをわがみつめゐるなり夕端居/木村蕪城
カチユーシヤも一番星も端居かな/西本一都
セル軽き端居に著莪のみどりあり/森川暁水
俳句例:221句目~
端居して仏となる日待つごとし/鈴木真砂女
端居して祖母は姿勢を崩さざる/稲畑廣太郎
湯上りのシャボン匂はせ端居に来/中野浩村
時計あり端居の人ののびし手に/池内友次郎
端居せる家のここより木曾路なる/木村蕪城
蜘蛛の囲も端居の母も夕それぞれ/茂里正治
娘を呼べば猫が来りし端居かな/五十嵐播水
後に飽く蚊にもなぐさむ端居かな/上島鬼貫
妻といふかなしきものゝ端居かな/田村寿子
しみじみと端居の端といふところ/鷹羽狩行
端居には勿体なかりし法語とも/浅井青陽子
夕端居ほどよき距離とおもひけり/小川江実
端居してうかと引き受く頼みごと/吉年虹二
端居よりゐこぼれてをり芝に座し/後藤夜半
酔かくす子と相見ざるため端居/篠田悌二郎
端居更け父のひとりの煙草の火/冨田みのる
端居しておもひ巡らす眼となれり/高澤良一
端居してかなしきことを妻は言ふ/村山古郷
昨日虚子今日はモームと端居して/嶋田一歩
年寄の知恵出しつくし端居せり/能村登四郎
俳句例:241句目~
鯉跳ねて端居の思ひ断たれけり/吉野トシ子
あめ去れば月の端居となりにけり/鈴木しづ子
端居してすぐに馴染むやおないどし/星野立子
居るごとく居らざるごとく端居して/手塚美佐
端居して読みがたし戦場のたよりなり/及川貞
おふくろの国に来てゐる端居かな/上田五千石
端居せるほとりみづみづしく故人/赤松ケイ子
くらがりの合歓を知りゐる端居かな/石田波郷
さふらん酒飲むに似合ひの端居かな/影島智子
さりげなくゐてもの思ふ端居かな/高橋淡路女
端居して老いの語りの哭いてをり/櫛原希伊子
行末のことおもはるゝ端居かな/久保田万太郎
たまゆらの端居の身にも闇せまる/鷲谷七菜子
つくばひのよく濡れてをる端居かな/高浜虚子
どうしても墓に目がゆく端居かな/吉本伊智朗
訪ねきてはいつも端居をして人妻/川島彷徨子
なるやうになれとはだけて端居かな/高澤良一
端居して老骨といふを撫でやりぬ/猿橋統流子
夕端居よばれて立ちし一人かな/久保田万太郎
まどろみの覚めてかなしき端居なる/林原耒井
俳句例:261句目~
あきらめの溜息もらし端居せる/阿部みどり女
一生を悔いてせんなき端居かな/久保田万太郎
端居してつくり言葉のこゝになし/米沢吾亦紅
五月雨の端居古き平家ヲうなりけり/服部嵐雪
端居して濁世なかなかおもしろや/阿波野青畝
端居してわれ等忌にある者ばかり/山口波津女
しぐるるとなきに茶はなき端居かな/室生犀星
端居して帰りゆき処のなきごとし/岩淵喜代子
端居してあの世へ声をかけてをり/百瀬ひろし
灯移せば端居の影も移りけり/五十崎古郷句集
端居して暮れゆく湖をまのあたり/片山由美子
あそこからかう来るかぜと端居せり/高澤良一
端居してこのときめきをもてあます/小柴全代
母の衣なりし寐巻に端居灯蛾つけて/中戸川朝人
端居人に芋虫ころころして来る児/長谷川かな女
端居人見あげて鴛鴦の通りけり/吉武月二郎句集
はまゆふのかたわらに咲く端居かな/楠目橙黄子
さしかけの葭簀うれしき端居かな/久保田万太郎
かるわざのはやしきこゆる端居かな/久保田万太郎
池辺来るいたちの音の今宵も端居はなるる/喜谷六花