俳句例:101句目～
山葵利きふつと生甲斐山の月/殿村莵絲子
山葵咲く懸崖づたひ瑠璃鳥一羽/橋本鶏二
山葵田を来し水ならむ匂ひけり/岡澤康司
沢水は春も澄みつつ山葵生ふ/松本たかし
山葵田に蝮の渡るしじまかな/瀧澤伊代次
こんこんと水に日の韻花わさび/藤本和子
山葵田のこのもかのもの水の音/鈴木貞雄
昏れて行く水音山葵田にのこる/島村茂雄
山葵見の遠く来て遠く帰るなり/溝口青男
山葵田のみどりをかこむ鉄条網/土井朝子
山葵田の通すはおのれだけの水/広瀬とし
音もなく葉わさび潜る水の暮れ/高澤良一
わさび田のまろ石寒の水ながれ/皆吉爽雨
わさび田の奥行き見せて鵜鳴く/藤岡筑邨
わさび田の小流れ夕日返しけり/高澤良一
わさび田の梭織るごとく水走り/田村木国
こん～と咳きて山葵の花は見ず/萩原麦草
わさび田の畦の沢蟹みづみづし/石井青歩
わさび田を出て冬麗の水となる/本宮鼎三
わさび田を素通る水の垣間見ゆ/高澤良一
俳句例:121句目～
天城路の五時は山影花わさび/秋元不死男
春もはや鳴る滝つ瀬の花わさび/石原八束
水音が胸を出てゆく花わさび/青柳志解樹
行く水に影もとどめぬ花わさび/渡辺恭子
癩者住みし山といふ山葵花咲いて/渡辺水巴
山葵田をはさみて山の眠りけり/八木林之介
山葵田を経めぐりし水さらに落つ/細見綾子
山葵田は奥嶺の梅雨にしたしめり/松村蒼石
山葵田を一望にしてケルン立つ/松本サキ子
ほろほろと山葵は花も辛かりし/小野田洋々
言葉少なに去る山葵田の花ざかり/渡辺水巴
二ン月の雪が山葵のみどりに降る/細見綾子
伊豆人のしたゝかくれし山葵かな/尾崎紅葉
夕餉まで山葵田めぐりせよと言ふ/川井玉枝
夜の膳の山葵の花をすこし噛み/能村登四郎
山葵の旬水入れ替わり立ち替わり/高澤良一
わさび田の水奏でゐるしじまかな/清水寥人
山葵の芽水ちよろちよろと喜ばし/川端茅舎
山葵沢みる間かき消す霧を怖る/稲垣きくの
山葵田のこの径が好ききりん草/城戸和喜子
俳句例:141句目～
四月馬鹿わさびが鼻に抜けてけり/斎藤四郎
山葵田のひかれるところ流れをり/江口竹亭
故郷とはひそかに泣かす花わさび/丸山佳子
山葵田の冷えは杭よりはじまれる/原田青児
栗枯葉反り切つて落つわさび田ヘ/細見綾子
水よりも日のつめたくて花わさび/宮坂静生
山葵田の水うろたへて澄みにけり/古舘曹人
返り咲きしたる山葵の花と見ゆ/青葉三角草
日もすがら山葵の根分け老人の日/沢木欣一
水ぬるむことなき山葵咲きにけり/青葉三角草
雪いくたび降りし山葵ぞ抜かれたる/渡辺水巴
山葵田の清きを守りて棲めるかな/松本たかし
行きし瑠璃鳥またかへしきぬ山葵澤/橋本鶏二
山葵田に風のさざなみ日のさざなみ/田中水桜
尋めくれば山葵咲くあり沢ひそか/松本たかし
わさび田をはすかひに馳す水ありぬ/高澤良一
わさび田に消ゆるさだめの雪が降る/藤岡筑邨
わさび田に散るほかなくてさくら散る/藤岡筑邨
山葵田のわさびを買ふや濡れ手より/稲垣きくの
雪残る山なだら山葵根分けをり/冬の土宮林菫哉
俳句例:161句目～
わさびとこころつくりつくりて伊豆雨夜/阿部完市
