季語/祭(まつり)を使った俳句

俳句例:201句目~

献灯に触れ飛ぶ山車の飾花/伊藤柏翠

廃鉱の山のアカシア祭かな/水野あき

豊年や神の逢瀬へ山車揃ひ/深澤厚子

電車徐行大津祭の山車の脇/大野鵠士

ただ着物きせられてをり宵祭/森澄雄

年恰好同じ子連れ立ち宵祭/高澤良一

水舟に雨ほつほつと宵祭/杉戸由紀子

洗ひ米笊に干しあり宵祭/猪俣千代子

鳥越の路地の奥まで祭かな/水原春郎

老の手に酒わなわなと宵祭/草間時彦

朝顔の双葉揃ひし祭かな/鈴木真砂女

宇陀いまも昔の色に祭の灯/茂里正治

峰寺の祭の灯ひとつらね/柴田白葉女

川幅をはみ出す天満祭の灯/本郷桂子

豊なる堆肥にゆるゝ祭の灯/前田普羅

灯して闇なつかしき祭かな/増田龍雨

牛飼のかんばせ稚き祭かな/後藤夜半

獅子頭連ねかざして祭かな/高浜年尾

疳性に雨降り来たる祭かな/石塚友二

磧にも人数の見えて祭かな/尾崎迷堂

俳句例:221句目~

老禰宜の太鼓打居る祭かな/高浜虚子

蝙蝠の夕べとなりし祭かな/増田龍雨

見世物に蛇来て雨の祭かな/田村了咲

道をしへ翔ちし糺の祭かな/後藤夜半

遠山の雲起つてくる祭かな/木村敏男

遷座式ありての上の祭かな/野村喜舟

鉱炉の火夜空を焦す祭かな/田村了咲

門内を衛士の覗ける祭かな/野村泊月

門川の水ゆたかなる祭かな/高橋睦郎

隣村の疲弊眼に見る祭かな/島田青峰

駒下駄が御堂筋ゆく祭かな/山田弘子

鮓売も人におさるゝ祭かな/横井也有

鯖ずしのつめたかりける祭かな/草城

いくさなき人生が来て夏祭/橋本夢道

まはだかの男がよけれ夏祭/筑紫磐井

わが部屋は四階地には夏祭/斉藤夏風

叱られし子の眼に紅き夏祭/齋藤愼爾

夏祭の中男根の馬ゆけり/榎本冬一郎

夜と昼といづれが故郷夏祭/長谷川双

浦の子のこんなにゐしや夏祭/上暮潮

俳句例:241句目~

眼帯の方の目でみる夏祭/宇多喜代子

繭買のはりこむ寄附や夏祭/藤原如水

老友の歯が抜けし口夏祭/百合山羽公

読まず書かぬ月日俄に夏祭/野澤節子

近道をくるは地の子ら夏祭/中村勝臣

開けはなつ閾の艶の夏祭/鷲谷七菜子

鴨居より木槍をはづす夏祭/長谷川双

四五人で祭囃子や能登ふかく/飴山實

夜の刃物うつむき祭囃子過ぐ/桂信子

猫が爪研ぎゐて祭囃子かな/細川加賀

病院の壁に囚はれ祭囃子/橋本多佳子

雨だれに向ひて祭囃子かな/石田勝彦

鮎食みて祭囃子に心急く/伊藤いと子

いち早く風に乗りけり祭笛/野呂浩史

ひとりゐに銀漢たわむ祭笛/相馬遷子

アパートに水の乏しや祭笛/藤田湘子

二代目は小ぶし嫌ひて祭笛/倉橋羊村

何もかも光りて雨の祭笛/町田しげき

奥四万の月にいつまで祭笛/前田普羅

山の夜は淋しと吹ける祭笛/山内山彦

俳句例:261句目~

帯巻くとからだ廻しぬ祭笛/鈴木鷹夫

戦盲の吹けばかなしき祭笛/吉屋信子

柿の木の夜空をあるく祭笛/桜井博道

森あをくふかくて春の祭笛/木下夕爾

父の忌の読経に混じる祭笛/磯崎美枝

祭太鼓打ちて男の盛り過ぐ/鈴木貞雄

眉はねて今日の馬追ひ祭笛/細谷源二

祭笛上手は風となりにけり/武田和郎

祭笛主客稲田を巡りをり/松倉ゆずる

祭笛四万のさぎりに人遊ぶ/前田普羅

祭笛情におぼれしこと多し/岩田昌寿

祭笛木目のしるき御堂かな/服部茂俊

あしたより撒水車駆け祭かな/岸風三楼

舞殿の裏にて祭笛町より/長谷川かな女

水車への水ゆたかなる祭かな/田村了咲

かたくまの児の鉢巻も祭かな/野村泊月

濃き浴衣きて夜祭の灯のなかに/桂信子

かはりなき小さき町の祭かな/小野茂川

この村に気配の見えぬ祭かな/柿本多映

こんなのは雨に入らぬ祭かな/高澤良一

俳句例:281句目~

海に入る荒御輿見て別るゝや/萩原麦草

草鞋紐足にくひ込む荒御輿/高橋恵美子

祭笛幾夜きこへて今宵なし/渡邊千枝子

湖の国の山車は扇に招き曳く/橋本鶏二

送り火や海へなだれる大御輿/田口一穂

なつかしき肉桂の味の祭かな/野村喜舟

野分後の松毬まろぶ御輿寄/下村ひろし

ひめ糊をこてと買ひ来し祭かな/龍岡晋

ふるさとの波音高き祭かな/鈴木真砂女

鍵穴の大きく月の御輿蔵/松岡ひでたか

みちをしへ翔ちし糺の祭かな/後藤夜半

陸つ物持ち寄り瑞饋御輿組む/茨木和生

すぐ途切れ山国に会ふ夏祭/加藤瑠璃子

やすらゐの膳椀朱き祭かな/曾根けい二

病める歯の方より祭囃子かな/細川加賀

値段立つ繭天皇の祭かな/菅原師竹句集

人去りて祭囃子の残りけり/佐々木六戈

加茂川の流れゆたかに祭かな/岸風三楼

屋根越しに山車の人形や桐の花/原月舟

山坂に山車がつまづく秋祭/百合山羽公