俳句例:201句目～
日向ぼこ子に蟷螂とあだ名され/佐野青陽人
玻璃の外の風を見てゐる日向ぼこ/高濱年尾
先づ風が頬を撫で来し日向ぼこ/稲畑広太郎
人を恋ふ日にめぐり逢ひ日向ぼこ/後藤夜半
日向ぼこ襁褓はづせし機嫌かな/大野伊都子
疾走するトラックの人ら日向ぼこ/渡辺水巴
日向ぼこ見えざるものに己れの顔/西村和子
ちかよりて老婦したしく日向ぼこ/飯田蛇笏
わが余生少したいくつ日向ぼこ/稲田/桃村
山の色けふむらさきや日向ぼこ/軽部烏帽子
たましひの出で入りしては日向ぼこ/森澄雄
日向ぼこ地に倦みし面上げにけり/中島月笠
世の中を置いてけぼりの日向ぼこ/新明紫明
子とありて燃えつるる耳日向ぼこ/皆吉爽雨
眼の前に脱かれし下駄や日向ぼこ/飯田蛇笏
一標札に混み合ふ家族名日向ぼこ/香西照雄
日向ぼこ何やら心せかれゐる/阿部みどり女
日向ぼこ影のいちにん抜けいたり/鈴木慶子
ここちよき死と隣りあひ日向ぼこ/鷹羽狩行
デスマスクある壁を背に日向ぼこ/石原八束
俳句例:221句目～
ふるさとの朝日にあらで日向ぼこ/永田耕衣
笛吹いてむかしむかしの日向ぼこ/中川宗淵
むつまじき老の夫婦や日向ぼこ/大橋櫻坡子
撫で下す顔の荒れゐる日向ぼこ/松本たかし
みどり子の足先ぴんと日向ぼこ/今井千鶴子
綿入れの背のふつくらと日向ぼこ/田中冬二
みぞおちに日の匂ひゐる日向ぼこ/浜渦美好
折りとりし茎のうつろや日向ぼこ/中島月笠
まなうらに駱駝の現るる日向ぼこ/高澤良一
胎内にゐるがごとくに日向ぼこ/中野貴美子
いつの間にゐなくなりしや日向ぼこ/原希伊子
いのち一つ守りあぐねて日向ぼこ/久保より江
おもかげのまなこ細さよ日向ぼこ/吉岡禅寺洞
かなしみのほのと温くもる日向ぼこ/吉屋信子
くるめきは日にわれにあり日向ぼこ/皆吉爽雨
木賊の日遠くしざりぬ日向ぼこ/阿部みどり女
生きてゐることを忘れて日向ぼこ/水谷仁志子
ひとの釣る浮子見て旅の日向ぼこ/山口いさを
日向ぼこ呼ばれて去ればそれきりに/中村汀女
ふところに手紙かくして日向ぼこ/鈴木真砂女
俳句例:241句目～
風邪気味の働くいやな日向ぼこ/阿部みどり女
さびしさをあたためてをり日向ぼこ/山崎房子
犬がものを言つて来さうな日向ぼこ/京極杞陽
世をわすれ世に忘れられ日向ぼこ/松尾いはほ
日に酔ふといふことのあり日向ぼこ/松尾白汀
この庭のながめもあきぬ日向ぼこ/山口波津女
日向ぼこ父の血母の血ここに睦め/中村草田男
砂よけのかげにも一人日向ぼこ/阿部みどり女
フェミニズム投げ出し二人日向ぼこ/山岸竜治
けふの日の燃え極まりし日向ぼこ/松本たかし
身の枷をはづしきれざる日向ぼこ/吉田/節子
よく聞こゆ耳を日に向け日向ぼこ/山口いさを
なにもかも無になるための日向ぼこ/本郷和子
空気銃向ける樹を見て日向ぼこ/阿部みどり女
我が十指なにを成し得む日向ぼこ/藤井寿江子
目つむりて無欲に似たり日向ぼこ/上西左兌子
ふるさとにたよりおこたり日向ぼこ/中村汀女
枯葉なんぞの匂ひわが身に日向ぼこ/山上樹実雄
日向ぼこ日向がいやになりにけり/久保田万太郎
日向ぼこ身のうちそとに母の居て/長谷川せつ子
俳句例:261句目～
眼つむれば駆けりゐる血や日向ぼこ/松本たかし
ひとり抱けばひとり背にくる日向ぼこ/毛塚静枝
まなうらは火の海となる日向ぼこ/阿部みどり女
過ぎしこと言はず聞かざる日向ぼこ/今井つる女
鬼のこころに今とほくゐる日向ぼこ/つじ加代子
喧嘩の処置かんがへてひとり日向ぼこ/川島彷徨子
日向ぼこ刻のくぼみに居るごとし/いのうえかつこ
日向ぼっこ日向がいやになりにけり/久保田万太郎
吾子とゐて吾子をわするゝ日向ぼこ/五十崎古郷句集
「用なしだけんど死ねれんもんね」日向ぼこ/熊谷愛子
見のかぎり煙草むらさき日向ぼこ/『定本石橋秀野句文集』
