俳句例:101句目～
ある日ふと沈丁の香の庭となる/今井つる女
あかつきの丁字は白き花なりし/佐野青陽人
沈丁や風の吹く日は香を失す/阿部みどり女
丁字きつし晶子の歌に喘ぐ夜は/稲垣きくの
丁字の鉢湯の退屈にいびつなり/廣江八重櫻
沈丁の香になれてゐて楽譜書く/池内友次郎
古書の香に劣る沈丁にほひそむ/相生垣瓜人
沈丁の花をじろりと見て過ぐる/波多野爽波
沈丁の香のあと何ごとも起らず/加倉井秋を
沈丁や夜でなければ逢へぬひと/五所平之助
肌冷えて沈丁の香も嫌になりぬ/山田みづえ
生きて再び沈丁の香にむせび合ふ/寺岡情雨
莟立てて沈丁は香を揃へるらし/猿橋統流子
沈丁にはげしく降りて降り足りぬ/中村汀女
薬玉やことに丁字のおぼろめき/長谷川春草
疲れゐて沈丁の香をすぐまとふ/加倉井秋を
沈丁の香の輪くづるる夜風立つ/藤原たかを
家にゐるゆゑ沈丁の香をまとふ/加倉井秋を
辞してなほ沈丁の香に歩きをり/米沢吾亦紅
部屋空ろ沈丁の香のとほり抜け/池内友次郎
俳句例:121句目～
沈丁咲きふだん着の縞鮮らしや/北原志満子
夜の留守居たぬし沈丁にほひくる/金尾梅の門
沈丁の香を吐きつくし在りしかな/松本たかし
沈丁の四五花はじけてひらきけり/中村草田男
沈丁の香にふれつゝや掃いてをり/中川きみ子
更けて戻りし猫沈丁の香に染める/相生垣瓜人
沈丁の香のたかぶる日子に逢ひに/成瀬桜桃子
あまだれの長く丁字に落ちつづく/阿波野青畝
こちら向く丁字の風になやましき/阿波野青畝
丁字咲き風やはらかく吹くといふに/高木晴子
沈丁に来る日来る日も風が吹く/阿部みどり女
沈丁の香は路地ぬけること知らず/山本いさ夫
沈丁の花も過ぎたる遅日かな/五十崎古郷句集
ぬかあめにぬるゝ丁字の香なりけり/久保田万太郎
沈丁のまだ匂はねど百余り花きざしきて一月は経つ/中村純一
