季語/冬帽子(ふゆぼうし)を使った俳句

俳句例:101句目~

冬帽や画廊のほかは銀座見ず/皆吉爽雨

冬帽や鳥の水輪のかげさしぬ/原田種茅

冬帽を掴み脱ぐさへ現場癖/米沢吾亦紅

冬帽を頭より離さず農夫老ゆ/西村公鳳

冬帽子かむりて勝負つきにけり/大串章

冬帽子もて歓送の拍子とせり/岸風三楼

冬帽子一穂の炎のさびしさよ/友岡子郷

冬帽子冠りてよりの孤独なる/毛塚静枝

冬帽子取りて親子の祓はるる/中井啓子

冬帽子少女の如くかぶり来る/山本千春

冬帽子工事半ばの橋にたつ/山戸みえ子

冬帽子置くより一途なる話/加賀美子麓

一輛に冬帽ひとりしかをらず/能村研三

冬帽子脱ぎて無念の椅子叩く/浅井惇介

別れ路や虚実かたみに冬帽子/石塚友二

友二冬帽旅にしあれば諾ふも/清水基吉

同門のよしみも古りぬ冬帽子/細見綾子

哲学もけむりも吐かず冬帽子/市原光子

夕日の岳冬帽おのず脱ぎ仰ぐ/川村紫陽

小包みの隅は孫への冬帽子/落合よう子

俳句例:121句目~

冬帽子老年の海うねりやまず/中台春嶺

建前をとらずにずばり冬帽子/高澤良一

愛情のことば短かし冬帽子/柴田白葉女

手に執りて冬帽古りしこと歎ず/安住敦

手を振りて別る遙かな冬帽子/対馬康子

挙げし手を海鳥の知る冬帽子/依光陽子

掴みてはいくたびぞ措く冬帽子/斎藤玄

放蕩の翳りもすこし冬帽子/北見さとる

文弱の世をたのしまず冬帽子/石原舟月

水際まで来て折り返す冬帽子/野木桃花

病む人を旅へいざなふ冬帽子/岸梨花女

硝子戸に冬帽の顔うつしみる/田中冬二

福耳を包んでしまふ冬帽子/広畑美千代

耳隠るまで冬帽子かぶせやる/西村和子

船底蒸れ冬帽を顔に載せ眠る/金子兜太

冬帽を置くと自分の席になる/工藤克巳

芭蕉忌のまだ新しき冬帽子/岩淵喜代子

蜂を逐ふ冬帽を持ち合せをり/後藤夜半

解体の屋敷見てゐる冬帽子/斉藤美知子

護符受けて湖艇に戻る冬帽子/宮武寒々

俳句例:141句目~

雪晴れて我が冬帽の蒼さかな/飯田蛇笏

霜髪に冬帽載することもなし/石塚友二

がん封じ祈祷冬帽脱がずして/塩川雄三

くらがりに歳月を負ふ冬帽子/石原八束

心ここにあらぬ日深き冬帽子/市野沢弘子

妻の手に掴まれてわが冬帽子/金箱戈止夫

火酒の頬の赤くやけたり冬帽子/高浜虚子

冬帽をぬがるる緋裏ちらと見し/亀井糸游

無頓着な人で冬帽よく似合ふ/飯塚美智子

卓に投ぐとりとまらずと冬帽子/堀口星眠

冬帽子買ひ替へて黒まさりたる/綾部仁喜

投げテープ老の移民の冬帽に/五十嵐播水

古びたる冬帽のまま薔薇を嗅ぐ/細見綾子

父が来てくらがりへ置く冬帽子/星野昌彦

冬帽子目深に今日も町へ出づ/深見けん二

冬帽子ひざにおかれて所在なく/竹内節子

ボランティアガイド喋々冬帽子/高澤良一

冬帽に手をやる影も手をやりぬ/千葉栄子

冬帽子つひにしばらく春帽子/鳥居おさむ

昭和の銀座へ冬帽を取りにゆく/小原洋一

俳句例:161句目~

冬帽の額あたたかく着そめけり/皆吉爽雨

月高く思ふ冬帽まぶかにかぶり/太田鴻村

杉の秀に雲厚くなる冬帽子/鍵和田ゆう子

杣の子にうさぎの耳の冬帽子/菅原多つを

冬帽の赤きを買えば風囃す/野見山ひふみ

人の貧ふかく冬帽のあみだぐせ/細谷源二

冬帽の昂ぶりし目にかこまれつ/加藤楸邨

耳たぶの継子のやうに冬帽子/猪俣千代子

夜の駅に下りる一人や冬帽子/石島雉子郎

世界の翳怖づ冬帽子眼深にし/小松崎爽青

目をあぐるたびの浮雲冬帽子/鷲谷七菜子

つかみてはいくたびぞ措く冬帽子/斎藤玄

冬帽を着そめぬそこら散歩にも/皆吉爽雨

たとへば雲たとへば砂や冬帽子/栗林千津

冬帽を真深かにこの世遠ざける/中村明子

海までの道でとり出す冬帽子/鈴木うらら

けふを生く険しさ眉に冬帽子/篠田悌二郎

くらがりの杉山を去る冬帽子/柴田白葉女

遊ぶ子にはなれて母の冬帽子/片山由美子

剥落のみほとけに脱ぐ冬帽子/平野みよ子

俳句例:181句目~

いろいろに被りてみたる冬帽子/中まり子

冬帽を巷に消ゆるために被る/木村淳一郎

ある日彼どつと老い増す冬帽子/黒田杏子

まだ松の向かうに見えて毛糸帽/山西雅子

毛糸帽かたびつこなる耳隠す/文挟夫佐恵

冬帽子会へばいい顔してしまふ/小原澄江

カウンターに一個を置ける冬帽子/中村石秋

よこたはる煙草いつぽん冬帽子/秋元不死男

つきつめてゆけばひとつの冬帽子/大西泰世

冬帽を買ひてもさみし牡蠣食ひても/安住敦

冬帽子まつすぐな目でありにけり/石田郷子

懐疑たまると冬帽がすぐ眉かくす/細谷源二

冬帽をかぶれば祖父にあへるかな/平井照敏

冬帽眼深にゆすり直して予感消す/川口重美

冬帽はかなしからずや壁にすがり/細谷源二

ことさらに海見たき日の冬帽子/北見さとる

旅の荷の冬帽を出すときが来し/八木沢高原

冬帽の朝は子に振り夜は友に振る/細谷源二

基地に闘い冬帽眼鏡にふるる深さ/古沢太穂

冬帽の内にひとりひとりの帰路/中尾寿美子