季語/日傘(ひがさ)を使った俳句

俳句例:101句目~

風景は松風ばかり日傘かな/鳴戸奈菜

稚子すでに上りし鉾の日傘/後藤夜半

日傘売場次第に沈む螺旋階/佐野美智

顔せや日傘の中の日の匂ひ/石井露月

だんだんに日傘大きく神楽坂/小島健

宇治木幡茶商人の日傘かな/中川四明

陸橋に日傘が咲いて正午なる/岡本眸

寺町を遠ざかり行く秋日傘/近藤勇夫

日傘廻して万葉の海を見に/小杉優子

陶榻に憩ふ一人は日傘さし/中村芳子

秋日傘大阪嫌いを滔々と/宇多喜代子

原作に日傘の色はなかりけり/森谷彰

禅林へ日傘さしたる尼戻る/高濱年尾

砂日傘黄色の女よこたはる/中島斌男

浜日傘幾日は立ちし夏終る/石塚友二

山が乗る日傘の重し奥吉野/浦野芳南

向ふ岸舟早着きて日傘行/室積波那女

妻の嘘妻の日傘の中で聴く/市川愁子

浜日傘影はみ出して一家族/若杉光江

砂日傘幸せさうな色ばかり/鈴木昌江

俳句例:121句目~

ふり向きし尼の日傘も竹の影/岸田稚

日傘して琉球人の妻ならん/寺田寅彦

門を出て日傘ひろげて色生れ/上村占

唐寺を出る真白な日傘かな/有馬朗人

長堤や蒲に日移りまた日傘/清原枴童

峡ふかく日傘曲折してくだる/桂信子

浅草はもの匂ふ街秋日傘/中島あきら

銀行に強き妻なり日傘さし/高澤良一

遠景に川を離るる日傘あり/鈴木鷹夫

坂の上日傘沈んでゆきにけり/大串章

砂山に泳がぬ妹の日傘見ゆ/日野草城

逢曳や女に日傘の影加はる/津田清子

川風や日傘をたゝみ渡し舟/山田三子

沓掛へ日傘降りゆく男郎花/巌谷小波

己恃む他なき日傘開きけり/亀田清子

日傘より余る半身疎ましき/出口善子

あつまれば子沢山かな砂日傘/赤坂静住

日傘の影うすく恋をしている/住宅顕信

あな白し塔を降りて来る日傘/鈴木鷹夫

日傘の影母に先んじ映り出づ/野澤節子

俳句例:141句目~

日傘また遠くあらはれ野の起伏/桂信子

波と彼みつめる位置の砂日傘/木村朱花

日傘洗うめぐりくる夏疑わず/柏岡恵子

日傘閉づ大山門に侏儒となり/皆吉爽雨

日傘開く音はつきりと別れ哉/松浦為王

昂然と仏蘭西日傘ひらきけり/櫂未知子

朝曇海岸日傘ひとつひらく/相生垣瓜人

木洩れ日の珠と輝やく秋日傘/山内遊糸

桟橋に日傘の影をもらひけり/石黒泊舟

欄干に胸あづけゐる日傘かな/西村和子

こぼるゝや日傘の上の椎の花/正岡子規

此日傘あづけ申すぞけふ一日/尾崎紅葉

死後ならず遠く無数の日傘ゆく/徳弘純

母と子の影一つにし日傘行く/松尾絹代

母ひとり大河を渡る日傘かな/老川敏彦

気位のいまに日傘を高くさす/有賀辰見

水辺ゆく日傘の思ひ深げなる/山田弘子

江の島の外ゆく舟の日傘かな/鈴木花蓑

汽車を出て直に日傘の野路哉/巌谷小波

河骨やしんと日傘を透す日に/中村汀女

俳句例:161句目~

波音や抱けばつめたき秋日傘/井上弘美

つぼめある日傘はみ出し臙脂濃し/篠原

浜日傘横目に投函したるのみ/石塚友二

どつと着く都会の日傘美山村/山田弘子

涼風忌しばしは墓に日傘かけ/渡辺恭子

ねむさうな足裏揃へり浜日傘/仙田洋子

清水の阪のぼり行く日傘かな/正岡子規

渡船降り島教会へ日傘さし/小原菁々子

熔岩原や水母の如く日傘ゆく/巌谷小波

狐舎を見る朱の日傘を傾けつ/石田波郷

玄室を出て人の世の日傘さす/有馬朗人

王宮の遺跡をあるく日傘かな/中矢伸子

珈琲の香にいまは飢ゆ浜日傘/横山白虹

生垣とすれすれに行く日傘哉/柳川春葉

ぶら下げし電話が遠し砂日傘/松浦敬親

由良の門や若き二人の砂日傘/廣崎龍哉

また一つ日傘が消ゆる裏千家/鈴木鷹夫

町を出てすぐに草原日傘さし/大島早苗

異人坂日傘に海のあふれおり/渕万寿子

病む夫をかばふ日傘を高くしぬ/岡本眸

俳句例:181句目~

病室の忘れ日傘も暮れにけり/斉藤史子

白き日傘の中を炎に乙女来る/鈴木鷹夫

白麻の日傘の陰にひそかにゐ/長谷川櫂

百段の宙より芙美子日傘振る/田中水桜

真直ぐにさす追悼の青日傘/鳥居美智子

砂日傘ひらき大きな影ひらく/福田花仙

砂日傘守りて母の遠まなざし/鈴木貞雄

砂日傘微動だに日の深さかな/末次雨城

砂日傘抜かれ真昼の穴のこる/大屋達治

砂日傘濡れきし男かくまへり/辻美奈子

磯に立つ秋の日傘の一つかな/川口利夫

アリバイの足跡消され砂日傘/柴田奈美

秋日傘さして見にゆく鯛の浦/山田春生

秋日傘そこはサントリー美術館/岸田稚

ソ連船待つ影日傘はみ出せる/河野南畦

デモ隊の前を横切る日傘かな/斎藤英樹

秋日傘まはして独り暮しかな/関戸靖子

土佐に入る日傘のまはりみな緑/桂信子

秋日傘別れの余情折りたたむ/中村恭子

秋日傘湖北の波は引くばかり/那須淳男