俳句例:101句目～
土瓶より濃き茶出でくる夏の果/桂信子
夏の果沖に雲めく佐渡といふ/野澤節子
夏名残り千曲一舟あることも/村越化石
夏果つ灯蛾の鱗粉を漲らし/篠田悌二郎
夏果てし空瓶惨と積まれたる/右城暮石
夏果ての瀬戸の岬や遊女の碑/木村速子
夏果や人の句活字大きく見え/村越化石
海の水立たせてコップ夏の果/二村典子
夏果つる峠や茶碗伏せし棚/長谷川かな女
にほやかに昆虫とびゐ夏惜む/吉岡禅寺洞
樟脳の気落ちして夏逝けるなり/高澤良一
椎大樹ゆふべや吹かれ夏過ぎぬ/加畑吉男
ジャムに封ピクルスに封夏終る/三宅絹子
ダイエットに縁遠き身や夏の果/荒井恒友
畳拭く躬を曲げのばし夏果つる/菖蒲あや
夏逝けり養痾の庭のひろやかに/飯田蛇笏
夏逝くや線香立ての灰ほぐし/藤田あけ烏
夏果つる冬青の灯に聴く通り雨/宮武寒々
未婚の夏過ぎぬ木馬の緋の手綱/友岡子郷
うたた寝の足折ることも夏の果/井沢正江
俳句例:121句目～
またといふ言葉頼みて夏果てぬ/谷口桂子
夏逝くや帽子に鳩目打ちの穴/藤田あけ烏
ポスターに髭のらくがき夏の果/飯島正人
共に棲む区切りの夏の果てにけり/芳賀啓
夏逝くやガラスの奥のわからぬ絵/桂信子
アルミ銭つまみ退けおく夏の果/高澤良一
めんどりの尻蹴つてああ夏の果/藤田湘子
夏果ての男は乳首のみ老いず/能村登四郎
夏行くか椅子古く星カシオペア/細見綾子
夏果てやはるかなものに土不踏/手塚美佐
高波のまだ夏果ての影伴れず/櫛原希伊子
夏惜しむ人/犬ひとつ波に乗り/宮津昭彦
喰ひしばる歯がまだ残り夏の果/目迫秩父
夏果の風乗せてゐるハンモック/山田弘子
夏果の髭また生えて来たりしよ/高澤良一
夏終るえいの煽りを硝子越し/小檜山繁子
ゆく夏を惜しむ思ひも少しあり/藤井智子
終着駅に酔客となり夏惜しむ/能村登四郎
師の墓前踏みしめて行く夏落葉/斉藤草水
夏惜しむ荒草の根のすさまじき/松村蒼石
俳句例:141句目～
紅蜀葵たたみて長き夏逝きぬ/池辺マツエ
孫膝にスナップショット夏の果/高澤良一
少年の追ひつめられし夏果つる/手島邦夫
行く夏の祖谷に二つのかづら橋/榎本善子
師の御声か目覚めて異国夏の果て/杉本寛
画家らつどい魚介むさぼり夏終る/三谷昭
きらめくにまかす氷河や夏の果/仙田洋子
思ひ切り捨てて悔いなし夏の果/高澤良一
一湾の弓なりに夏惜しみけり/片山由美子
にんげんは人に疲れて夏逝けり/津沢マサ子
若き日を断つ夏果ての青き画布/文挟夫佐恵
ダンボールたたんでしばり夏終る/菖蒲あや
チャップリン笑い犬哭き夏終わり/高澤晶子
フィヨルドの羊歯に夏逝く迅さかな/有働亨
夏果つるこころよ紺の絞り着て/稲垣きくの
ツンドラに夏果つる日ぞよろめける/有働亨
夏果てのひかりうするる水の上/野見山朱鳥
夏果てのよつてたかつて黒衣かな/内田美紗
いつか死のありて今日ある夏の果/佐藤希世
電線をはしる雨玉夏ゆく日/飛鳥田れい無公
俳句例:161句目～
病めばみなもの遠くなる夏の果/冨田みのる
葛垂れて峡いでぬ夏逝かむとす/馬場移公子
夏惜しむもののひとつに浜草履/能村登四郎
ながかりしけふの夕焼夏果つる/大橋櫻坡子
夏果や眼にありありとわが臥す日/大野林火
夜半忌にはつきり夏の果つるかな/黒川花鳩
夜景とは愁ひの灯かや夏の果て/鈴木真砂女
夏惜しみ今日も落暉の原よぎる/榎本冬一郎
ねぶた太鼓一打一打に夏果てる/八牧美喜子
宇崎竜童ブギウギナイト夏惜しむ/高澤良一
麦藁帽手にやはらかく夏果てぬ/山田みづえ
香きいてちからを得たる夏の果/猪俣千代子
夏終る甲斐路にかんばしき地酒/長谷川秋子
ごろ石の三つ四つを州に夏の果/酒井美知子
ゆく夏の鋪道をぬすみ草みのる/金尾梅の門
さきつげるとろゝあふひの夏惜む/吉岡禅寺洞
若夏過ぎるや青すじ揚羽群れなして/金子兜太
河馬の歯をひいふうみいよ夏終わる/加藤容子
胃カメラに突き当たりけり夏の果て/国しげ彦
病める娘におろおろつかへ夏果つる/草村素子
俳句例:181句目～
アパートも店も借りもの夏果つる/鈴木真砂女
寝ころびてけふといふなく夏逝かす/高澤良一
サーフィンのもんどりうつて夏の果/大山雅由
逝く夏や犬に戯れ居れば夜汽車過ぐ/宮武寒々
水は水洲は洲の夏の果つるかな/久保田万太郎
夏果てる「お水端」には異人の子/長谷川かな女
病み～て夏惜む日もなかりけり/五十崎古郷句集
突つ立つているものさびし夏の果て/清水みな子
逝く夏のプールにうかぶ水中メガネ/畠山あさみ
ポアされ本栖湖に沈めた人骨夏逝く/日下部正治
カオスカオスと鴉過ぎゆき夏過ぎゆき/八木三日女
自転車を漕ぐ子と父の夏果てて坂の上なるかなかなしぐれ/三枝昂之
真っ白き部屋はゆっくり夏果てぬティッシュの箱をひとつ残して/吉野裕之
水の裏よりかなかな鳴けるピアニシモ夏逝くときのうひとに告げにし/永田和宏
